第22話 二日酔いジェラシー(4)
そんなことを言いながら、白谷吟は唐揚げを一つ、私のお皿の上に乗せてくる。
「え?」
「やっぱり、女の子の食事を見てると、少ないなぁと思っちゃうんだよね。だから、お裾分け。ここの唐揚げ美味しいから食べてみて」
笑顔でそういう白谷吟の顔を見ながら、絶対に少なくはないと思いつつも、唐揚げは好きなのでありがたくいただいた。サクッとしていて美味しい。
そんなこんなで、しばらく二人で昼食を食べた。白谷吟は、本当に良く喋った。
まるで、以前から知り合いだったかのように気さくに話しかけてくれる。彼の話はとても面白くて、私はすっかり聞き入っていた。
おかげであっという間に完食してしまった。ふと時計を見ると、休憩時間も残り十分になっていた。白谷吟もサンドイッチを残して、他は食べ終えている。
そろそろ戻ろうかという話になり、私たちは席を立つ。返却口にトレイを置いて、食堂を出る。白谷吟の手には最後まで残されたサンドイッチがあった。
そのまま一緒にオフィスに戻り、課の違う白谷吟と別れようとしたときだった。
ちょうど廊下の角から出てきた人物にぶつかりそうになった。咄嵯に避けようとするが、相手の動きの方が早かった。腕を掴まれ、引っ張られる。バランスを崩した私は、倒れそうになるのをなんとか堪えて踏ん張り、体勢を整えようとしたが遅かった。次の瞬間、誰かの腕の中にいた。
何が起きたのか分からず、混乱する頭の中で、抱きしめられているということだけは分かった。目の前にあるスーツからは、嗅ぎ慣れた香りがする。
恐る恐る顔を上げると、そこにはシロ先輩がいた。彼は私を抱きとめると、すぐに手を離した。そして、驚いたように目を見開いている白谷吟と向き合う。私もまた、驚いて彼を見上げていた。どうしてここにシロ先輩がいるのだろう。
白谷吟は、私とシロ先輩を見比べるようにして見ていたが、やがてシロ先輩に問いかけた。
「やぁ、史郎。体調はどうだい?」
その言葉に、私はハッとする。シロ先輩の顔色は午前中よりも良くなっていた。それどころか、頬に赤みすら差しているように見える。午前中の青ざめた顔が嘘みたいだ。私が密かに安堵していることなど知らないシロ先輩は、白谷吟の問いに対して、答える代わりに眉をひそめて私を見た。
「吟……と、クロ? なんで一緒に……?」
声音には微かに困惑が滲んでいるような気がした。一方、白谷吟は、そんなシロ先輩の様子に構わず、ニヤリと笑う。
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