第21話華麗なメイド、マイヤー・ロッテンさん
吾輩は人である。
名はホモ・サピエンス。
そう、ついにその日が来てしまった。
吾輩の婚約者――に今度なる女性から、リナちゃんたちを引率するために派遣されたメイドさんが来てしまったのだ。
その婚約者になる女性の名前はピーチ・グリーングリーン。
高嶺の花である公爵家の令嬢さまである。
どこからどう見ても最強の悪役令嬢といった風体の超絶美人で、サイズBの胸に金髪縦ロールそしてドリルという完璧完全属性の持ち主だ。
そのご令嬢さまが、なんと! 吾輩を指名して婚約しようなどと言ってきたのだ。
吾輩は初めて彼女から手紙をもらったとき、吾輩は吾輩好みの好きな女の子を始めて見た童貞のように鼻息が荒くなってしまった。
しかもわざわざ婚約破棄してまで吾輩と婚約したいのだとか。
吾輩のテンション、ウナギ昇りですぞ。
しかも、あぁなんということだろう。
ピーチ・グリーングリーンはおっぱいを揉まさせてくれるという! ばかなッ!
ピーチ・グリーングリーンからの手紙の中でその文言を見たときに、吾輩は我が目を疑い、何度も繰り返し見返すほどだった。普通、恋文にそんなこと書かないだろう。だが書かれている。
これは完全に吾輩のことを理解してくれている証ではないだろうか。すばらしい。はらしょー!
もちろん、吾輩は速攻で婚約をすることに決めた。
これはすぐさま王都に行って彼女のおっぱいを揉まざるをえない。
だが、ここで問題がある。
砦にいる女の子たちをどうするかだ。
砦にはリナちゃんを中心として、誰でもおっぱいを揉めるハーレムが構築されていた。
いったい誰がそんなものを構築したのか。
……
そう、吾輩だ!
ともかく、そんな状況で吾輩がピーチ・グリーングリーンを婚約者として迎えに行くなどといったらどうなることか。
修羅場だ。
修羅場が起こるにちがいないですぞ!
そして、リナちゃんたちに婚約のことを言うに言えないまま、ピーチ・グリーングリーンのメイドさんが来てしまったのだ。
マイヤー男爵家の次女で、侍女であるメイドさんは吾輩の隣で、何が起こっているか分からない表情で周囲を見渡していた。
それはそうだろう。
周囲からは40人は下らないであろう少女たちから見つめられているのだから。
しかし、吾輩は良くこれだけのモンスターのおっぱいを揉んだな。
おっぱい揉みくだし師のレベルもガンガンと上がっている。
しかも、ドラちゃん(ドラゴンが擬人化した少女)など、冒険者として巣立っていった少女たちもかなりいるのに、まだこれだけの人数が残っている。それがほぼ全員集まっているのだ。
今いないのは部屋に引きこもって裁縫をやっているジャイアントスパイダーが擬人化したジアちゃんくらいだろうか。
そんな中、どのような化学反応がおきるか分からないが、ともかく吾輩はリナちゃんたちにメイドさんを紹介することにした。
「彼女は――、えーっと吾輩が王都に行っている間、君たちを引率してくれるおねぇさんだ」
「へぇー。リナは、チーム『ょぅι゛ょっょぃ』のリーダー《魔王》リナです」
リナは、吾輩が仕込んだ挨拶を丁寧に返した。
うん。偉いぞー。
他の少女たちも挨拶をする。
「「こんにちはー」」
「あらあら。こんにちはー」
とにかく、こやかな笑顔であいさつだけはしてくれるようだ。
だが、その後のことを考えると胃が痛い。
メイドさんのマイヤーさんはやはり状況が分かっていなのか。普通にあいさつを返した。
あぁ、そして楽しい雰囲気はそこまでだったのだ――
「――で、王都に行って何をするの? サピエ?」
「あぁ、リナちゃん。良い指摘だね。実は吾輩、王都に行ってこの前ここで助けた女の子であるピーチ・グリーングリーン女史と婚約を――」
「え? 今なんて? なんて言ったの?」
「いや、だから吾輩、王都に行ってピーチ・グリーングリーン女史と婚約を――」
「え? 婚約っていうと、お貴族さまが結婚前に前座でするやつでしょ? なんでサピエが――」
「いや、吾輩もいちおうはその貴族なんだが――」
正確には追放された時点で元貴族であるのだが――
「領地も役職もない名ばかりなんでしょう?」
「まぁそうだが……」
ばんッ!
リナちゃんが近くの机を激しい勢いで叩く。そして叫んだ。
「な、なんであんなぽっと出の女にサピエを盗らなきゃいけないのよ!」
そんなリナちゃんの雰囲気に飲まれ、急速に周囲の視線もあやしくなってくる。
怖い、怖いよぉ……
それでもなお、吾輩は周囲の説得を試みることにした。
「くっ――。いやあのね――」
「あんないけすかない悪女のどこが良いのよ。そりゃぁおっぱいはあの女の方がちょっとばかしリナよりも大きいかもしれないけどぉー。髪とか表情とかも可愛らしかもしれないけどぉー」
「いや、吾輩はもっといろいろなおっぱいを揉みくだしたいのだ。それで――」
「いやぁぁぁぁぁー! サピエがいなくなったら、リナたちこれからどうやって生きていけばいいのぉ! 街の人とのこーしょーとか、リナには無理だよっ!」
「いや、だからこうして婚約者に頼んでメイドさんを調達してきたわけだが……」
「いやぁぁぁぁ。あのあばずれ女のメイドさんなんて、きっとろくでもないに違いないわ」
「えーっと、いちおうピーチ女史は名門のグリーングリーン公爵家の令嬢なんだがー」
「そうだわ! リナたちみんなで一緒に王都にいきましょう! そうすれば問題はすべて解決する!」
「んー。リナちゃんたちのおっぱいを揉みながら行く道中は楽しいかもしれないが」
「でしょう! 決まりよ!」
「でも、リナちゃんたちはニンゲンの常識知らなすぎるからな。行くならこのメイドさんにちゃんと一般常識を教えてもらってからだ」
「えー。リナたちは常識くらい知ってるよー」
「ふーん。じゃぁ、1と2、の次はなんだね?」
「そんなの決まっているじゃない! たくさんよ!」
「じゃぁ、リナちゃん。自らのアジトに可愛い冒険者の女の子が来ました。どうする?」
「そんなの決まっているじゃない! 子袋にするのよ!」
どうやらリナちゃんの思想は完全にゴブリンスレ〇ヤーの世界観であった。
さすがはゴブリンの魔人である。
吾輩はリナちゃんにそこまで言わせてから振り返り、メイドのマイヤーさんにお願いをした。
「彼女たちに常識というものを教えてくれ。そうだな……、四則演算と文字を一通りとかどうだろうか……」
「は、はぁ……」
メイドのマイヤー女史さんは困惑しながら吾輩たちの会話を聞いていたが、理解が進むとだんだんと顔を紅潮とさせ、怒りに震えながら吾輩に突っかかってきた。
「あなた……。こんないたいけな少女にいったいなんてことを……。それにお嬢様のおっぱいを揉むですって? 破廉恥な――」
「ん? 吾輩がピーチ・グリーングリーンのおっぱいを揉みくだしたいなんてことは、当の本人も最初から知っていることだぞ。なんたって、この前会った時の第一声が『おっぱいを揉ましてくれ』だからな」
「な、なんという――。そんなこと許されるわけないでしょう!」
「あのなぁ。婚約者に対していちゃいちゃするなとか、どこぞの世界にお前は生きているのだ。婚約者なんだから将来は結婚するんだぞ」
「そ、それは……。確かに――、いやだからと言って婚前は……」
「かたい事言うなよ、な。だいたいピーチ女史の目論見が成功したら、吾輩、婚約破棄されて戻ってくるんだから――」
そうだ。
ピーチ・グリーングリーンは吾輩の『聖女に婚約破棄されまくりし者』の称号を使って聖女になろうと考えているから、婚約をしようと迫ってきているのだ。なれば聖女になった暁には婚約破棄されるのは必定―― その見返りがおっぱいなのだ。
「え? そ、それはどういう――」
「やった。戻ってくるのね。てっきりサピエは王都に行ったまま返ってこなくなるかと……」
それに対する反応はメイドさんが困惑、リナちゃんたちは歓声だった。
ともかく、吾輩はリナちゃんの懐柔を図ることにする。
まずは抱きしめる。
「王都に行ったままだって? そんなことあるわけないじゃだろう。リナちゃんたちのおっぱいはそれはそれで至高の存在! 時には気の強そうな悪役令嬢がおっぱいを揉まれて困惑ぎみに身悶えながら感じていくのを眺めるのも良いが、リナちゃんたちにはリナちゃんたちにしかない良さというものが――」
「やったぁ! わーぃ!」
「そうよ! それよ!」
再び怒り出すメイドのマイヤーさん。
一体何が問題なのか、吾輩にはさっぱりわからない。
「ピーチお嬢様という婚約者がありながら、こんないたいけな少女のおっぱいをいつも揉んでいるとか、ありえないでしょう!? そんな男はお嬢様にはふさわしくないわ!」
「そう、ふさわしくないよね。ピーチ女史の目論見が成功したら婚約破棄される男なんだから。しかし婚約破棄には理由が必要だ。破棄されるにたる理由は多ければ多いほど良いとは思わない?」
「――。ピーチ様は、一体どんな目論見なのよ? まったく私には何がしたいのか見えない――」
「秘密だ。ピーチ女史が君に秘密にする以上、吾輩も秘密にするしかあるまい」
「くっ――」
吾輩から話すことはできまい。吾輩の『聖女に婚約破棄されまくりし者』という称号を信じて掛けに出たピーチ・グリーングリーンが彼女に話していないのであれば、なおさら。
――その理由の8割くらいは単にピーチ・グリーングリーンが恥ずかしいからだと思われるが。
「ところで……」
「ん? どうしたねリナちゃん」
「その悪女の目論見ってのが失敗したらどうなるの?」
「ふむ。傷心の彼女の弱みに付け込んでそのまま結婚し凱旋帰国ですぞっ!」
ぶちッ。
あ、リナちゃんが切れた。
「いやぁぁぁーー。それ絶対いやーー。それだとあの悪女のことをサピエが返ってきてたら『お義姉ちゃん』とか『お義姉さま』と言わないといけないパターンじゃない! 絶対成功させてよねっ」
「おう。まかせるですぞ」
「じゃあ、王都に行く景気づけに、出かけるまえにみんなのおっぱい揉む?」
「あぁ、そうするかな……」
そう言いながら、リナちゃんたちに向かう吾輩に割って入ったのは、メイドさんであった。
「な、なんだね?」
「あなったって人は……。もうどうしようもないですね。この変態! 少なくともお嬢様と婚約破棄される前くらいまではその、お、おっぱいを揉むのはやめなさい――」
それに反対したのは、おっぱいを揉まれる側のリナちゃんだった。
「なによメイドさん。あなたはサピエの
「
「へぇ~、じゃぁ。メイドさん。あなたはサピエのおっぱい手もみんに耐えられるというの?」
「て、て、て、手もみんですって! そ、そんなの耐えられるに決まっているじゃない」
「そう? ならリナと賭けようじゃない。サピエのおっぱい手もみんに耐えられたら、考えてあげるわ――」
「な――」
戸惑うメイドさんにリナは手を緩めない。
リナはあやしい瞳でメイドさんに囁いた。
「あ――。シュタインちゃんかわいそーだな~」
「シュタインちゃん? それは誰なの?」
「シュタインちゃんはねー。サピエが初めて買ってきた女の子でぇー」
「!?? 始めて買って来た女の子って、まさか人身売――」
メイドさんは吾輩がそんな黒いことにまで手を染めているとは思わず、顔を青ざめさせた。
いや、ホル・シュタインちゃんって、吾輩が最初に買ってきた牛さんなんですけどね。
「今は全裸で小屋に住んでいるだけどぉー」
「全裸で小屋ですって! な、なんてことを――」
「最近じゃサピエの言いなりで、毎日おっぱい揉まれないと不機嫌になるんだよー」
「なっ、それは調教――」
「まるで家畜だよねぇー。酷いと思わない」
その通り牛さんは家畜なんだけどね。
「酷い、酷すぎる……」
「でも、おっぱいをもみもみされて、それで耐えられるならきっとサピエも考えるに違いないよ――」
ここで吾輩はリナちゃんの策略に乗り、大きく頷いた。
「うむ。吾輩、おっぱいをもみもみすることには自信がありますぞ」
「くっ――」
「さぁ、リナたちを助けると思ってぇー」
「えぇ、やってやるわよ! おっぱいもみもみとか、要は犬に噛まれるようなものでしょう! それだけでどうにかなるはずが無いわ。それよりも、ホモ・サピエンス! わたくしが勝ったら、みんなのおっぱいを揉むのをやめなさい――」
「あぁ、誓いますぞ――。吾輩に勝てれば、な――」
吾輩の指が触手のようにうごめき、マイヤー・ロッテンの胸へと吸い付いて、そして――
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