第7話
――七月二十四日 20:56――
「ただいま」
「兄ちゃんお帰りなさい」
「試合勝ったぞ」
「すごい! おめでとう兄ちゃん」
「サンキュー。虎太郎も試合あったんだろ」
「うん。三回戦で負けちゃった」
「試合には出たのか?」
「ちょっとだけ出れたよ。緊張した!」
「はは、懐かしいな緊張とか」
「兄ちゃんは緊張しないの?」
「今はしないな。でも昔はしてたよ。それで先輩に教わったんだ。緊張するのは練習が足りないからだって。とことん自分の限界まできっちり練習してればどんな状況でも恐くないんだぞって。それは本当だった。納得いくまでちゃんと練習してれば緊張なんてしなくなった」
「へえ、じゃあ僕も練習不足だね」
「大丈夫。そのうち緊張もしなくなるさ」
「うん。でも楽しかったよ」
「そっか。それが一番だな」
「でも兄ちゃんの試合も見に行きたかったな」
「仕方ないだろ。休みの日は虎太郎も練習や試合があるから」
「そうなんだけど、父さんと母さんも兄ちゃんの試合は見たかったと思う」
「まあ、そのうち見れるさ」
「そうかな」
「俺だって虎太郎の試合見たかったぞ。いろいろ教えたいことも山ほどあるし。本当は兄ちゃんがお前のコーチやれればよかったのにな」
「わあっ、僕も兄ちゃんに教えてもらいたいよ」
「はは、そうなればいいな」
「うん!」
「そうだ、この前言ったけど誕生日、欲しい物決まったか?」
「あ、決まった! 僕ね、兄ちゃんのサイン入りのバスケットボールがいい」
「はあ? なんだよそれ」
「よくテレビでやってるじゃん。ボールにサインしてる選手」
「あれはプロの選手だろ」
「兄ちゃんだってプロになるじゃん」
「そのつもりだけど、本当にそんなんでいいのか?」
「うん! 兄ちゃんのボールが欲しい!」
「わかったよ。今度送るから待ってろ」
「やったね! ありがとう兄ちゃん」
「おう」
「みんなに自慢するんだ」
「バカ、やめとけって」
「だって僕しょっちゅう伊吹くんの弟さんねって言われるんだよ」
「へえ」
「兄ちゃんは今でも人気者なんだから」
「そんなことないよ」
「あるってば!」
「はは、わかったよ。じゃあ、俺はそろそろ風呂入って寝るわ」
「うん、お休みなさい」
「お休み。また明日な」
「うん」
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