第11話 シロヤギさんからの手紙(1)
親睦会と称した例の飲み会は、開催の噂を耳にしてから数ヶ月後にようやく開催された。
「生ビール五つ、追加でお願いします」
私は、通りすがりの店員に追加注文をして一息つく。ちょうどその時、殆ど空になりかけたジョッキを持って、私の隣にドスンと音がしそうな勢いで同じ一課の
「クロ〜、呑んでるか〜?」
「まぁ、程々には。シロ先輩は、飲み過ぎでは?」
「俺は、まだまだいけるぞ〜!」
「いえ、もうそろそろやめた方が……」
面倒臭い人に絡まれたなと少し引き気味に対応していると、何処かで、私たちのやりとりを見ていたのか、二課に所属する
「
「いえ。そんな事は……」
「にゃにお〜。俺の何処が酒癖が悪いって言うんだ〜!」
ニコニコとしながらも、遠慮のない物言いで、シロ先輩を軽く蹴飛ばしながら、白谷吟は私の向かいの席に腰を下ろした。
「本当にコイツ、ウザくない? 大丈夫?」
「……正直、ウザいですね」
そんな度重なる質問に、ついつい本音が出てしまう。私も、十分に酒が回っているようだ。
会社の先輩をウザい呼ばわりしているのに、白谷吟は、咎めるでもなく、軽く笑い飛ばしてくれる。
「だよね〜。ウザいよね〜。この酔っ払いどうする?」
「まぁ、もうしばらくは、このままでいいです。手に負えなくなったら、白谷先輩にバトンタッチしますね」
「えぇ〜。僕だってやだよ〜」
白谷吟は、本当に面倒臭そうに顔を
「クロ〜、お前は、この唐揚げを食え! 俺が許す! そして、俺には、あそこの海老フライを持ってこい!!」
「え〜、嫌ですよ。シロ先輩、食べたいなら、自分で取ってきてください」
「ん。そうか!」
「史郎、僕の分も取ってきて〜」
「分かった。俺に任せろ!」
シロ先輩は、かなり酔っているのか、命令しておきながら、後輩に軽く遇らわれている事にも、友人に使いっ走りに使われている事にも気がつかず、席を立った。
「シロ先輩、気をつけてくださいよ〜」
私は、フラフラと危なっかしいシロ先輩の背中に声をかける。それを横目に、白谷吟はグイッと酒を煽った。友人の心配は、特にしていないようだ。
「
「はい?」
白谷吟の呼びかけに、私は、軽く小首を傾げる。
「何でクロって呼ばれてるの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます