第九話 絶対零度・氷獄檻≪グラスネージュ・エンファージ≫
リエゾンを襲った
それを排除するため、ルーカス達一班は別動隊として作戦行動に移る。
まずは町に近い地点、東側から。
目標地点へアイシャの
的確な誘導のお陰で
とある地点まで来たところで「ストップ。……多分、見つけたわ」と、アイシャが制止を掛けた。
ルーカスたちは足を止める。
アイシャは五十メートル程先を指さしており、全員が指の先を見た。
遠目であるため少しわかりにくいが、そこには
そして
「
魔狼の出現を見たアイシャが眉間に
一方通行か、相互通行可能かは不明だが、出入り口と言う意味を込めてルーカスはそう
「しっくり来るネーミングだろう?」
「ええ、これ以上ないくらいに」
ルーカスは
——魔狼が少なくとも十数体、周囲をうろついている。
(さて、どう攻略する?)
と、ルーカスは思考を
(やはりアイシャの魔術で
「坑道の中でやったみたいに、オレらが道を切り開いて団長が斬り込みます?」
「いや、今回は——」
「
「あー……。そいや居ましたね、
ルーカスが作戦を提案しようとしたところで、会話が
ハーシェルは自身を
アイシャが冷ややかに微笑んでいる。
「あら、
「最初にバカ呼ばわりして、ケンカを売って来たのはそっちだろ?」
「言葉のニュアンスくらい
「ほら! やっぱりバカにしてんだろーが!」
「貴方の思考の足りなさを
「何だって?」
過熱する言い合いに、口喧嘩が
(……話が進まない)
今は作戦行動中。
それを
「二人ともそこまでだ! ケンカなら後にしろ」
怒号を飛ばすと、アイシャは肩を
対してハーシェルは宙に視線を向け、納得がいかないと言った表情を浮かべている。
「申し訳ありません、団長」
「すんませんっした」
ハーシェルの
「ハーシェル、次問題を起こしたら始末書だからな」
「うえっ?! なんで俺だけ!」
「不公平だ!」とごちるハーシェルに、アーネストは「自業自得。おまえが不真面目だからだろ……」と言い放つ。
そのようなやりとりを経てようやく、作戦のすり合わせを
ルーカスは気を取り直して指示を出す。
「アイシャ、魔術で
アーネストはアイシャの護衛とサポートを。
流れとしては以上だ。質問はあるか?」
三人へ視線を送ると、アイシャが
「威力の低い魔術では
(……悪くないな)
ルーカスとしても、
という点が気になるところであった。
もし今後同じ様な状況が起きた場合、ルーカスの力以外に解決の方法がなかったとしたら——
少しでも方法を
「許可しよう。ただし一回限りだ。この後いくつ
「はい、了解です」
アイシャが
四人は顔を見合わせて「準備は万端、いつでも行ける!」との意味を込めて、無言のうちに
「よし! アイシャ、頼んだぞ」
「ご期待に沿えるよう、尽力します」
アイシャはロッドを手に取ると魔術詠唱のため、
「さ、お手並み拝見といきますか」
そう言ってハーシェルは双剣を構え、
アーネストもアイシャの近くに
ルーカスも右手で刀を抜くと持ち手を変えて、力の解放のためにコードを
「第一限定解除。コード『
『コード確認。第一限定、
左の腕輪の
坑道でも力の解放を
一回につき最大五分。
任意で終了するか、最大時間経過で
そうしているうちに、アイシャの詠唱が始まる。
『
マナの輝きが増していく。
発動しようとする魔術に感化され、凍り付いたような冷たい空気が周囲に吹き荒れた。
『
マナの高まりに大気が震えていた。
氷の結晶である白い雪をまとった風が、アイシャを中心に
『
術の名が告げられ、魔術による神秘が形と成る。
大気を支配した凍える空気が吹雪を呼び起こし、
そして極寒の冷気の余波が吹雪と共に駆け抜け、一面を白銀に染め上げた。
ルーカスとハーシェルは魔術の完成を見届けると
〝
その威力は絶大だった。
白銀が積もる氷塊の地に、生存している
「
「これで
しかし——上級魔術の威力を
氷塊に
「……まあ、そう都合よくはいかないか」
門の健在を確認してルーカスが眉根を下げると、ハーシェルが隣でがっくりと肩を落とした。
「あー、ダメかぁ。団長の力がなかったマジで詰みっすね、これ」
そう言って、ハーシェルは
破壊は叶わなかった。
だが——さすがに氷に封じられては、機能しないのか、
(これは、無駄骨という訳でもなさそうだ)
「いや、意外な収穫があったかもしれない」
「へ?」
「下がっていろ。今はこれを排除するのが先だ」
「了解っす」
ハーシェルが
ルーカスはそれを確認して、
視界に真っ直ぐ目標を
破壊の力を
振り抜いた刀を鞘に納めると、ルーカスは
二人もルーカス達の方へ歩いて来ており、歩み寄る形で合流した。
「力及ばず申し訳ありません」
アイシャが紫の
真面目なアイシャは、
だが、作戦事態は何の問題もなく、むしろ
それに——。
「謝るどころか、むしろ有益な情報が得られたぞ」
「え? 情報ですか?」
「ああ、移動しながら話そう」
その後ろで、「おまえ何か気付いたか?」「全然」と言うハーシェルとアーネストのやりとりが交わされていた。
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