遺伝の力で無双する!創造魔法を駆使して世界を平和に!お嬢様は世界最強!?

ヒロロ

0章 はじまり

第1話 お嬢様は何も知らない

昼間でも、真っ暗な世界…


そう、ここは黒き森と言われ人々が避ける森。


黒き森は、人々が避ける理由がある。

冒頭の真っ暗な世界、これも一つの理由。

一番の理由は、間違って踏み入ると生きて帰れないから。


道に迷い足を滑らせ命を落とす者、人々にとって強敵と言われる魔物に襲われ餌になってしまう者。

何回か、そのような悲しい出来事を繰り返し人々は、黒き森には近づかない、踏み入れないようになったのだ。


そんな黒き森の奥深くで、一人の少女が鼻唄混じりにキノコや薬草を採取していた。


「あっ!月見草発見!それも凄い群生地だよ!ポーション作り放題だね〜

母様に褒めて貰えるなぁ〜父様も、金持ちになっちゃうなぁ〜ってニヤニヤしちゃうよ〜

ね!そう思うでしょ!シャドウ!」


「ワン!」


なんとも呑気な少女と犬。


少女の名前は、メル。10歳。

しかし、それは愛称である。

本名は、メルル・フォン・フォスター。

本人は知らないが、名前から安易に想像できる…実は良い家柄、言わば、いいとこのお嬢様なのである。本人は知らないが…

産まれた時には、すでにこの黒き森で両親と暮らしていた。

なのでメル自身、町や王都に住めない貧乏人だと思っている。


たまに、王都にポーションなどを商業ギルドに卸す為、両親と一緒に出かけるが、王都の煌びやかな世界は、私達のような貧乏人には、似合わないと思い込んでいる。


茶色のワンピースの上に、お決まりの赤のフードコートを着て、見つけた月見草をせっせと採取しながら、シャドウと名付けられた犬に話しかけている。


メルは知らない。シャドウが犬ではないことを…

実は、フェンリルという聖獣なのだ。

風を操り、そして影に出入りすることができる能力があるのもメルは知らない。


メルが生まれる前から、シャドウは居たのだ。

元々、父親の従魔なのだ。


父親が、メルが採取の時にメルに危険がないようにとシャドウに守るように命じているのだ。

しかし、そのことをメルは、知らない。

だって、本人はシャドウの散歩兼、採取のつもりだからだ。

なんとも、呑気な少女である。


月見草を山程採取し、両親の喜ぶ顔を想像してニヤニヤ一人散々喜んでいる時、シャドウが何かの気配を感じとる。


「ゔっゔーガルル!ワン!ワン!ワン!」

シャドウが威嚇する。


木々の隙間から姿をあらわしたのは、体長5メートルを超えるグレートビッグボアだった。

それも、二頭だ。


「なーんだボアかぁ〜

シャドウ!ビックリするじゃない。

いきなり威嚇するから、すんっご〜い強い魔物かと思ったじゃない。」


そう言いながら鼻唄混じりに、腰に携えていた刀を抜いた。


メルは知らない…

ボアとグレートビッグボアは別物だということを…

町や王都で食されているボアは、ほぼただのボア。

出てきたのは、グレートビッグボア。

ボアの最上種なのだ。

強さも、比べるものではないくらいのものである。


メルは、刀を抜いてグレートビッグボアに対峙する。

シャドウは、それを見て焦ってメルを守るように前に出る。


「ふふふっ。シャドウったら〜

シャドウも戦いたいの〜

しょうがないなぁ〜

じゃあ、一頭譲ってあげるわ〜

怪我したら私の回復魔法で治してあげるから〜しっかりやるのよ〜」


「くぅ〜ん。」


メルは知らない。

シャドウの気持ちを…

シャドウ的には、主であるメルの父親に命令されてる手前、メルを魔物と戦わす訳にいかないのに、このお嬢様はやる気満々なのだ。


と、シャドウが嘆いている間にメルが動いた。


(シュッスタッ、ストン!)


一頭のグレートビッグボアに向かって一瞬で寄り、右に回り込んで首を切り落としたのだ。


「やっぱりボアは、楽勝ね〜

フフン!なかなか、父様に習った瞬歩も様になってきた〜って感じ〜フンフンフン♪

ほら、シャドウ、戦わないの?

早く〜私がやっちゃうよぉ〜」


「ワン!ワン!」


「駄目なの〜わかった〜

じゃあ、早くね〜」


シャドウは、メルの呑気な掛け合いにペースを乱されていた。


グレートビッグボアが突っ込んでくるのを、シャドウは風刃で縦に真っ二つにしてしまった。


普段なら、メルと同じ様に回り込んで首だけ落とすのだが、メルにペースを乱され、縦真っ二つにしてしまったのだ。


「あっあ〜あ。いけないんだ♪いけないんだぁ♪これは、売り物にはなりませんよ〜

シャドウ君!

首を落とすだけ!これ基本でしょうに〜

まっいっかぁ〜

我が家は、当分ボア料理だよ〜

ボアのステーキ♪ボアの焼肉♪

ボアの肉入りシチュー♪

なんか、お腹すいてきたぁよ〜

よし、魔法の袋にボアちゃんを掘り込んでと!

さあ、シャドウ!おうちに帰ろう〜」


「くぅ〜ん」


シャドウは、呑気なお嬢様の言動と行動に、

いつものことながら疲れを感じていた。


そんなことを露知らずメルは、鼻唄混じりに家を目指す。


ちなみに、魔法袋この世界ではとても希少なものである。

しかし、錬金術で簡単に作ることのできるメルは、それを知らない。


歩くこと約10分。

家に到着した。

この家の敷地の部分だけ、陽が差し込んでいる。

そして、特殊な結界が張られているがメルはそんなこと知らない。


庭で父親が薪を割っている。

普通薪割りは、斧でするのだが、この父親は刀、いわゆる日本刀で薪を割っている。


いや、割るというのは違うか。斬っていると言ったほうがいい。


「おーメル!お帰り!

どこも怪我してないかぁ。

まあ、怪我くらい回復魔法で自分で治してしまうけどなぁ。

シャドウ!おつとめご苦労さん!」


「父様〜

すっごいんだよ〜見て見て〜」


「おお〜!月見草が山程!

群生地みつけたのかぁ〜

メルは、採取も天才的だなぁ。」


「ふふふっ。

ポーション作り放題だよ〜!

父様嬉しい〜?」


「ハッハッハッ!こりゃ、お金持ちになってしまうなぁ〜どうしようかぁ〜

ヨイショ!」

父親は、ニコニコ笑顔でメルを抱き上げた。


父親の名前は、ケイン・フォン・フォスター。

17歳で結婚し、18歳でメルが生まれ父親となった。現在28歳まだまだ若い。


この男、何を隠そう元勇者なのである。

魔竜で溢れかえっていた世界を救った人物なのである。

ケインは、この功績を讃えられフィリア王国の公爵の爵位を与えられたのだ。


なので、王都にしっかりとデカい屋敷もあるのだ。言わば大金持ちである。

しかし、メルは知らない。


「父様〜メルも、大きくなったのです〜

レディなのです。抱っこは駄目なのです。」


「そっそうか。レディか〜

いやいや、12歳までは、抱っこオッケーだろ!決めた!フォスター家では、12歳まで抱っこオッケーの法律を申請する!」


「父様、前は、10歳までの法律だった〜

ズルいです〜」


「あっ。メルちゃん帰ったの〜お帰りなさい!」


「母様!ただいま!

母様!父様がズルいんです。

抱っこは、10歳までと前までフォスター家の法律だと言ってたのに、さっき、12歳までになったのです。」


「ふふふっ。メルちゃん。父様の言うことは、フォスター家の法律だからしょうがないね〜

母様も、メルちゃん抱っこしたいわぁ。」


そう言って、ケインからメルを奪ったのは、

メルの母親。

名前は、ローザ・フォン・フォスター。

ケインと同じく、現在28歳。


この女、ケインの勇者パーティの一員で聖女と呼ばれていた。神聖魔法、白魔法の達人でフィリア王国の民から聖女様と慕われていたフィリア王国第一王女だったのだ。

ケインと結婚し、現在は公爵夫人だが、メルは、知らない。


そのような肩書きがある夫婦が、王都の屋敷で暮らさずこの黒き森で暮らす理由があった。

(子供は、自然に囲まれて育つのが良い!)

そのような思いでこの場所で暮らしている。


自然に囲まれて…自然は自然だが、ここは悪名高き黒き森。

この両親、元勇者と聖女。言わば超強いのである。

だから、頭のネジがぶっ飛んでいるのである。


そんな超強い二人から生まれたメルは、二人の能力を全て受け継いでいるのだ。

遺伝は恐ろしい。


遺伝とは別に錬金術という才能にも恵まれ、両親の上位互換の子供が出来上がっていたのだ。

しかし………メルはそのことを知らない。


メル自身は、全くもって普通の女の子と思っているのだ。


「あっそうだ。父様母様。

月見草採取してたら、ボアが出てきてね。

私は、ちゃんと狩ったの。

でも、シャドウがね、やらかしたの。」


メルは、魔法袋からグレートビッグボアを出す。ボアではないのだ。これは、グレートビッグボア、ボアの最上種なのだ。

ここは、大事な所何度も言っておく。


「おいおい、シャドウ!

お前やらかしてるな!

なんで縦に真っ二つなんだよ!

内臓系全部パーじゃねえか。

情けないやつだな。」


「くぅ〜ん。」


シャドウは、言い訳をしたかったがグッと我慢してうな垂れた。


「メルちゃんの仕留めたほうは、完璧ね!

流石だわ〜

これは、王家に卸してあげようか。」


「なんで〜王家なの〜

いつもの商業ギルドじゃないの?

ボアだよ。王家の人達がボアなんて庶民の食べ物食べるの〜?」


「メルちゃん。王家も食べるわよ〜

こんな完璧な仕留め方と血抜きの肉。

美味しいもの〜

まあ、ギルドに預けるのは預けるけどね。」


メルは、知らない…今まで商業ギルドに卸していた魔物の肉やポーションは全て王家に流れているのを。


「シャドウがしくじったやつは、我が家で食べるとするか!

メル、ステーキがいいかぁ?焼肉がいいかぁ?どっちにする?」


「う〜んとね。焼肉がいい!」


「よし!そしたら捌くとするか!

今日の夕食は、焼肉だ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



絶品焼肉を堪能し、メルは採取した月見草でポーションを数本、錬金術で作成した後眠りについた。


メルがしっかりと夢の中にいる頃、家の扉がノックされた。


ケインが扉を開ける。


「ケイン!夜遅くにすまねえ。」


「どうした?こんな時間だ。只事じゃないんだろ?」


「あら?サイラスじゃない。入りなさいよ。」


「ああ。ローザも夜遅くにすまねえ。」


この男、ケインとローザの様子を見てわかるように、この男も元勇者パーティの一員だった。


拳士として勇者パーティで魔竜を討伐。

フィリア王国で子爵の爵位を与えられ貴族の仲間入りしたのだが、商売がしたいと動き、子爵の立場も利用して、商業ギルドの統括ギルド長もしているという忙しない男なのだ。


ちなみに、メルも王都の商業ギルドで毎回会っており、髭を生やした風貌から髭のおっちゃんと呼んでいるのだ。


ちなみに歳は28歳。おっちゃんと呼ぶには、かわいそうな年齢である。


「メルちゃんは、当然寝てるよな。

うーん…朝にお願いするかぁ」


「だから、何があったんだよ!」


「マール共和国からの仕入れの便が、盗賊に襲われてよぉ。

まあ、撃退は出来たらしいんだ。

けど、護衛の冒険者が片腕落とされたりよ、片目やられたりしてやがるんだ。

回復魔法では、血を止めるくらいしか出来ねえってんで、メルちゃんのポーションを頼ってきたんだよ。」


「腕の再生、目の再生は、私の回復魔法でも無理だものね。

ポーションなら、丁度あるわよ。

ケイン、メルちゃんを起こさないようにメルちゃんの部屋から持ってきて。確か10本くらい寝る前に作っていたから。」


ケインが、メルの部屋から作ったポーションの箱を持ってきた。


「ほらよ。

サイラス。だから、前から言ってたろ。

全部王家に渡すんじゃなくて、保険でキープしとけって。」


「そうだな。マール共和国からの仕入れは、初めてだったから失念していたんだ。

あの辺は、情勢が悪く盗賊の溜まり場になっているってことを。」


そう言いながらサイラスは、1本1本確認していく。


「うん。間違いなく全て上級ポーションだ。

相変わらず10歳なのに凄え錬金術の腕だな。

これ、寝てる間に貰っていってメルちゃん、怒らないか?」


「髭のおっちゃんが、緊急で必要で取りに来たっていっとくよ。な、髭のおっちゃん!」


「助かる!けど、メルちゃんに髭のおっちゃんって言われるのは、喜んで呼んで貰うけど、ケイン!お前に言われるのは、なんかムカつくわ!

とりあえず、急ぐわ!

王都に来た時、メルちゃんに美味しいお菓子奢るって言っておいてくれ!」


そう言うとサイラスは、扉を開けた瞬間転移魔法で姿を消した。


「相変わらず忙しない男だぜ。

しかし、ローザ。

俺達の娘は、改めて凄えな。」


「そうね♪

簡単に寝る前に鼻唄歌いながら、上級ポーションを作っちゃうんですもん。」


メルは、知らない。

上級ポーションを作っていることを。

自分は、ただのポーションだと思っているのだ。


メルは、何も知らないのだ。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


以前書いていたのですが、消えてしまったので再投稿します。

以前の物を改変していきます。


それと、お嬢様は世界最強!の続編を書いています。


https://kakuyomu.jp/works/16817330661954911180


お姫様は世界最強!です。


成長したメルの物語です。

こちらもよろしければお願いいたします。


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