第13話 シロヤギさんからの手紙(3)

 白谷吟は、本当に平気なのかと私の顔を覗き込む。その顔がカッコいいのに、可愛すぎて、イケメン耐性のない私には効果抜群だ。


「いや、あの、え〜、どうかな……たぶん、大丈夫です。私、元テニス部なので色黒なのは仕方ないかなぁって。ほら、私よりシロ先輩の方が色白ですし。私たち、矢城やぎ八木やぎなので、他の人から名前を呼ばれると紛らわしいですし……。色分けされていた方が、皆さん分かりやすいかなぁ……なんて。あはは」


 自分でも何を言っているのか分からない程に思考が追いつかず、口だけがペラペラと言葉を吐き出し続ける。


 そんな素敵すぎる顔で、見つめないでほしい。


 この爽やかイケメンは、自分の攻撃力の高さを分かっているのだろうか。


 それとも、分かっているうえで私をもてあそぼうという、所謂あざとい系か。


 爽やかイケメンを前にくだらない考えで私の思考はパンク寸前。視界を彼方此方と彷徨わせていると、シロ先輩が戻ってきて白谷吟に突然喰ってかかった。


「おい! 吟! 何、クロの事いじめてるんだ? クロをいじめて良いのは、先輩の俺だけだぞ!!」


 目の座ったシロ先輩の物言いに、私たちは揃ってポカンとしてしまう。


「何って、僕たちは、ただ話をしていただけだよ」

「そうですよ。シロ先輩。白谷先輩は、私の事を心配してくれていただけですよ。もう、白谷先輩に謝って下さい」

「ん。そうか。すまん」


 白谷吟の澄ました言葉と、私の焦りの抗議に、シロ先輩は素直に謝罪の言葉を口にする。


「あはは。本当に、史郎は矢城やぎさんのことが好きなんだね〜。ところで、僕の海老フライは、どこ?」

「あ、すまん。向こうで話してたら、忘れた」


 白谷吟は、理不尽な責めにも嫌な顔一つしないで、ニコニコとシロ先輩を揶揄からかう。シロ先輩も、自分の失礼な誤解を引きずることもなく、何事もなかったかのように私の隣に腰を下ろした。


 と言うか、シロ先輩が私を好きとはっ!?


 またしても、爽やかイケメンの発言に目をパチクリとさせていると、シロ先輩が私の顔を覗き込んできた。


「何だ、クロ。吟の事をそんなに見て。惚れたのか?」

「ちがっ……!!」


 違うと、訂正しようとしたところで、白谷吟と視線がぶつかった。


 惚れたわけでは無いが、ここで力一杯に訂正するのは、もしかして白谷吟に対して失礼になるのか。


 よく分からない考えに、私は言葉に詰まる。


「あはは。僕が矢城やぎさんとすごく仲良くなったら、史郎、絶対妬いちゃうよ〜。……僕を取られたって」

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