第28話 それって、まさかお見合い!?(1)
シロ先輩は優しくない。はっきり言ってがさつだ。だけど、嫌いにはなれない。基本仏頂面なのだが、たまに見せるはにかんだ笑顔がまるで子犬のようで、思わず目を奪われる。
そんなニカリと笑ったシロ先輩のドアップに驚いて、私はパチリと目を開けた。
カーテンの向こうが眩しいくらいに明るい。キンとした空気に思わず布団を引き上げた。頭まで被った布団の中で丸くなる。ドキドキと朝から激しく跳ねる鼓動を抑えたくて、しばらくそのまま丸くなっていた。
どんな夢を見ていたのかはわからない。だけど、最後に見たシロ先輩のドアップ笑顔が脳裏から離れない。一体なんだろう、この感覚は。心臓はバクバクしているし、頬も熱い。私はベッドの上で一人身悶える。
しばらくそうしていたけれど、布団の中が息苦しくなったので、布団からぷはっと顔を出した。やっぱり空気は冷たかったけれど、ほてった頬にはそれがちょうど良かった。
丸まった身体をベッドの上でぐっと伸ばしてから、傍で充電していたスマホの画面を点灯させて時間を確認する。
いつもよりかなり早い時間に起きたようだ。いつもなら寝ぼけ眼で着替えるのだが、目が冴えてしまったので、二度寝する気にもなれない。どうしたものかと考えながら、とりあえず顔を洗うために部屋を出た。
今日は土曜日なので仕事はない。私はぼんやりと今日の予定を思い浮かべる。今日は何をしようか。久しぶりに買い物に行こうかな。それとも映画にでも行ってみようか。そんな休日の正しい過ごし方を考えていたはずなのに、ふと気づくとまたシロ先輩のことを考えていた。私は頭をブンブン振る。
(ああ、もう! 違う!)
私は自分を叱咤した。シロ先輩のことは一旦忘れるのだ。頭を切り替えるためにも何か別のことを考えようと思考を巡らせるが、何も思いつかない。
結局、またシロ先輩のことが頭を過りそうになって慌てて打ち消そうとした時、スマホがメッセージの着信を知らせたので、ハッとしてそちらを見た。
“今日、時間取れない?”
相手は母だった。私は一瞬迷ったが、すぐに返信を打つ。
“大丈夫だよ。何?”
私が送信ボタンを押して間もなく、返事が来た。
“ちょっと話したいことがあるのよ”
そんな短い文に違和感を感じながら、了解のスタンプを送って会話を終わらせる。
珍しいなと思った。母は普段あまり私を呼び出さない。大抵は電話してくる。しかもこんな朝早くに呼び出してくるなんて初めてのことだった。
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