第25話 二日酔いジェラシー(7)
「ならいいが。あまり無理をするなよ。それでなくてもお前には色々と負担をかけてしまっているからな」
「いえ、ありがとうございます」
シロ先輩がぺこりと頭を下げると、課長は軽く頷いて去って行った。他者に声をかけられて冷静になったのか、シロ先輩はチラリとこちらを見だだけで何も言わなくなった。
その後シロ先輩は何事もなかったかのように仕事を再開した。私もそれに習って仕事に戻る。
そして結局、シロ先輩の不機嫌の原因がよく分からないまま仕事は終わってしまった。
仕事帰りに、スーパーに寄って食材を買う。今日のメニューは豚肉の生姜焼きにするつもりだ。なんだか気持ちがモヤモヤとする日は、自炊をしてストレスを発散しようと決めている。
材料を次々と買い物かごに入れる。豚肉をどれにしようかと悩んでいると、スマホが短く鳴った。確認すると、シロ先輩からメッセージがきていた。
“今から会えないか?”
買い物の後は特に予定もない。だが、今日は自炊をすると決めている。それに、シロ先輩とは気まずいまま会社を出てきてしまったので、会いづらい。しばらく迷った末に私は、返事を返した。
“すみません。このあと用事があるので。明日ではダメですか?”
送信ボタンを押してから、少し後悔した。断るための嘘にしては、少々ストレート過ぎたかもしれない。
シロ先輩からの返信はすぐに来た。
“そうか。まぁ、大した用事でもないから。また、明日”
そんな淡白な文面に私は違和感を感じた。どうしたものかと考える。
正直、まだシロ先輩との気まずさを引きずっていて、彼と面と向かって話したい気分ではなかった。けれど、彼は普段用事もないのに連絡はしてこない。大したことではないと言っているが、それなりに重大な要件なのではないだろうか。
少しだけ考えて、私は返信の文字を打つ。
“すみません。シロ先輩が連絡をくれるということは急ぎの用事ですよね? 会社へ戻れば良いですか?”
気になるものは仕方がない。私はシロ先輩に会うことに決めた。シロ先輩からはすぐに返信がきた。
“予定があるんじゃないのか?”
本当は無いので、別に問題は無い。安直に返信してしまったことを若干後悔しつつ、文字を打ち込む。
“予定変更したので大丈夫です”
そう送ると、すぐに既読がついた。
“じゃ、待ってる。◯◯駅を出たところにある喫茶店で”
返ってきた文字に目を見張る。どうやらシロ先輩は、私の家の最寄り駅まで来ているようだった。
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