第21話 二日酔いジェラシー(3)

 そんな私の気持ちを見透かしたように、白谷吟はクスッと笑う。そして、続けて言った。


「大丈夫だよ。矢城さんならきっと」


 その言葉にドキリとした。白谷吟の言葉が、何故か予言のように聞こえてしまったからだ。私は、何も言えずにただ黙って俯くことしかできなかった。


 やがて食堂に到着する。いつもより混み合っている気がするが、なんとか空いているテーブルを見つけて席を確保すると、私たちはそれぞれ注文をしに行った。


 私は、今日のランチであるオムライスとサラダとスープのセットを頼み、受け取り口に並ぶ。順番待ちをしていると、横に立つ白谷のトレイに視線がいった。トレイには大盛りのカツ丼と味噌汁、それから唐揚げとサンドイッチが乗っていた。その量に思わず二度見してしまう。


 なんとなく、白谷吟はこういうガッツリしたものを食べるイメージがなかった。案外大食感なんだな。そんなことを考えながら、ぼんやりと白谷の横顔を見る。すると、視線を感じたのか、こちらを向いた彼と目が合った。私は慌てて目を逸らす。


 どうしよう。じっと見つめていたと思われたら恥ずかしい。


 しかし、彼は特に気にしていない様子で私の手元を覗き込んできた。吐息がかかりそうなほど近くに寄ってきた白谷吟の顔を見て、改めてイケメンだなと思う。それに良い匂いがした。香水でもつけているのだろうか。


 意図せずドキドキと鳴り出した心臓を抑えようと必死になっていると、いつの間にか列が進み、自分の会計の番が来ていることに気がついた。


 手早く会計を済ませ、席に戻る。程なくして、会計を終えた白谷吟も戻ってきた。相変わらずニコニコと微笑んでいる。


「ごめん。僕、一件メールするからお先にどうぞ」


 そう言ってスマホをポケットから取り出しつつ、白谷は私に食事をするよう促してきた。


 いただきますと言って、私は食事を始める。手早くメールを打ち終えた白谷吟も、軽く手を合わせてから、唐揚げを一口食べると嬉しそうに笑った。私もつられて微笑む。すると、彼が尋ねてきた。


「ところで、矢城さんはそれだけしか食べないの?」


 それだけというが、私のトレイにはオムライスのセットがしっかりと一人前ある。私は苦笑して答えた。


「あの、これでもちゃんと一人前ありますよ。それにしても、白谷先輩はすごい量ですね」


 そう言うと、白谷吟は困ったような顔をした。


「そうかな。僕、これでも昼は控えめにしてるんだ。食べると午後から眠くなるだろ」

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