第19話
――十一月九日 21:53――
「ちょっと夜は寒くなってきたな。虎太郎起きてるか?」
「兄ちゃんお帰りなさい。起きてるよ」
「ただいま」
「またホウライ軒?」
「またってなんだよ。本当に旨いんだぞ、味噌ラーメン」
「いいなあ」
「早く虎太郎にも食べさせたいよ」
「あ、そうだ! お正月はみんなでそっちに行くからね」
「正月か。虎太郎は練習ないのか?」
「元旦から三日間休みだよ。あったとしても休むけどね」
「はは、そうか」
「兄ちゃんは部活あるんでしょ?」
「元旦は休みだけど二日からあるぞ。一月は試合もあるからな」
「あ! 父さんと母さんにはまだ兄ちゃんには言うなって言われてたんだった!」
「言っちゃったな」
「どうしよう、楽しみすぎてつい。兄ちゃんどうしよう」
「大丈夫だよ。俺が聞いてないフリしておけばいいだけだろ」
「そんなことできるの?」
「できるさ。なんなら俺から母さんに正月はどうするのか聞けばいい。だろ?」
「さすが兄ちゃん。頭いいな」
「正月か。虎太郎に会うのも久しぶりだな。背は伸びたか?」
「僕ね、ちょっと伸びたよ。でもぜんぜん。兄ちゃんみたいには伸びないよ」
「俺もまた少し伸びたぞ」
「ええー! また伸びたの? すごいや兄ちゃん」
「しっかり食べてしっかり寝ること」
「ホウライ軒で?」
「はは、そうそう。あ、そっか、正月こっちに来るならホウライ軒を紹介しようと思ったけど、よく考えたらホウライ軒は休みだな」
「えーそんなぁ。せっかく食べられると思ったのに」
「残念だったな。高校生になるまでおあずけか」
「もう、僕、待ってばっかりいる。早く大人になりたいよ」
「はは、虎太郎は早く大人になりたいのか?」
「だってそうしないと兄ちゃんに会えないし兄ちゃんと一緒にバスケも出来ないじゃん」
「そうか。じゃあ、その間にちゃんと勉強してちゃんと練習することだな」
「もう! わかってるよ! 兄ちゃんのバカ!」
「おい、なんだよ虎太郎」
「兄ちゃんはそればっかりじゃん!」
「仕方ないだろ。それが大事なんだから」
「バスケのチームなんか入らなきゃよかった。兄ちゃんみたいに上手くもならないし背も伸びない。チームに入らなかったらもっといっぱい兄ちゃんの所に遊びに行けたのに」
「おいどうした虎太郎」
「僕だって兄ちゃんともっと一緒に遊びたいよ」
「虎太郎……そっか、そうだよな、ごめんな」
「もういいよ」
「ごめんな、そばにいてやれなくて」
「もういい。もう寝る。お休み兄ちゃん」
「虎太郎ちょっと待てよ……もういないか。虎太郎、誰だって、兄ちゃんだって最初からバスケが上手だったわけじゃない。みんな努力して上手くなるんだ。だから虎太郎も頑張って続けろよ。頑張っていればきっと楽しくなる。兄ちゃんずっと待ってるからな。お休み、虎太郎」
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