第19話 紂王と妲己の離宮、異世界鹿台

 


 紀元前11世紀中頃、殷王朝時代末期。

 周国姫昌と呂尚の「中原侵攻作戦」殷王朝に対する示威行動は成功した。


 周国姫昌は、丹が率いる黄河北岸街道軍を耆国の都に入城し周軍を駐留させた。

 また姫昌は、召公奭が率いる黄河南岸街道冀州封丘軍を周軍の軍事拠点化の命令を発した。

 そして姫昌は、黄河南岸と北岸の諸侯領主に帰国命令を発した。


 周軍耆国駐留軍と黄河南岸街道冀州封丘軍は、殷王朝の首都殷墟まで半日の距離に集結している。

 殷王紂王は、側近より周軍が集結している事を聞かされた。がしかし紂王は

『天命は余に有る西伯姫昌に何ができる!』⒈

と言い放ちました。

 紂王は、危機感が無く殷軍に殷墟の防衛命令を発しません。

 その結果『紂王より離反する家臣が続出し、また殷宮廷より貴族や役人が逃げ出す事態に陥る。』⒈


 紂王は、この殷王朝の軍事危機に向き合わずにいた。政治より逃げるように紂王は、妃の妲己(だっき)との生活に溺れる。⒉


 紂王は、妲己のために玉(ヒスイ)をペルシアの商人からたくさん買い付けた。

 そして紂王は、ヒスイの代金を殷虚の民かから搾り取った税から支払った。


 すると妲己は、紂王向かって言った。

 「ただの石コロに飽きた…ほほほ…」

 「え~っ!!」 ( ゚Д゚)

 「カワイイのぉ…」

 「私は異世界が見たい…」

 「異世界?」

 「遥か西方のオリエントのことよ♥」

 「お~そうかそうか見せてやろう💕」

 紂王は、妃の妲己のために離宮を建造することにした。


 紂王はに遥かオリエント世界から豪商と建築家を招きオリエント風の

『離宮鹿台ろくだい 』を建造したのです。⒊


 離宮鹿台は楼閣(ろうかくを四棟建造した。また離宮鹿台にペルシア式

庭園を造園して中央には噴水を設置した。⒋⒌


 紂王は、妲己のために2人だけの異世界離宮鹿台を創造したのです。

 そして紂王は、離宮鹿台の建造に殷虚の民を工事へ駆り出し、さらに殷虚の

民から搾り取った税から莫大な建造費を支払った。

 紂王と妲己は、異世界離宮鹿台に籠り政治に頓着せずなまけた生活を過す。

『紂王と妲己は殷虚の民から反発されるようになっていく。』⒈


 殷墟の民の疲労や憔悴しょうすいの様子を黄龍と麒麟が見つめています。


 さて、豫洲と冀州の領主たちは、周国姫昌との論考行賞の結果、耆国王派が運営していた鉱山、採石場、陶磁器用の上質な陶土産地などを手に入れた。


 鄭邑の領主鄭氏開、魯邑の領主魯氏基、副官の魯氏創は、黒龍耆国分観に鉱山夫を引き取りに訪れた。

 「叔父上!父上!」

 「智、立派になった!活躍を聞いたぞ!」叔父創は、智徳の成長が嬉しそうです。

 「智、我が工夫たちを助けてくれた礼を言おう」

 これが鄭邑領主基の智徳に対して精一杯の愛情表現です。

 「どういたしまして…えへへ」

 智と領主基の2人は、ちゃんと和解したのでしょうか?

 智徳は、少し舞い上がっている様子。


 智徳、満堂、水月の3人は、不老不死の身体を獲得して五感が鋭敏になった事に戸惑ってはいませんでした。

 智徳、満堂、水月は、むしろ楽しんでいるみたいです。

 学問所同期入所の山桃、沢、江氏汰、湧は。不老不死の身体を獲得して五感が鋭敏になった事に戸惑ったと話を聞いていた。


 智徳、満堂、水月の3人は、その事がうらやましいと思ったのです。なぜなら五感が鋭敏であるならその感覚を駆使して交易品の文様に活かし絹織物に応用出来ないかと3人は考えたのです。

 さすが芸術的センスのある3人です。

 智徳、満堂、水月は、学問所同期入所の山桃、沢、江氏汰、湧にテレパシーで頻繁に連絡を取り合っています。


 さてここは黄河南岸街道。

 鄭邑の領主開は、鉱山夫と共に冀州封丘より鄭邑軍を引き上げ凱旋した。

 五黄と葵は街道で平伏している。2人は、領主開に鄭邑軍の無事の帰還の挨拶をしたいと近臣に伝えた。

 領主開と弐は、街道で平伏している五黄と葵に近づいて来た。

違和感を覚えた領主開は、馬上から五黄に向かって「どうした吾」と声を掛けた。


「父上、兄上、凱旋おめでとうございます」

「お前も雨季と戦っていたのだろうご苦労」

 領主開は、五黄を労った…しかし。

「私は、父上と一緒に冀州封丘へ出陣したかったです」

 葵は、五黄の言葉に驚きました。


 領主開は下馬し五黄に近寄り

「何を言うか吾!」領主開は五黄を叱ります。

「治水は領民の命を守り領地を守る黄龍様の使命で尊い。戦いは暴虐だ!」

 と領主開は五黄に諭します。

「…わかっております…」

「吾、治水の使命に精進せよ!」

「ありがとうございます父上」

 領主開は乗馬し帰路についた。


 葵は、五黄が戦場に行くことを望んでいる事にショックを受けた。

 「葵の言いたい事は解るよ…でもこの気持はどうしょうもならない…」


 五黄は、黄龍斟群分観の讃黄と思黄が周軍の動向を監視していた活躍を聞いた。

 また黒龍耆国分観の智徳、満堂、水月の活躍を聞いた。

 五黄は何もしていない自分に焦りを感じた。


 「ア~君、黄龍様の所へ行こうよ」

 鄭邑分観の黄龍木像に五黄と葵は話しかけた。

 五黄は自分の気持ちを黄龍に話した。


 「五黄!命を粗末にするな!」

 黄龍は五黄を叱った。黄龍は五黄に諭します。

 領主の男子として生まれた五黄は、故郷中原を侵略する者に対して命を懸けて戦え!と教えられて育った。

 五黄の中原に対する故郷愛は理解できる。しかし黄龍は五黄にこう諭した。 「五黄、それは執着である捨てよ!」


 国と国との闘いは暴虐であり、治山治水は黄龍が与えた使命です。

 「黄龍様…父上と同じ事を…」

 「五黄、葵、我が見守っているぞ!」

 「ありがとうございます…黄龍様…」

 「葵も五黄を見守ってやるのだ!」

 「ア~君…アタシがいるから大丈夫!」

 葵は、治山治水の棟梁の家で育った。葵は幼い頃から中原の山や河に親しんで育ちました。葵も中原の山河を愛しています。だから葵は領主の男子として生まれた五黄の心情を共感できると思っています。


 葵は、五黄を優しく抱きしめる。

 「葵…ありがとう…」

 黄龍の木像が2人を見守っている。


 第20話 中華圏西方の王者姫昌 つづく


 本文の『』は引用

 文末の数字は解説と引用

 第19話解説と引用を参照

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