どうも、恋のキューピッドやらされてます。
プレーンシュガー
第1話
四月も終わりの頃。世間ではゴールデンウイークを目前に控え、皆少しばかり浮足立っているのを感じられる。
やれ何して遊ぼうか。やれ毎日朝から日が暮れるまで部活動だ。やれ友達と旅行だ。やれ恋人と過ごすだ。各々に合った楽しみ方や、逃れられない宿命に身を捧げる。そんな感情が自然と伝わってくるようだ。
そして俺、
「
担任の
「期限は入学から一か月だって言ってるだろ? もう本格的に活動してる奴らの方が多いぞ」
「とは言いましてもねぇ……」
担任に突き出された部活名が網羅された一覧表を眺めるが、やはりどれもピンとこない。中には絶対に入るもんかと心が叫ぶ部活もある。
仮入部や見学した部活も多い。けど、高校生活三年間。実際は二年から二年半くらいだが、そんな高校生活の大半を捧げるに値する部活には巡り合えず、タイムリミットが迫る中、未だ決めあぐねていた。
「どうにかして入らないのは無理なんですか?」
「ダメ。絶対なにかの部活には入ること。校則で決まってるから」
「だったらもうちょい少数派のニーズにも答えてほしいもんですがね」
「何だったら同好会でもいいぞ。それも一応部活扱いにはなるから」
「そっちにも俺の琴線に触れるようなのはないですね」
同好会もいくつか覗いてみた。同好会は部活よりも緩めなところが多く、野球やバスケなんかは部活と同窓会の両方が存在している。
本気で上を目指すなら野球部やバスケ部に、ただ体育の授業の延長くらいの感覚でわいわいやりたいのなら、野球同好会やバスケ同好会に。といった風に住み分けはされている。そういった面ではかなり充実したラインナップと言えるだろう。俺にはどれも合わなかったが。
「贅沢だなぁ。何だったら作るか? 部活か同窓会」
「じゃあ帰宅部を『それはダメだ』」
せっかく見出した活路は秒で塞がれてしまった。だったら作ってみるかなんて言わないでほしい。期待させるだけさせて、結局最後には落されるなんて、虚しさが二倍になるだけだ。
「つーか、そんな簡単に部活や同窓会なんて作れるもんなんですか?」
「ああ、昨今の少子化の影響で、生徒数が少なくて空き教室も年々増えていってるからな。部室はそんな空き教室。部員数は四人もいればいいし、顧問も、他に受け持ってる部活優先の幽霊顧問として兼任すればいいしな」
「……俺が言うのも何ですが、その現状かなりやばくないですか?」
「……かなりやばいな。この学校どころか、町に子どもがいないからな……」
……大丈夫かこの学校。この町。いや、この国。
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