第二十一話 高潔なる双子の騎士
白昼の
イリアと住民を守るため、双子の姉妹は戦い続けていた。
「シェリル、お兄様に連絡は?」
「何度も試していますが、繋がりません。……妨害されていますね」
「そう。異変に気付いてくれるといいんだけど」
「警備の騎士が駆け付ける様子のない点を
シャノンとシェリルは会話を交わしつつも、一糸乱れぬ動きと連携を見せる。
切り裂き、突き——遠方の敵には詠唱破棄した下級魔術を放ち、眼前に迫った幻影は薙ぎ払う。
華麗な
「それにしても驚きよ。そんな扱い辛くて有名な、風化した魔術を使いこなすなんて。……でも、あんまり頑張られると、私も困るのよね」
少女が両手を合わせると、小気味よい乾いた音が響いた。
——霧が形作ったのは小柄な少女の二倍近くの大きさの、どっしりとした獣。
耳は先が丸く、
全身は
——
その瞳は魔獣特有の赤色だ。
「
少女は〝
獣は瞳を細めリラックスした様子で、いまにもごろごろと鳴きだしそうだ。
「ふふ、可愛いでしょう? さ、遊んでらっしゃい」
「グオァアアア!!」
声音にビリビリと一面が振動するかの様だった。
シャノンが剣を盾に、速度に乗った
今にも
「全っ然、可愛くないんだけど!?」
シャノンの
腕は小刻みに震えており、巨体を受け止めるだけで精一杯な様子がわかる。
何とか
一方のシェリルは、依然として産み落とされる
——激しい攻防が続いていく。
シャノンとシェリルは善戦しているが負傷を重ねて、イリアはそんな二人を、意識が飛ばない様に
すぐ傍で倒れるリシアは目覚める気配がない。
(胸が……痛い。二人が傷つくところを見るのは……辛い)
地についた拳をイリアは握り締める。
(あの子は……私を迎えに来たって言ってた。
なら、私……私が、あの子と、一緒に……行けば……)
シェリルとシャノンが傷つく事もなく、事態は収まるのではないか。
このままでは二人が——関係のない街の人たちにも危険が
(……そうなる前に、私が……)
そんな考えが頭を
本音を言えば、嫌だ。
行きたくない。
「逃げろ!」と、自分の中の何かがずっと叫んでいる。
けれど——彼女たちが傷つく姿を見るのはもっと嫌だった。
ふらつく頭を押さえて、意を決し前を向く。
そうすれば、
状況は
諦めなど
「イリアさん、変な事は考えないで下さいね」
シェリルはイリアが何を思ったのか悟ったように語る。
「私もお姉様も、決して諦めません! ——だから!」
シェリルは向かって来た
『極寒の息吹。雨となり降り注げ!
口早に魔術を詠唱して見せた。
無数の小さな、けれど
精密な操作技術だ。
ただの一つも、意識を失った住人に当てるような誤射はない。
出現していた魔狼の幻影を一網打尽に貫き、
予想外の攻撃に、獅子の巨体がよろめく。
シャノンはその隙を見逃さず、剣の
「やあああ!」
シャノンがひたすらに剣を振るう。
速度の乗った剣が銀の軌跡を
そして——着地したシェリルが、
先ほどと同じく、けれど幾分大きな氷塊が脳天目掛けて撃ち落とされ、その攻撃を受けた
その間、数秒。
まさに一瞬の出来事だった。
幻影が一掃され、シャノンとシェリルはイリアの前へ立ち並ぶ。
少女は驚きのあまり声を吞んで、しきりに
「イリアさんは安心してそこで待っていて」
「ええ、
にっと
「シャノちゃん……シェリちゃん……」
ここに居ていいと、繋ぎとめてくれる。
彼女たちの
二人は前方へ向き直り、銀色に輝く剣の切っ先を、再び黒いローブの少女へと向け宣言する。
「騎士として、この剣に
張りのある力強い口調。
シャノンとシェリルの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます