第42話 片手落ち


 リーゼは俺の服を脱がせ、自分のベビードールを脱いだ後ブラのホックを外して準備を整えていた


「ふふっ...綺麗な顔に似つかない鋼鉄のような筋肉と......。貴方を見ているとあの人を思い出すのは何故だろう。勇者様の為に私がこの手で殺したあの男...まあいいわ、すぐに私の体液を擦り込ませて快楽の沼に沈めてあげる...」


 リーゼは下着を脱ぎ、ゆっくりと俺に抱きつく━━━


























「悪いな...出会ってすぐヤれる人間は基本娼婦しか信用してないんだ」



「なっ...!?」



「どんな病気持ってるか分からないからだよ...アバズレ!」



 ドゴォッ...!



「ぐぶぇっ...!」


 俺はリーゼの頭を掴み壁に軽くぶん投げた。

 壁に叩きつけられたリーゼは鈍い音を響かせ鼻血と頭から血を流し、力無く床にペタリとケツを着ける。 


 まさか一度でも好きになった女を壁に叩きつけると思わなかったがこの際どうでも良い。

 パトラに約束した通りコイツが魅了されてようがいまいが関係ない...とりあえず今は殺さない程度にパトラの分までぶん殴る


「ふぅ...勇者の魅了方法とスキル付与の情報をお漏らししてくれてありがとう。油断するバカで助かったよ」


「...な...ぜ...? 私の魅了が...効かない...!?」



「うおぇぇっ...ペッ...ペッ! 効くわけねぇだろ! お前臭えんだよ身体も口も何もかも! 消臭剤を全身にぶっ掛けてから出直してこい」


「なっ...私が臭い? 勇者様も虜にする...この私が...?」


「よくそんな事恥ずかしげも無く言えるな。今のお前と交わるくらいなら俺はピラニアの口と交わるよ」


「何ですって...勇者様の妻である私に手を挙げた上にこの侮辱! こうなったら力で捩じ伏せた後に魅了してやる!...上級弓術魔法 《ライトニングマギアロー》!」


 リーゼは黄色い光を手に纏うと光の弓矢を形成し、俺に向かって狙いを定めた


「おいおい最初に仕掛けたのはお前だろ? それと人の部屋でそんな物騒な物出すなよ...壁に穴が空いたら修理費お前持ちだぞ?」


「...大丈夫、絶対に命中するから床掃除だけで済むわ。だって貴方...光よりも遅いでしょ?」


「ははは...光の速さより早漏なのは勇者サマのアローだけだろ。さあ打てよアバズレ...お前が矢を放った後に俺がパンチを放ってやる」


「その減らず口もいつまで続くかしら? 私の矢からは逃げられない...はぁぁぁっ!」


 スパァァァンッ!


 光の矢は俺に狙いを定めて一瞬で放たれた━━━






 パリィィンッ...!








「ほら言わんこっちゃない...窓ガラスの修理費お前持ちな」


「なっ...!」


 俺は左手の拳に光を宿らせる━━━


「宣言通りパンチを放ってやるよ」





 創...身光拳・脆しんこうけん・ぜい━━━



 バキィッ...!



「うぶぇっ...!」



 ドスッ...!


 

 文字通り光のパンチを喰らったリーゼは顔面を歪めながら宙を舞い再び壁に叩きつけられ床に落ちる


「コレでも痛覚がない状態で精一杯手加減したんだ。気絶するなよ」


「な...ん...でぇ...」


 顔から血を流すリーゼはプライドも一緒に傷つけられたのか現実を受け止められない顔でつぶやいた。


 俺も現実を受け止められないよ...魅了されている可能性が高いとはいえ元婚約者の人妻が旦那の命令で過去の男を手籠にしようとしてるなんてな━━━


 しかし部屋が臭い...後でフロントに消臭剤頼もう...


「う...ふぐっ...」


 俺はリーゼの元へ向かい首を掴み、壁に顔を押し当てながら持ち上げると流した鼻血が壁に跡を辿る


「答えろ、自慢の顔と身体が分割されたくなかったらな。俺を魅了する以外になんの目的があるんだ?」


「しょ...しょれは言えない...」


「そうか...なら背骨を引っこ抜いて文字通り骨抜き・・・にしてやるよ。俺は男女平等にミンチにできるタイプなんだ...脅しじゃないよ」


「だ...やめ...て...言いたく...ない...勇者様の...」


「ふーん...まあお前の頭に指突っ込んで痛い思いさせながら記憶読み取るから良いよ」


「それはどう言...んぐっ...!」


 バキッ...ゴリッ...


 俺はリーゼの頭に指を突っ込む。

 全裸にの彼女は手足をジタバタさせながら叫び声を上げた


「イ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!」


「デカい声出すなよ、世帯主と一緒にこんな痛みよりエグい事散々やってきただろ? フェル君もお前らの事を話しながら泣いてたぞ?」


「フェ...ル」


 突っ込んだ部分から血を流し、激痛により悲鳴を上げるリーゼに俺は苛立ちながら記憶を読み取る


 グチャッ...


「ウ゛コ゛ァ゛ッ!」


「ここの高級ホテルが防音で良かったよ、いくら叫んでも外には聞こえないからな。そうそう...これ以上床に血を落としたら殺すぞ。明日掃除の人が血の汚れを落とすの大変だろうからな」


「ひっ...」


 俺の理不尽な要求にリーゼはボロボロ涙を流すだけでわ言葉を発さなかった


「なるほど...部屋に来た理由は俺を魅了してそれをネタにパトラを勇者の手籠にする算段ね。まあパトラは可愛い上に強いからそうなるわな」


「そう...よ...あの子は貴方に惚れてる...だから貴方を利用して...彼女を勇者様に近づけようとした...」


「ならその作戦はオジャンだな。勇者の鞘2号は大人しく家に帰って股間の性剣を出し入れしてろ。俺は今からこの部屋の脱臭をする」


「ふざけ...るな... 認め...ない...認めない...認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない! 貴方に私の魅了が効かない訳ない! 絶対にアナタを惚れさせて私のモノにする!」


 勇者のスキルに対する信頼は絶対だな、しかし趣旨が変わってるぞ


「なあメンヘラ...魅了のスキルがお前らだけの専売特許だと思うなよ? 使いたくなかったけど仕方ない...ホンモノを見せてやる━━━」


「どうせ脅し...」


 俺はリーゼの顎を持ち上げ彼女を見つめた



 スキル...《女神の蠱惑》



「...んっ......」



 スキル発動と同時にリーゼの瞳に光がなくなり虚な顔になる。

 


「おい、意識を元に戻せ」


 俺の言葉にリーゼの瞳に自我が戻った


「あ...あれ...何も魅了されてない? やっぱりただの脅しだったのね」


「そこにあるフォークを持て」


「そんなもの持つわけ...なんで...!」


 リーゼはテーブルの端にしまってあったフォークを右手に持った


「どういうこと!? 私の体が勝手に...!」


「お前の精神じゃなくて肉体にだけ掛けたんだよ。俺の魅了は精神と肉体そのどちらか、もしくは両方に掛けられるんだ。そしてそれは人間だけじゃない、動物や植物にまで掛けることが出来るんだ」


「そんなの...ありえない...」


「それと...お前と勇者は主に体液で魅了を伝達していたな。俺にはそんなもん必要ない、目でナンパすればイチコロだ。さて説明は終わりだ...そのフォークで自分の眼球を抉れ、あんまりうるさいと精神にも魅了を掛けて喜んで抉らせるぞ」


「そんな...いやっ...お願いやめて...!」


「ダメだ、パトラまで巻き込もうとした罰だ。あの子は今まで散々苦しんできた...母親は魔物に殺されその魔物はお前らの実験で変貌した彼女のお姉さん的存在だった。彼女の苦しみは全てお前らと勇者のせいなんだよ。それに比べたら片目くらい大したことないだろ...逆に眼帯つけてカッコつけれるぞ」


 リーゼの眼球にフォークが徐々に近づく━━━


「ごめん...なさい...許してください!...お゛願゛い゛し゛ま゛す゛! つ゛く゛な゛い゛ま゛す゛!」


「その言葉は俺じゃなくてパトラに言うんだな...」


 リーゼは自ら眼球を抉る恐怖感からわんわんと号泣し下からも液体を漏らした


「い゛い゛ま゛す゛!  何゛て゛も゛し゛ま゛す゛! そ゛れ゛に゛あ゛の゛子゛か゛!」


「あの子? パトラのことか」


 俺はリーゼの動きを止める


「は...はい...勇者様が...恐らく...パトラさんの部屋に...」


「そうか来やがったか...とりあえずお前は人質だ。この中に入れ」


 創...泡沫の風━━━


「なに...嫌...入りたくない...! んぐ...」


 俺は体が言うことを聞かないリーゼを問答無用で操り泡に閉じ込めた


「...出して...ここから出して! おねが...」


 俺は泡の中で暴れるリーゼを亜空間に放り込みパトラの部屋へ向かった━━━

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