第一部 第二章 忍び寄る闇と誓い

『幕間 ルーカスからイリアへ宛てた手紙』

 拝啓。


 本当は直接話したかったが、急な任務が入ってしまいすぐには戻れそうにないので手紙で伝える。


 先ほどはあのような振る舞いをしてしまい、すまなかった。


 きっととても驚いた事と思う。

 記憶がないのだからこんな事言われても戸惑うだろうが、君が泣く姿を初めて見たから、動揺してしまったんだ。


 この件については戻った際、改めて謝罪をさせて欲しい。


 それと肝心な事を伝え忘れていた。

 君の名前だ。

 イリア・ラディウス。

 それがかつて君の口から聞いた、君の名だ。


 記憶がない事については、医者のファルネーゼきょうとも話した。

 不安な気持ちはあるだろうが、目覚めたばかりなのだからまずはゆっくり体を休めて欲しい。


 そこを君の家だと思って、と言うのは難しいかもしれないが、危害を加える様な者はいないはずだ、安心して過ごしてくれ。


 何か困った事があればこの手紙を持たせた双子の妹シャノンとシェリルに相談するといい。

 君の力になるよう話してあるから、こころよく聞いてくれるはずだ。


 それとリシア、彼女を君の専属治療師として呼んである。

 ファルネーゼきょうの定期往診もあるが、体調の事など同性の方が気兼ねなく話せる事もあるだろう。


 取り急ぎこんなところだろうか。

 見知らぬ場所で難しい事は承知しょうちしているが、君が心穏やかに過ごせることを願う。


 体調にはくれぐれも気を付けて。


 敬具。


 ルーカス・フォン・グランベル

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