俺のこの能力は小説を書いちゃう能力なんだぜ…!

ちびまるフォイ

ふつうに戦えば2秒くらいで終わる戦い

「ククク。よくぞここまで来たな」


「ついに見つけたぞ! 父の仇!!」


「我は宵闇の聖十字騎士団団長。

 ヴァイオレット・ミュー。

 その目で私の能力を受けられることを誇るが良い」


「な、なんだと!?」


「能力解放!! ハデス・ラビリンス!!」


「こ……これはいったい……!?」


「ハデス・ラビリンスの能力は、死の迷宮。

 この中に囚われた貴様にはすでに勝機はない」


「なぜそんなことがわかる!?」


「この迷宮に入ったが最後、すべての能力が封じられる。

 やがて迷宮は徐々に貴様を押しつぶすまで拡張と収縮を繰り返す」


「なぜそれを教えてくれるんだ!!」

「我の能力のすごさを知ってほしいから!」


「くそ……! こんな能力にどう立ち向かえばいいんだ……!」


「ハハハ! せいぜい迷宮で断末魔を響かせながら死ぬがよい!!」



そのとき、すべての世界から光が一瞬消えた。

次に目を開けたときにはふたたび二人が相まみえる場面まで戻っていた。



「な、なんだ!? 貴様、いったい何をした!?」


「お前の能力、ハデス・ラビリンスは確かに強い。

 でも、俺の能力『業暦羅刹・絶』には効かない」


「なぜだ! なぜ効かない!?」


「俺の能力は時空と時間を同時に切り裂き、再度世界を構築する能力。

 お前がどんな能力を使ったとしても、ふただび元の世界に戻すだけだ」


「そんなバカな……!」


「しかし、その代償として俺は常にスマホの電池が13%の状態になる呪いを受けている」


「アプリを開いたらすぐにアウトじゃないか!」


「それだけの覚悟をして初めて得られる能力なのさ」


「しかし、なぜそれを我に明かす必要があった。

 能力を解説しなければもっと優位にできただろう」


「決まっている。俺のすごさを思いしってほしいからだ」


「わかる」



しかし、敵はついに虎の子である胸のペンダントを頭上にかかげた。



「グハハハ! しかしぬかったな! 我に能力を話してしまったのが貴様の敗因だ!」


「な、なにをする気だ!」


「このペンダントは『ジャッジメント・エンペラー』。

 破壊したとき、目の前にいる能力を吸い取り自分の力とする!!」


「し、しまった!!」


「貴様のごうれき……なんとかという能力!!

 じつに気に入ったぞ! 皇帝となる我にこそふさわしい!!」


「ぐあああ! な、なぜそこまで教えてくれるんだーー!!」


「手のうちを明かさないバトルってつまらないだろうが!!」



ペンダントが粉々になると、黒い霧が吹き出し能力者の体へ一直線。

能力『業暦羅刹・絶』を奪い敵のもとへと運んでしまった!!



「これが……これが貴様の能力か!! すばらしい!

 実際に自分のものになって、ますます良さがわかるぞ!!」


「だが、俺の能力を奪うことで呪いも同時に受け取ることになるぞ」


「かまわぬ。我は常にモバイルバッテリー持っているタイプなのだ」


「ぐっ……!!」


「さあ、お遊びはこれまでだ。貴様にはもう打つ手がない。

 いい時間つぶしにはなったが、そろそろ消えてもらおう」


「どうすれば……!」



その時、能力者の脳裏にこれまでの旅の記憶が蘇った。

それは走馬灯ではなく、仲間と紡いだ経験や乗り越えた苦難が自分の背中を押してくれるような暖かな記憶だった。



「みんな……。そうだよな、俺はいつも最後まで諦めなかったんだ!」


「まだ我にかなうとでも思っているのか? 面白い冗談だ」


「お前はこの右手に隠された秘密を知らないだろう?」



右手の包帯をほどくと、その腕には意味ありげな紋章が刻まれていた。



「き、貴様!! それは一体なんだ!?」


「わからないのか? この紋章の意味……」


「貴様、いったいどんな能力を隠してるんだ!!

 その紋章でどんな第二の能力とか覚醒とかしてくるつもりだ!!」


「さあ、いくぜ……!」



能力者はなにかを放つようなポーズをして前かがみになった。


しかし、いまだに能力の解説はない。



「貴様ぁ!! 解説しないつもりか!! なにをするつもりだ!

 いったいなんの能力なんだ!!」


「ウルイフミヲイタデナタガクケキテノツ……!!」


「や、やめろ!! まだ能力解説もしていないのに詠唱をはじめるんじゃない!!」


「"汝の魂を杯に掲げ、天を仰ぎて転身ス……"」



「ま、まずい! 能力発動!! アンブレイカブル・シャッター!!

 この能力はあらゆる能力の干渉を受けない!

 

 さらに秘めたる第二の能力を発動!!

 この能力を使うことで貴様の発動効果を無効化させる!!

 

 まだあるぞ! さらに裏能力も発動!!

 これによりお前はこのターンあらゆる効果もーー」



なおも能力の解説を続ける敵の右ほっぺに、力をこめた拳がつらぬいた。



「ぽぺっ!?」



敵は鼻血を吐血をサイクロン上に吹き上げながら壁へと吹っ飛んだ。

強く頭を打ち付けてもう立ち上がることはできなかった。



「教えてやる。

 最後の能力、シンプル・イズ・ゴッド。

 これはあらゆる能力を使わずに利き手で相手をぶん殴る超攻撃的能力だ!!」



あの意味ありげな紋章や詠唱が、

それっぽいだけの意味のない予備動作だと気づいたときにはもう遅く。


敵は意識を失っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺のこの能力は小説を書いちゃう能力なんだぜ…! ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ