『幕間 不穏の影①』
惑星アルカディア。
理想郷——そう名付けられたこの星は、かつて創造の女神が創ったと言われている。
創世の時代、女神は世界の中心に世界樹と呼ばれる大木を植えこの星をマナ——神秘的力の
世界に満ちたマナから人、動物、虫、
——創世の時代は、
しかし世界は今も、女神の
世界の中心には変わらずに世界樹が
人々は大気に
これにより街を国をより一層発展させ、不自由のない暮らしを送ってきた。
だが、恵まれた環境の中でも争いは起きる。
ある時は資源の利権を巡り。
またある時は土地の支配権を。
またまたある時は、国家間の思想の相違により衝突が起き。
己が欲満たすため他国へ侵略し、戦果を
時には、信ずる神の違いによっても、争いは起きた。
それでも、
物事の裏に、大きな
ただ
女神の愛した
だから、僕は決めたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そこは薄暗い地下の一室。
中心には祭壇があり、地面には魔法陣が広がっていた。
部屋の中心で僕は、
表示される数値に異常はなく、術式も不具合は起きていない。
実行に
「こちらの調整は最終段階もクリア、問題ないね。アレの準備はどうなってる?」
僕は後ろに控えているはずの男を探して、振り返った。
そうすればそこには思った通りの人物、長身でがたいが良く、僕とは父親くらい年の離れた男が、白銀の
「
「そ。ならいいよ」
落ち着いた低い
『女神の愛が、この
と、そこには古代語でそう書かれていた。
確認したい事は一通り終えたので、画面を閉じるため
「そういえば、いつもお連れのあの娘はどこに?」
「彼女ならお使いだよ」
「お使い……ですか」
「うん。宝石を取りに、ね。元はと言えば彼女の失態だ。失態は自らの手で
会話をしながら作業を進め、すべての画面が閉じたのを確認すると祭壇に
そうすればパネルが消失し、光源の
「手厳しいですね」
「これでも甘い方だと思うよ? 彼女じゃなければ今頃、首を飛ばしているよ」
男の言葉に体を後ろへ反転させると、手で首を斬る動作をして見せた。
すると男は困ったように肩を
あの日取りこぼしてしまった宝石は、僕にとって唯一無二の存在。
最後まで実行を
(命があるだけ
これ以上ないくらい
(——本音を言えば、僕が行きたかった)
だけどそれは叶わない願いだ。
それに、来たる日に
(汚物は一掃しないとね)
地位に
気取られぬよう、
「そろそろ時間です。戻らねば怪しまれます」
「そうだね。……戻ろうか、あの地獄に」
男の声にうなずいて——地獄と
(
「お顔に出ていますよ。そんな顔をしていてはイメージが台無しです」
男が苦言を
奴らの事を考えていた自分が、いまどんな表情を浮かべているのかは想像に
「はっ。お前はいつも冷静だな」
「貴方様より人生経験は長いもので。仮面を被る事には慣れております」
「よく言うよ。まあ僕も見習わないと」
男も僕と同類だ。
いや、同志と言うべきか。
奴らに
だが——耐えるしかなかった日々はもうすぐ終わりを告げ、思いが果たされる日は近い。
(それまではせいぜい演じてやるさ。やつらが望む姿をな)
そうして部屋の入口へと向かい、地上へと続く階段を上り始めた。
(さあ仮面を被れ。
万人を愛し、愛される
今は耐え忍ぶ時。
その時の
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