第18話 黒龍と共に永遠の時を生きる

 ここは冀州耆国、黒龍耆国分観主冬黒とうこくは、観主辰星の命令で避難民を分観に収容した。

  冬黒は、耆国の太子派と交渉して周国軍に抵抗せず服従すると太子が約束した。がしかし国王派は、断固籠城する構えであると修行者智徳ちとく満堂まんどう水月すいげつの3人に伝えた。

 魯氏智の巻き毛は変わりません。出家名は智徳。箪氏満の出家名は満堂、そして月の出家名は水月。3人共20代になり青年期となった。4人は黒龍観の黒い道服を着用している。

 智徳は、周国軍に耆国の都を戦場にしないように、国王派が籠城している鉱山に誘導してはどうか?と提案した。

 すると黒龍の声が聞こえてきた。

  

 「智!手ぬるいぞ!」

 「どうして?黒龍様」

 と智徳が黒龍に聞きます。

 黒龍は4人に説きます。

 国王耆氏は既に亡くなっている。今の国王は饕餮衆北方本軍の長が国王に変身している。

 国王派の家臣も悪鬼が変身している。太子は、その事を知って抵抗して来たと黒龍が真実を暴露した。

 衝撃を受ける4人。

 黒龍は4人に命じます。

 周国軍を黄河北岸街道で待機させ、周国姫昌と太子とを耆国分観で交渉すること。そして鉱山に籠城している饕餮衆北方本軍は、黒龍が一掃すると4人に伝えた。

 

 「国王派とは交渉の余地は無い!」黒龍がそう言い放ちました。

 「鉱山技師や鉱山夫はどうするの?」

 智徳と満堂が黒龍に問いました。


 智徳は、兄の英より魯邑の鉱山技師や鉱山夫の安否を確認してほしいと、長距離交易商中原梁氏を通じて連絡があった。

 「それは玄武と智と満に任せよう」

 「わかりました黒龍様」

 玄武が返事をした。

 周国姫昌と太子派との交渉の橋渡しは冬黒分観主と水月とが行う。

 「速やか実行しょう!」と冬黒が言った。

 

 ここは耆国の大行山脈の鉱山地帯。

 饕餮衆北方本軍によって、鉱山技師や鉱山夫が鉱山小屋に人質として閉じ込められている。

 その鉱山小屋に玄武と智徳と満堂がやって来た。

 偵察に行った満堂が帰って来た。

 「玄武様、鉱山小屋は10棟、見張りの悪鬼が5匹います」

 「行きましょう!智徳様、満堂様!」

 玄武を先頭に2人は鉱山小屋に向かった。

 玄武は、鉱山小屋の扉を次々と破壊して中の工夫を逃します。

智徳と満堂とが清漳河せいしょうがの堤防に逃げろ!と工夫たちを誘導する。

 さらに玄武は、甲羅で体当たりして次々と悪鬼を倒す。

 

 悪鬼の一匹が投げ槍を智徳と満堂に目がけ放った。

 しかし、槍は静止し智徳と満堂を貫きません。

「おや?」

 すると…黒龍が人の姿で降臨。

「大丈夫だ、智、満、我が見守っていると言っただろ。そなたたちに不老不死の身体を与える我と共に永遠の時を生きよ!」

「えっ??…」この時、智徳と満堂は不老不死の身体を獲得し2人とも黒龍の使者になった。

 黒い道服を着た黒龍。

 その容姿は黒髪で短髪、切れ長の目で全てを見通すかのような瞳です。黒龍は口髭を伸ばしアルカイックスマイルを浮かべている。

 

「黒龍様、ありがとう!?」

 2人とも何が起きたか理解していません。2人は黒龍にどうして人の姿なの?

と聞きました。

 すると黒龍は「たまにはいいではないか?」と答えた。

 …2人ともに落ちないようです。


「黒龍様、僕たちは堤防まで行くからね」

「智、満、我はひと暴れするぞ!」

「お手柔らかにね~黒龍様~」

 玄武と智、満は山下した。


「間もなく日が落ちる我の時間だ」 

 饕餮衆北方本軍は、黒龍降臨でパニックです。

 饕餮衆と悪鬼らは蜘蛛の子が散るように四方に逃げ回る。


 その頃、姫昌と呂尚が清漳河耆国船着場に到着した。

 周国軍と黄河北岸邑の領主たちは黄河北岸街道で待機している。


 黒い道服を着た水月が姫昌に近付き

「私は、黒龍耆国分観の修行者水月です耆国の太子様がお待ちしております」

 黒龍は、智徳と満堂だけではなく水月も不老不死の身体を与え3人とも黒龍の使者になっている。

 姫昌は、北岳恒山黒龍観方角を向き拝礼しょうとした時、西の方角から黒龍の声が聞こえてきた。

 「西!御苦労である!」

 「黒龍様です」水月が微笑んで言います。


 大行山脈より黒龍が降臨。

 巨大な漆黒の龍、胸のあたりに珠を輝かせてその姿は神々しい。

 黒龍は顔を黄河の方向に向けた。

 黄河北岸街道に待機している周国軍。

 黄河北岸邑の領主たちは、黒龍の姿を見て恐れ皆その場に平伏する。


「我は、中華圏北方の守護霊獣黒龍である、これより大行山脈に

 巣くう饕餮衆を一掃する!」

 黒龍は、雲を呼び竜巻を発生。真っ黒な竜巻が放電し大行山脈に巣くう饕餮衆と悪鬼を一匹残らず吸い上げた。


 饕餮衆の北方本軍の長は

「黒龍こわ~い…」

 と叫びながら竜巻に吸い上げられる。

 そして真っ黒な竜巻は、天に上り北方へ去っていきます。


 周国姫昌と耆国の太子とが会談した。耆国の太子は、政治より身を引く事になった。

 耆国の太子は、李氏と改名した。氏は、耆国の商業と鉱業を盛んにし商人として生ることになった。

 こうして耆国は周国の配下になった。


 そして丹が率いる周軍は、黄河北岸の諸侯領主軍と共に黄河北岸街道で待機している。 また召公奭が率いる周軍は、黄河南岸の諸侯領主軍と共に黄河南岸街道冀州封丘ふうきゅう船着場で待機している。


 殷王朝の首都殷墟まで半日の距離に周国軍が集結している。

 こうして周国姫昌と呂尚の「中原侵攻作戦」殷王朝に対する挑戦示威行動が成功した。 


 第19話 紂王と妲己の離宮、異世界鹿台 つづく

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