第一部 第四章 隠された世界の真実
第一話 ナビアへの航路
聖歴
ナビア連合王国から届いた救援要請に対し、エターク王国はルーカス
急ぎ出発の準備が行われ、数日の準備期間を経て、特務部隊計
また国王の要請を受けて、
イリアの記憶は戻りつつあったが、双子の姉妹とリシアは引き続き護衛として、一緒にナビアへ
青空の下、船の帆が風を受けて船体を揺らしながら、蒼い大海原の波を超えて進んで行く。
その船上の甲板には、桃髪の双子の姉妹が青白い顔でぐったりと
「二人とも大丈夫?」
「大丈夫じゃない……」
「うぅ……」
「治癒術も気休めにしかなりませんし、困りましたね」
どうやらシャノンとシェリルは船酔いをしたらしい。
イリアとリシアが手のひらから淡い緑の光を放ち、それぞれに治癒術をかけている。
ルーカスはその様子を少し離れた位置で、到着後の予定の確認のために集まった一班のメンバーと眺めた。
「妹さんたち辛そうですね」
「船旅は慣れないときっついよなぁ」
アーネストは銀の髪が
するとアイシャが何を思ったのか、
「
眉根を下げてそう言ったロベルトが、
使用には規制が
だが、今回はそう出来ない理由があった。
「仕方ないさ、あちら側が機能してないのだから。復旧にも時間がかかるようだしな」
地震の影響で、ナビア側のマナ機関が破損してしまったと言うのだ。
加えて、首都ザフィエルでは原因不明のマナ欠乏症が広がっており、地震の影響と
「切迫した状況が予想出来るだけにもどかしいですね」
「ああ、航路では時間が掛かるからな……」
ルーカスはロベルトの言葉に同意した。
ナビアへ着くのは早くても三日、四日後だ。
——とは言え、他に移動の手段はないので、
話してる間に、双子の姉妹の下へアイシャが
彼女はポケットへ手を入れてごそごそとまさぐると何かを取り出して、二人と顔の位置を合わせるように
そしてその何かを左右の手に一つずつ乗せ、シャノンとシェリルの目の前に差し出して見せた。
それは銀色の紙に包まれた——
「これ、よかったらどうぞ。ゼンロの
「ありがと……うっ」
「ありがとう、ございます」
シャノンとシェリルが気力を振り絞って、銀の包みを受け取る様子がある。
ゼンロとは特有の香りと辛みを持つ、様々な薬効のある野菜。
糖分の補給も乗り物酔いに良いらしいので、ゼンロの薬効と合わせて吐き気や酔いの
「にしても、到着まで暇になるなぁ……。
女性陣を見つめてハーシェルは
「頼むから面倒を起こすなよ。
「間違ってもシャノンちゃん、シェリルちゃんに手を出さないように」
「……アーネストも副団長も、俺に対する信用なさすぎじゃね?」
「ハーシェル、大人しくしてるんだぞ」
「団長まで!」
ハーシェルの交友関係——こと女性が絡む事については、容姿が良くモテるせいか、アーネストから
普段の素行から見ても不安しかないため、当然の指摘だろう。
ハーシェルは頭の後ろを乱雑に
「——ってか
話題の転換を狙ってか、ハーシェルがイリアの事を話題に出した。
地震に
目撃者が多く市民の間にも
公言していないが彼女の正体は、あの場を目撃した一部の人々により知られる事となってしまった。
「その名と活躍は誰もが知っていますが……どう見ても僕らより若いですよね」
「
ルーカスはロベルトの言葉に
「【女帝】の
ナビア連合王国を取りまとめる女王陛下は、教団に
皇太子妃アザレアの実母であり、
今のナビアを形作った立役者である。
「それとナビアにはもう一人、
「
「ああ。【刑死者】の
しかしその力を持ってしても、ナビアを襲った今回の
ルーカスはその事実に不安を感じながらも、船が進む海の先に広がる地平線を
そうして余談を挟みながら予定の確認を終えると、一班の団員たちは船内へと戻って行き、船酔いで苦んでいた双子たちも純白の祭服を着たリシアに連れられて、船室へと戻って行った。
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