第6話 神とは
『死んでないってどういう事だ? そもそも誰もここには居ないはずじゃ...』
先程の声が気になり再び目を開けると銀髪の長い髪を僕の顔に垂らしてまじまじと覗き込んでいる僕より少し年上くらいの美女だった
「うわぁぁぁ! あ、あなた誰ですか!」
あまりの近さに驚いて飛び起き垂れた髪のせいで痒くなった顔をガリガリと引っ掻くと不機嫌な声で返された
「お前こそ誰じゃ。せっかく寝ていたというのにぶつぶつ呟いたり挙句の果てには変な奇声をあげて我を起こしおって全く...」
変な奇声━━━?
もしかしてさっきの叫び全部聞かれてたのか!?
そう思うと急に恥ずかしくなってきた
「すみません...誰も居ないし死んだと思ったのでつい...」
とりあえず謝罪と言い訳を目の前の女性にする僕。
女性は白いローブに包まれ背中には天使のような翼が生えていたがその翼は真っ黒だった。
それに暗闇のはずなのに何故この人の姿は見えるのだろう...
「まあ良い、ここは我以外誰も居ないからそう思うのも無理はない。それにお前の心を読んだから叫びたくなる気持ちも少しは分かる」
あんな事をされた出来事に対して少しと言われムッと来た僕は不貞寝するように再び横になった
「少しですか...さっき完全に心が折れたので僕の事はほっといてください。どうせもう死んでるし安らかに眠りたいです」
「はぁ...人の話聞いておらんのか? お前はまだ死んでないぞ。ここは我の空間で死後の世界ではない。どういう訳かお前はこの場所に勝手に入ってきただけなんじゃぞ」
その言葉に驚愕する僕。
僕はまだ死んでない━━━という事はまだ希望はあるのか?
「本当に僕は死んでないんですか?」
「何回も言わせるでない。証拠に先程全身を引っ掻いた傷が痛むじゃろ? 死ぬという事はその痛みすら感じない文字通りの無になるのじゃ」
痛みが生きている証拠になるとはよく言ったモノらしく、少女に言われた事で再び全身が焼けるような痛みに襲われた
「イ゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「はぁ...バカな事を。ちょっと触らせろ」
彼女が僕の捲れた皮膚に手を当てるとドス黒いオーラが身を包んだ。
そしてオーラが消えた後痛みは完全に消えて皮膚も掻き毟る前の状態へ完全に戻った
「す、すごい...一体どんな回復魔法を使ったんですか」
「魔法? 何をくだらない事を...我はお前から傷を"無くして"新たな皮膚を"創った"だけじゃ」
傷を無くして皮膚を創る?
何を言っているんだ?
それが回復魔法なんじゃないのか?
「ちょっと待ってください。それが回復"魔法"じゃないんですか?」
「魔法ではないとさっきも言ったじゃろ。そもそもお前たちの世界で使われている"魔法"とは超自然的なマナを微量に体内に宿しそれを放出し行われるモノ。詠唱が必要なのはそのマナを周りから集めるための儀式なんじゃ。たまに無詠唱でやる奴もおるが結局は唱えないだけでやってる事は同じ」
「しかし我は違う。我は無から生まれたルキ。あらゆるものを無に帰しあらゆるモノを創造する事ができる。魔法なんてちゃちなモノと一緒にしないでくれ」
あらゆるものを創造するって?
そんな者は世界で1人しかいないはずだ━━━
「ルキさんは神様ですか?」
僕の問いかけにルキさんは分かりやすく不機嫌になり眉を顰める
「神様? 我をあんなオモチャと一緒にしないでくれ。アイツはこの世界における原初の生命体の1匹なだけで創るしか脳が無いただの木偶の坊じゃ」
「木偶の方!? 神様にそんなこと言うとバチが当たりますよ!」
「当たるワケないじゃろ! アイツを創ったのは我じゃ! お前こそ今ここで存在を"無くして"やろうか?」
「すみませんでした! それだけは許してください!」
僕が必死に謝るとルキさんは少し揶揄うような笑顔を見せてくれた
「なーんて冗談じゃよ。とりあえずお前を元の世界へ戻したいんじゃが....そう簡単に戻れないぞ?」
「どうしてですか?」
「どうしても何もお前がこの世界に来たこと自体が普通じゃない。じゃから戻すのにもそれなりの時間がかかると言うワケじゃ」
「なるほど...具体的にはどれくらいで僕は戻れますか?」
「そうじゃな....向こうの世界で1年くらいか」
1年...それだけで戻れるならありがたい。
まだ僕は生きてて一年後にあの世界戻れる。
そしてあの3人に復讐ができるんだ
「分かりました! ルキさん一年間お世話になります!」
「いや最後まで話を聞け、あっちの世界で一年と言ったがこっちと時間の流れが違う。こっちではざっと40年程度じゃな」
「40年!? そんなに待てませんよ!何とか早くなる方法はありませんか?」
「無い! そもそもどうやってお前がココにきたのか誰が仕向けたのか何も分かってないんじゃ。だが時間があると言う事はお前にもメリットはある」
「メリットですか?」
ルキさんが歪んだ笑顔で僕を見つめる
「復讐...したいんじゃろ? 暇つぶしに我が力になってやるぞ」
悍ましいオーラを放ちながら話すルキさんに僕の消え掛かっていた復讐心に再び火が灯った
「したいです...僕の人生をめちゃくちゃにしたアイツに報復してやりたい、復讐してやりたい、やられた事を何倍にも返してやりたいです」
「いい顔つきじゃ、では早速始めよう。この試練を乗り越えた時お前に我の力を与えてやる」
無邪気な笑みを浮かべたルキさんに僕はコレから始まる最悪の試練を想像する事はこの時出来ていなかった
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