第十三話 彼女を守る為に
ルーカスはファルネーゼ
その後は屋敷の執事長に
すぐにイリアと顔を合わせるのが気まずかったからだ。
だからまずは、彼女が目覚め
仕事を放り投げて来た事も、気掛かりだった。
ロベルトが代わりにこなしているのだろうが、それに甘えて任せきりには出来ない。
報告を終えたら職務に戻り、やるべき事を終えてから改めて、イリアと話そうと思った。
行政区へ向かう場所に揺られながら、ルーカスは考えを
イリアを守る
(存在の
素性について知っているのは陛下と父のグランベル公爵、ゼノンにディーン、そこに自分を含めた五人。
情報の
(少なくとも、イリアが記憶を取り戻すまでは)
ファルネーゼ卿と公爵邸に仕える使用人には、彼女に関すことを口外しないよう
あの日の討伐に関わった騎士団員にも同様の処置を取っているが、再度徹底する必要があるだろう。
(貴族の間で
話題に上がらなくなれば、噂など自然と
(……身の安全の確保も必須だな)
以前の彼女は何人も寄せ付けない強さを持っていたが、記憶のない状態では戦えるのかさえ怪しい。
公爵邸で過ごしてもらうにしても、今の警備状況では
可能な限り自分も
公爵邸の警備を強化し、可能であれば専属の護衛を付けるのが良いだろう。
(この件は陛下——
陛下は一国を背負う
六年前の戦争で亡くなったカレンを、動ける状態になかった
ルーカスの恩人である事も加味して、良い様に取り計らってくれるはずだ、という確信があった。
(そして、真相究明。彼女の身に何が起こったのか、探らないとな)
真実を突き止めるためには、情報が必要だ。
彼女の記憶が戻ればそれが一番の近道だが、
積極的かつ迅速に行動しなければ、とルーカスは考えた。
(彼女を良く知る、
「あてがある」と言ったのは、それだ。
ただ、直接の連絡手段はないため、事前に示し合わせるのは難しい。
ディーンの働きに期待するしかない。
もうすぐ、アルカディア教団教皇聖下による
各国で人の流れが大きくなる時期、情報が得られやすくなる反面、警戒も必要だ。
今考えるべきことはこれくらいだろうか——と、思考を終えて、ルーカスは窓の外へ視線を向けた。
馬車の窓から見える王都は人々が行き交い、様々な感情を見せながら日常を送っている様子が
一見すると王都は今日も平和に見えた。
だが、世界は
帝国は女神を
〝力こそ全て。強さに
という教義の下、
ルーカスが〝
この戦争の
近年ではエターク王国の同盟国、海を
直接的に大きな衝突はないものの国境での緊張は依然と続いており、予断を許さない状況だ。
増加を続ける魔獣被害に、謎のマナ
イリアの身に起きた出来事も、もしかしたら大きな事件の前触れなのでは?
と、そんな風にルーカスは考えてしまった。
(
世界は混沌としている。
情勢がどう移り変わって行くかは読めないが、彼女を守る
それがかつて自分を救った、イリアへの恩返しになると信じて。
何故そこまでするのか。
彼女に気があるんだろう?
と、また幼馴染に
(だとしても構わない。今の俺が在るのは、彼女のお陰なのだから)
王国の騎士としてこの国に生きる人々を守るために力を
何気ない日常を家族と、友人達と笑って過ごし、
そして、宿した力を恐れず、己の一部であると受け入れる事が出来たのは——。
(全部、イリアが居たからだ)
大切な人を亡くし、絶望を経験した過去。
彼女が居なければ自分は、宿した力を無差別に振るって、
(イリアは闇の中から俺を救い上げた光)
だから今度は、困難に直面した彼女にとって自分が、そういう存在で
そんな思いを胸に抱いた。
——それが、恋情に近い感情である事には
ルーカスを乗せた馬車は王城へと進む。
第一部 第一章
「
終幕。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次章
第一部 第二章
「忍び寄る闇と誓い」
ルーカスは新たな謎と、記憶喪失のイリアが抱える問題に直面する。
その時、彼は何を想い、何を誓うのか——。
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