第29話



――五月十三日 22:51――


「虎太郎起きてるか?」

「兄ちゃん、お疲れ」

「なんか久しぶりだな」

「そうかな? 三日、四日ぶり?」

「虎太郎も中学生になって忙しそうだな」

「忙しいって言うかさ、部活で疲れてすぐ寝ちゃうんだよね」

「まあ、睡眠は大事だし」

「でもさ、部活っていいね。毎日練習出来るって楽しい」

「ああ、小学生の頃のチームは土日祝日だけだったっけ」

「うん。僕たぶんこれから上手くなるよ」

「はは、そうか。それはよかった」

「兄ちゃんにすぐ追い付くから」

「じゃあ俺ももっと頑張らなきゃな」

「頑張らないと僕が追い越しちゃうよ」

「おお、それは嬉しいな」

「え、嬉しいの?」

「当たり前だろ。虎太郎の成長を何より楽しみにしてるんだからな兄ちゃんは」

「兄ちゃん本当にブラコンだね」

「ブラコン?」

「友達が言ってたよ。僕たちはブラコンだって。普通はこんなに兄弟仲良くないんだってさ」

「よそはよそ、うちはうちだ」

「はは、母さんみたい」

「俺が好きなのはバスケだよ。だからバスケをやってる奴はみんな好きだし応援してる。特に弟のお前はな」

「ふーん」

「とにかく虎太郎が楽しそうでよかったよ」

「うん。楽しい」

「部活が出来るのは今のうちだけだからな」

「ああ、そっか。三年生だからもうすぐ引退するんだよね」

「本当に、三年なんてあっという間だぞ」

「中学校も?」

「もちろん。気が付いたら終わってた」

「そんなに?」

「だからその間に出来ることは精一杯やるんだ。部活も勉強もな」

「また勉強の話し? 兄ちゃん本当に母さんみたいだな」

「心配なんだよ。バスケばっかりで成績が落ちたら全部バスケのせいにされるだろ。学生のうちはちゃんと勉強もしないとな」

「本当に兄ちゃんはバスケバカだね」

「はは、嬉しい言葉だよ」

「兄ちゃん、もう寝ちゃいそう」

「わかった。じゃあな虎太郎」

「うん、またね」

「おやすみ」





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