第十四話 機は巡る
転換点は訪れた。
一度は
反射的にヌンが大鎌を天高く持ち上げ振り下ろす。
フェイヴァは槍の片方で受け止めると、すかさずもう一本の槍を構える。
狙うは急所。心臓の位置。
これで
フェイヴァはそう確信した。
けれども——。
「殺しちゃ、ダメッ!」
と、槍を
突き出した槍はヌンの衣服を裂き、脇腹を
「う……あぁッ!!」
苦痛の
突き出した槍を戻して、二対の槍で押す。
耐えきれなくなったヌンが後方へよろめき、フェイヴァはすかさず槍を反転。
ヌンが声にならない悲鳴を上げて前のめりになる。
フェイヴァはヌンの意識を刈り取るべく素早く彼女の背後に回り、
と、ヌンの身体が頭から地面に倒れ込んだ。
そうして、数秒経過した後もヌンが起き上がる気配はなかった。
本当はこのまま仕留めるべきなのだが——。
『星の導きに
という、誰かの
声を無視してはいけないと
この感覚にファイヴァは覚えがあった。
〝使徒の本能〟だ。
つまり声の
フェイヴァは次に自分がすべき事は、と視線を
ヌンとシンは意識
ベートは魔術を封じられ、手負い。
ラメドは健在だがツァディーが魔術器で
教皇ノエルは——動く気配がない。
戦いの決着まで傍観者に徹する心積もりのようだ。
振り返るとリシアが他の王国騎士へ
もう間もなく彼らも戦線へ復帰するだろう。
ならば、とフェイヴァが前方へ向き直ると、
「
世界を……流れを、掴むためにっ!」
フェイヴァは無音で
戦況は好転しつつある。
均衡を崩す契機を逃してはならない。
——フェイヴァは二つの戦場を視界に
二頭の
状況的にはルーカスの戦いに手を貸した方が良さそうに思えたが、星の導きもある。
フェイヴァは高い位置にある
隆起する
アインは
不意打ちをかける
だが、槍が貫通した直後、アインの体は黒い粒子となって消えてしまった。
「無粋ねぇ。私とレーシュの
鈴を鳴らしたような声に続いて、指を弾く音が響いた。
するとフェイヴァの周囲に黒い霧が立ち込め、
これも幻影だ。
槍で
(……アインはどこだ?)
その姿を探してフェイヴァは辺りを見渡す。
下ではイリアが複数の魔狼と、
寸分の狂いもなく落とされた雷によって
そして銀糸から
自分を呼んでいる、と感じたフェイヴァは
槍の一本を
「フェイヴァ、アインの相手をお願い。私はルーカスのところへ行くわ」
イリアは言うや否や、フェイヴァの答えを聞く前に駆け出して行った。
フェイヴァはその背を見送りながら「承知」と返す。
彼女が何を
(だが、それで良い)
今重要なのは
「ちょっと、レーシュ!
勝手に配役の交代はナシよー!」
テンポよく鳴り響く音と共に生み出された魔獣の幻影が周辺を囲み、また何体かの魔獣がイリアを追って行くのが見えた。
仕留めたはずの魔鳥も復活の
数体の小物ならば問題ないだろうが、アレに彼女の後を追わせる訳にはいかない。
フェイヴァは
一体でも多く巻き込めるように、大きく。
移動しながら魔獣を蹴散らして、先ほど
直後に魔鳥が復活し、火の粉を振り撒いて飛び立とうとするのが見えて——フェイヴァは手元に戻したばかりの槍を再度投げ放った。
『ギイエェッ!!』
槍は見事に魔鳥の腹に突き刺さり、不快な
幻影に痛覚は存在しないはずだがよく出来ている。
フェイヴァは槍の軌道に続き、高度を上げようとする魔鳥に取り付くと槍を引き抜き
追い打ちにもう一太刀、二本目の槍から繰り出す斬撃を浴びせて離脱した。
魔鳥は再び地へ墜ち、斬った個所から霧へ
けれども、アレが
「もうっ! ここからが盛り上がるところだったのに。
まさかステラが寝返るなんてね」
不機嫌な鈴の音が後方より響く。
振り返れば腰に手を当て頬を
フェイヴァは矛先をアインへ向け、告げる。
「これよりお前の相手はオレだ」
アインの眉間に
「貴方みたいな人と遊んでも、面白くもなーんともないんだけど?」
唇を
その姿は一見無防備に見えるが、彼女の能力を考えると斬り込んだところで容易にはいかないだろう。
「……まぁ、仕方ないから遊んであげるわ」
アインは指の代わりに両手を何度か打ち合わせて鳴らした。
と、濃い霧が一帯を包み込み、ついさっき倒した魔鳥が瞬時に復活。
次いで
戦場は
この全てを斬り伏せるのは流石に骨が折れるが、ここが正念場だ。
フェイヴァは腰を低くして両手の槍を構えた。
〝太陽の
主の意思を守る
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