第三十話 イリアの目覚め
聖歴
エターク王国首都オレオール・グランベル公爵家邸宅。
空の異変、大地震、そして
ルーカスはイリアが滞在する客室を
テラスへと続く大きな窓は換気のために
——彼女は、あの日から眠り続けていた。
原因は魔術を
昨日まで熱にうなされており、今朝になってようやく熱が引いた。
ルーカスはベッドの横で椅子に座り、眠るイリアを見つめる。
光に反射して輝く長い銀糸、閉じられた
規則正しい呼吸を繰り返して、イリアは
(こうしていると、まるであの日に戻ったみたいだな)
あの時もこうして、目覚めず眠り続ける姿を見ていた。
(君と、話したい事がある。
だから、早く目を覚ましてくれ——)
ルーカスは自分よりも小さなイリアの手をそっと握り、願いを込めて祈った。
空の異変、大地震、
地震による被害も少なくはなかったが、魔獣による襲撃が事態をより深刻にさせた。
王都の北西と南東の城門付近に出現した
北西で生じた
南東の
南東は初動が手薄であったために魔獣による被害が大きかった。
しかし、
王都内へ入り込んだ魔獣の
(だがそれでも、今回の災害では数多くの死傷者が出た)
今もなお、王都では救助活動続けらている。
復興に取り掛かるには
首都オレオールだけでなく、王国内の各地で地震による被害と、軽微ながら魔獣の出現が確認されており、被害の報告が上がって来ている。
そして驚くべき事に、この異変は王国だけに留まらず、世界各地で起きていた。
(単なる
地震の前に空が赤黒く変色した事も何らかの関係があると考えられ、
「一体、何が起こっているんだろうな」
ルーカスは眠るイリアに語りかけた。
当然、返事が返って来る事はないのだが、話しかける事で目を覚ますのではないかという期待も少しある。
眠る彼女を見守りながら
それと言うのも〝破壊の力〟の第二限定解除を
『皇太子命令だ。休むのも仕事の内だよ?』
と、何度目かわからない皇太子命令が下され、聞き入れてはもらえなかった。
普段はこちらを振り回す癖に、時折こういった
自分は対策会議だ何だと休めない状況だというのに。
「全く……困ったものだな」
強制命令を下したゼノンに感謝しつつ、ルーカスは
不意に開いた窓から
レースカーテンが揺れて大きく舞い上がる。
その様子を見て、窓を開けたままにしておくのもよくないかと思い、ルーカスは座り込んだ椅子から立ち上がった。
移動する前に、イリアへ視線を落とす。
すると——。
眠るイリアの、伏せられた
ルーカスは僅かな動きを見逃さなかった。
そのまま彼女を
合間から
彼女の瞳は天を
ここが何処であるのか、確認しているのだろう。
「……イリア」
ルーカスは彼女の名を呼んだ。
声に
数度、
イリアはゆったりと優しい笑顔を浮かべて。
「おはよう、ルーカス」
と、言葉を
イリアが目覚めた。
その事に感謝と嬉しさを噛み締めて、ルーカスも
「おはよう、イリア」
敬称を付けず自分の名を呼んだ彼女に、目覚めの言葉を。
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