第12話異世界で盗賊とは主人公にとっての資金源である

 吾輩は人である。

 名前はホモ・サピエンス。



 しかし名前が酷いな。なんだこのホモって名前は。



 前世の知識を動員すると、ホモとは同性愛者、狭義には男性の同性愛者をさす言葉である。


 もちろんこの異世界でホモとは「人」とか、「均質化」といった意味であり、他意は無い。


 他意はないのだが、どうにも納得のいかない名前だ。


 言語が違うとそういうことはままある。


 例えば北欧神話の神槍ゲィ・ヴォルクなどがそれだ。


 どうしても名前に引きずられてしまい、使い手のクーフーリンはゲィなんじゃないかと推測してしまう。


 なぜならゲィだから。日本ならホモ一択である。

 ゲィというのは本来「槍」という意味なのだがどうしても邪推してしまうのだ。

 ホモであると。 ┌(┌^p^)┐


「我が槍さばきを受けてみろ」


 とかいいながら、中央の槍をぶるんぶるんと振り回すHGな姿の男を。

 =卍(┌^p^)┐




 例えばゲイ能人。

 ……そのままだった。



 たとえばエクスカリバーの発音が、実は掘るすカリバーだったら吾輩はきっと笑う。たとえそこに悪意はないとしてもだ。


 そんなことを思いながらステータスを見ていたら、スキル一覧に新しくこのようなものが生えていた。



「ホルス☆カリバー(未収得)」



 おっぱい揉みくだし師のクラスはいったいどこを目指しているのだろうか。


 いったい何を掘るのか小一時間システムとOHANASIしたい。


 有象無象、老若男女の区別なく、おっぱいを揉みくだせとでも言いたいのだろうか。


 どうやら前提条件が必要らしく、クリックしても取得できないし、取得していないから詳細な内容も把握はできない。



 だがどうせロクなものではないだろう。


 そんな前置きはさておき、吾輩ことサピエは今重大な問題に直面していた。


 ょぅι゛ょの扶養費用である。


 リナちゃんと掘った穴から脱出したのだが、そこには他にもゴブリンがいた。


 吾輩は急いで女体化スキルを取得後レベルMAXにして、そのゴブリンのおっぱいたちをばったばったと揉んでいった。


 その数、30人以上である。


 近隣のゴブリンさん大集合なのであった。大家族である。


 ゴブリンが周りに助けを呼んだからな。


 これでまだ逃げていったゴブリンもいるのだから、ゴブリンはいったいどれだけいるのだよという話である。


 そして、吾輩に新しい称号も付いた。


システム『ホモ・サピエンスはHENTAI+の称号を得ました』


システム『ホモ・サピエンスはHENTAI+の称号を得ことにより、男性+1の特典を得ました』


 なんなんだよこれは、と天を仰ぎ見る。


 吾輩はHENTAI+の称号を与えたシステムに悪態をついたが、しかしHENTAI+の称号が付いてほっとしたこともある。


 吾輩の精神への苦痛がだいぶ緩和されたのだ。


 やはりゴブリンのおっぱいを揉みくだすとか、精神に来るものがある。特にオスは。いやオスしかいないわけだが。


 思わずホモーとか叫びたくなるくらいに。


 だが、そんな代償の対価として得られたものは、美少女だった。


 ゴブリンの魔人の軍勢。圧倒的に駆逐艦かわいい。



 だが、服は粗末なものしかない。


 せいぜい主要メンバーに俺の私服を着せているだけで、あとは粗末な皮布だ。


 これはこれでソソルものがあるのだが、ちょっと粗末な皮布の娘とかは可哀そうだ。倫理観的にもどうだろうか。いろいろとヤバい。



 そして服だけに問題は留まらない。


 衣食住すべてが足らないのだ。


 いくら牛さんのお乳が優秀で、アイテムボックスに在庫があるとしても30人の幼女を賄うには無理がある。


 だいたい牛乳だけでは生活できないし、なにより売り物だ。

 もともと吾輩一人でようやく変動費にちょっとプラスになるだけで、損益分岐点的には赤だといういうのに30人というのは多すぎた。


 それに養育するのであれば勉強も必要だろう。


 (……。ゴブリンに3以上の四則演算とかできるのだろうか――)


 まずはそこからだな。


 そんなことを考えていると、リナちゃんがすり寄ってきた。


(可愛い奴め……)


 とりあえずリナちゃんの頭を撫でてやる。


 癒される。ずっとこうしていたい。そして揉みたい。


 だが、それではいけないだろう。


「リナちゃん。どこかここら辺に狩場とかない?」


 そこで吾輩は考えた。


 リナちゃん含め彼女たちは元はゴブリンだ。


 彼女たちは森で生活していたのだから、そこで何かを狩って食っていたはずだ。


 彼女らに狩らせて吾輩は悠々自適な生活を送る。

 狩った肉とかは売ればよい。街での販売を持っているのは人間である我輩だけ。

 そこで得た金で服でも買えば彼女たちは大喜びするに違いない。



 あぁ、なんて素晴らしい計画なのだろう。


「狩場はないわ」


 だが、リナちゃんの返した返事は予想に反したものだった。


 そういえばそうだ。


 良好な狩場などあれば、人の地にやってきて食糧を漁るとかしないだろう。


「なら、住んでいるところは?」


 吾輩の家はほったて小屋で、10人も入ればいっぱいになってしまう。


 そもそも男が住むにはともかく、女性が泊まるようなところではない。


「それが……。ニンゲンさんに取られてしまって……」


 リナちゃんが言うには、どうやら魔界の森でゴブリンたちは拠点を作っていたのだが、そこに突然やってきたニンゲンたちがゴブリンどもを追い払い、新たに施設を構築しているらしい。


「なんて酷い奴らなんだ……」


 ニンゲンは恐ろしい。


 まあ、ぶっちゃけていうとゴブリンなんて見つけたら普通冒険者は悪・即・斬の精神で殺しが入るモードになるので、それが普通といえば普通なのだが。


 だが、魔界の森の中に冒険者が拠点を作るというのは腑に落ちなかった。


 開墾するとかの土地であれば、過ごしやすい平地であれば、吾輩が牛さん用の広い牧草地を購入できたほどまだまだあるはずだ。それを何故わざわざ魔界の森に?


「そのニンゲンというのは、いったいどういう連中なんだ?」


「えーっと、詳しくは分からないけど、魔界の森で周囲のモンスターを討伐してたかなぁ?」


 あぁ、そいつらはなんて良いヤツなんだろう。


 身の安全を守るためとはいえ、魔界の森の中でモンスター駆除をしてくれているだなんて。


 つまるところ、そのために追い出されたゴブリンたちが彼女たちだ。

 ムカつくところであるが、やっていることは人道的だ。



「それから他のニンゲンさんとか襲ってたよ! 殺してた。おウマさんに荷物付けて運ぶやつとか!」


「それあかんヤツじゃん!」


 人道的で良い連中だと思ったがどうやら違うようだ。



(これはあれだ、盗賊団か何かだな――)



 人目を避けるために魔界の森に拠点を作り、人々を襲うといったところか。


 その中にはいたいけな少女とかもいて、女性の尊厳を踏みにじりまくっているに違いない、いやきっとそうだ。そうに違いない。



 つまりヤツラに、人権はない。



 盗賊団というのは、国家に対して大抵の場合敵である。


 このパラチオン王国であっても例外ではなく、盗賊団を壊滅させて盗賊連中を倒せば報奨金が出る。


 うまく捕まえて捕虜にできれば、犯罪奴隷として売り払うことも可能だ。


 そして、盗賊といえば、金をため込んでいると相場が決まっている。



 さらにはこちらの戦力というものがある。


 元ゴブリンとはいえ、魔人がなんと30人ばかしいる。


 その能力は実に素晴らしい。

 穴から出るときに見せた跳躍力など、尋常ではないほどだ。



 吾輩も貴族であったことから、騎士や剣士の動きというものはだいたいわかる。


 そこから見ても相当な力をリナたちは持っていることが推測できた。


 俺には近接攻撃力など無きに等しいが、リナちゃんたちに任せればなんとかなるだろう。


「よし、決めた。お前らぁ! そのニンゲンを討伐するぞ!」


「おぉー」


「わー。サピエがなんかヤる気になってるー」


「なんかリーダーっぽくてスキぃぃー」


「よしぃぃ! 皆殺しよぉぉ!」


「キュィィ」


 少女たちが殺伐とした声をあげる中、吾輩は一点だけ注意する。


「こらこら、殺しちゃだめだぞ」


「えー。なんでー」


「盗賊連中なんてのはだなぁ。死ぬより苦しい目に合わせないと!」


「「はーぃ!」」


 美少女たちは嬉しそうに返事を返してきた。



 そして、吾輩の能力もある。

 その名も女体化スキルだ。



 奴隷は、男性よりも美しい女性の方が高く売れるということを吾輩は知っていたのだ――





 ・ ・ ・ ・ ・





 夜3時――


 魔界の森の中に作られた砦の周辺。


 かつては人の住む土地であったそこは、魔界の森に浸食されて朽ちていた。


 そこを盗賊団たちはゴブリンを追い払って再び改造し、まさに砦といって良い様相を呈している。


 吾輩およびリナちゃんを含む美少女魔人軍団は、ひそかにその砦を包囲していた。


 周りに斥候たる野武士レンジャーはもちろんいた。


 だが、彼らはリナたちに鎧袖一触でのされ、おっぱい揉みくだし師によって女体化させられていた。


 こうこうと砦から照らされる松明の明かりだけが照明だ。


 空はどんよりと曇っている。


 襲撃にはもってこいの天候と言えるだろう。


 青色の白衣を身にまとう吾輩は、物見やぐらにいる周囲を警戒しているおっさんを見つめた。


 するとおっさんは急に体調を崩したかのように倒れた。


 DOT攻撃たるスキル≪視姦の魔眼≫である。

 おっさんに萌えるような視線を送るのは我輩としても実に気持ち悪いのだが、仕方がない。


「よし、リナちゃん。そこのへいは超えられるか?」


「楽勝だわ」


「なら何人か連れて侵入し、隣にある副門を開けてくれるかな? みんなで突撃する」


「「はーぃ」」


 そんな感じでこっそりと俺たちは砦への侵入を果たしていくのだった――

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