第7房 demons knockout [惨事]

前回のあらすじ

己の身の上を全て二人に打ち明けた主人公

かくしてとりま仕事を受けに庵と桐夜は働きに行く、その職場で庵は歓迎される。

一方配給所に向かっていた景が何者かに襲われてしまう!!一体どうなってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜になり仕事を終え、家へと帰る影が2つ。彼らは他愛もない話をしていた。


庵「たくっよあの工場長のおっさん人使い荒いぜ。人を人と見てねぇ」


桐夜「まぁまぁ初日はそんなものさ。これくらいはどうということはないよ」


庵「えぇ...それ騙されてるぜ。やめとけやめとけそういうのは付き合いが悪いんだ」


庵「工場長御年55才。仕事真面目で活気的にこなすが今ひとつ情熱が邪魔な男。悪いやつじゃないんだが、これといって人使いの荒さで評判な圧の強い男さ」


桐夜「?なにそれ、どういう言い回し?少し妙だね」


庵「うっさいわボケ!ええやろ別に!」


そうして話しながら帰宅する。しかし家の中には景の姿はなかった。


桐夜「ただいまーってアレ?景の靴がない」


庵「お?なんやどうした」


桐夜「どうしようお兄さん!景がいないよ!」


ことの異様さに焦る桐夜であるが、庵は落ち着いていた。


庵「待て待て、アイツのことだ。何かの用があっていないだけじゃないのか?」


桐夜「そんなことないよ!ここらといえど夜は危ないんだ!絶対何処か行くことはないよ!」


庵「だがな、....おいちょっとこっち来い」


桐夜「え?どうしたのお兄さん?」


口調が急変する庵に対し少年は驚き困惑する。若干の怯えもあった。


庵「いいから、振り返るな。そしてゆっくりオレの後ろに回れ」


桐夜「う、うん...」


そうして言われた通り彼の言われる通り少年は彼を盾にする形で回り込む。

庵が小声で話し出す。


庵「こいつぁ...ハードだな。随分とまぁ」


庵「バロネット....今朝のやつの3つ上のやつがいやがるなぁ」


桐夜「え!!そんなやつがうちの中にいるの!?!?」


庵「任せておけ、問題ない。倒せるが一回外に連れ出さないと家が無くなっちまうからな。誘い出すかぁ」


そうして話していると、暗い部屋の向うの影がこちらを覗き込んでくる。庵はそれに気づく。


庵「とりあえず、オレは...顔だしてきやがったなぁ。」


桐夜「ぼ、ぼくはどうすれば..あわわわ」


庵「まぁオレの後ろに張り付いとけばなんとな、る....さ」


その時の彼の顔は信じがたいものを見たかのような表情をしていた。様子がおかしい庵に対し少年は声をかける。


桐夜「ど、どうしたの?」


庵「・・・ここで無力化させる。いいな?」


桐夜「え!?そしたら家が!」


庵「それよりもだ。オレを信じろ。あとオレが良いと言うまで決して見るな目潰ってろ。」


桐夜「え?う、うん」


庵「デモンズダイド...」


少年は目をつぶった。少し激しい音が聞こえるがそれでも目をつぶった。怖くても逃げ出したくてもただ彼を信じ続けた。そうして目を開けるよう言われた。


庵「もういいぞ。少しこっち来い」


桐夜「え、うん...」


桐夜(さっきからお兄さんどうしちゃったんだろ、いつものあっけらかんとした態度がまるで消え失せちゃったかのように別人みたい)


庵「少し、そう...いやかなりか。ショッキングだが気を失うなよ」


桐夜「え?一体何を...!!」


少年が見たもの。そこに写っていたものは無惨にも歪にも姿が変わり果てた景であった。京と分かれたのは顔が幸いにも原型が残っており、まだ人形ひとがたと言えたからだ。だがその肉体の殆どは醜くなっていた。本当の苦楽を共にしたものがこのような姿へと変わり果てているのだ。現実は無情である。


桐夜「!?そんななんで!!どうして!まさか、デーモノイドに襲われたの!?」


庵「桐夜、こいつは多分デーモノイドに襲われたんじゃねぇ。景の肉体にはデーモノイドの眷属とかではない原本そのものが居やがる。つまり、他者からの強制的な契約によるものだろう。」


こういった貧民が狙われるケースはさして珍しくはない。だがそれは世界的に見てだ。当事者たちは遭ってみないと知り得ることはない。


桐夜「他者からの...!!魔術師!そんなどうして景が狙われるんだ!!」


庵「おそらく理由なんて大層なものを持ち合わせている可能性は低いだろうな。わざわざこういう事するんだ、出来損ないか愉快犯の可能性の方が高い。」


絶望的な状況に絶望的な可能性と答えが返ってくる。少年の心は今にも崩れだしそうだった。


桐夜「そんな...景はもう助からないの?僕たちは誰にも迷惑かけてないのに...ただただ必死に日銭を稼いで生きているだけなのに!!どうして!!!こんなことが...」


少年の心が暴発しこの世のドス黒いものに対する憎悪と非常な現実に対する咆哮が轟く。少年はもう涙ぐんでいた。それに対し青年はなだめる。


庵「落ち着け、言ったろ?無力化するって。幸いまだ成り立てだからな、犯人の魔術師が契約に使ったグリモワールを強奪し破壊すれば、助かる可能性が高い」


一抹の希望。その灯火の光が少年の心を再び照らす。


桐夜「!!んじゃあ今すぐにでも行こうよ!!早くしないと景が死んじゃうよ!」


庵「待て待て、闇雲に探したところで見つかりやしないさ。オレにいい方法がある」


桐夜「え?どういうこと?お兄さんにそんな力あるの?」


庵「何だその言い方...まぁこの際それは置いておこう。正確には匂いだな。グリモワールと景の中のデーモノイドとの繋がり。つまるところ縁という名の匂いだな。グリモワールを介した顕現や召喚されたデーモノイドは基本的にそれがなくなれば、奴らは強制的に帰ることになる。故に発見される本やスクロールといった紙切れは低階級の奴らが多い。無論それ以外の方法だった場合は、術者を殺し強制的に契約を破棄させることだが、今回の匂い的には前者だな」


そう饒舌に語る青年は少年に問いかける。


庵「だが、どうする?本だけじゃなくクソッタレ魔術師を殺しても良いんだぞ?生かす価値はないからな。だがそれはお前が選べ、オレが選ぶことじゃないからな」


桐夜「え!...そんな急に...」


少年は悩むどうすべきか、恨みは十分すぎるほどにある。だが、仮にも同じ人だ。そう簡単に殺してはそれこそ奴らと同じになってしまうのではないか?そう感じ始めた少年はあの大好きな漫画マンジック語録を思い出した。


桐夜「正直僕としては仕返ししてやりたい。でもマンジック語録にあったんだ!恨みが生むのは新たな恨みだけだって!その怨嗟を断ち切る勇気が何よりも必要なんだって!!」


庵「そうか、分かったよお前の気持ちは汲もう。だがな!一応は犯罪者だからな、警察には突き飛ばそう。何そう心配するな警察と言っても弱者救済を掲げた魔術師組合だ。ニュースにあったろ?いやないか」


桐夜「うん、そうだね。お兄さん行こう!景を救いに!」


庵「付いてくる気かよ!まぁここに居るほうが危ないか?しゃーねーなぁ行くか!」


こうして二人は景を救うため無惨にも弄んだ魔術師をぶん殴りに行くため、出発したのだった。


第7房 完


よろしければ感想やレビューなど待ってるぜ!!

もし何かあれば最新話が投稿されやすくなるぜ!!!

優先されるってわけさ


次回予告 悪辣魔術師の悲願

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る