第31話 それって、まさかお見合い!?(4)
親同士で困ったものだと頭を抱えた結果、いっそのこと、子供たちをくっつけてしまおうという、全く有難くもない、むしろ大迷惑な案を思いついたようだ。
どうして私がそんな傍迷惑な提案に付き合わなくてはならないのか。心底納得いかないが、母曰く、いい年齢の二人が揃っているのだからちょうど良いということらしい。
それに、と母が続ける。その知人の息子は、母情報によるとなかなかの優良物件のようだ。真面目な性格だが堅物過ぎず、容姿端麗な上に高身長。しかも大手企業に就職しており収入も良いときている。
確かに好条件だ。
でも、と私は思う。そんな優良物件が、私なんかを選ぶはずがない。私は自嘲気味に笑う。そもそも、優良物件ならば親が心配しなくとも既に売約済だろう。私がそう言うと、母はにっこりと笑って言った。
「それは大丈夫。向こうにもお相手がいない事は確認済みよ。ねぇ? 一度会ってみたら?」
母の言葉に、私は絶句した。
何だそれは。つまり、この話はお見合いということか。
母は、私とその息子とやらがお似合いだと本気で思っているのだろうか。それとも、ただ単に面白がっているだけなのだろうか。
どちらにしても、この話はお断りだ。自分の結婚相手くらい自分で見つける。
だいたい、もし仮にその人と結婚したとしたら、今後もこんな風に母親たちに振り回されることになるのだろう。そんなのは御免だ。
私はきっぱりと断る。
「私、お見合いとか興味ないから」
母は意外そうな顔をした。もしかしたら、母からのお節介に渋々ながらも了承すると思っていたのかもしれない。
私は、はっきりと意思を伝えるべく、母を睨むように見た。すると、母は呆れたように息を吐いて苦笑いを浮かべた。
「お見合いなんて、そんな堅苦しいものじゃないのよ。少し会ってお茶でも飲んでくればいいのよ。ね?」
母は、私を宥めるように言った。
しかし、私の意志は全く揺らぐことはない。断固として拒否の姿勢を貫く。
しばらく沈黙が流れる。やがて、母が諦めたように小さくため息をつくと、言った。
「まぁ、気が向いたら連絡してちょうだい」
私の気が向く事はきっとない。私は母の言葉を完全に無視した。
母はもう一度大きく溜息をついて、それから洗い物をするために離れていった。
私は、手に持ったままだった招待状を忌々しげに見る。こんな物が届いたから、母は焦ったのだろうか。まぁ、本来は年頃と言われる私自身が焦るべきなのかもしれないが。
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