第12話 嵩山黄龍観の山門にて


 紀元前11世紀中頃、殷王朝時代末期。

  梁氏宋家当主は、山桃一行と合流した。沢は、梁氏宋家当主の背後に護衛の屈強な男が2人いるのを確認した。

「長距離交易商会梁州の梁です、はじめまして中岳嵩山までご案内しましょう」

「えっ?」

 戸惑う山桃

「お父上の葛氏様より、愛娘山桃さんが出家すると聞かされていまして、私も子を持つ父親としては、お父上の気持ちは分かります」

 何となく納得する山桃、だか梁の口上手は、商人だから仕方ないのかと思った。

「偶然私も、中岳嵩山に用事がありましてお会い出来ました」

「そうですか…」

 なんとなく安心した山桃。沢はいつもの様に周囲を常に気にしている。

 江氏汰、湧は黙って話を聞いている。


 梁氏宋家当主は、時代の流れを読み取り五つの徳目の政治の実践を行う西方の周王姫昌を担ぎ上げようとしています。⒈

 梁氏宋家当主は、西の周王姫昌を担ぎ上げて、梁氏や仲間の豪商たちでは解決できない問題を政治的に解決するつもりです。

 その問題とは、中華圏の街道と商業路整備、市場や交易所など国による公認制と商業活動の保護、軍による商業都市の治安維持、などの問題を解決するため政治的ギャンブルを仕掛けようと目論でいます。

 そして梁氏宋家当主は、五龍観の筆頭献納信者であるという自負があり、黄龍観主土黄に協力を求めに面会に中岳嵩山へ行くのです。


「さあ皆さん、旅館で朝食はいかがですか?」

 山桃は驚いて

「そんな!お金が有りません!」

「私が運営する旅の宿です、安心してくだい私にお任せてください」 

 梁氏宋家当主は、山桃一行と合流した事を偶然と装っています。

 梁氏宋家当主は、渭河流域の河運搬船を運営していて船着場の係員や船頭に対して山桃と沢を見たら連絡する様にと命じていた。

 梁氏宋家当主の本意は、白龍の使者が2人も黄龍観に来訪するとどんな反応するかを見たいのです。

 山桃一行の旅はつづきます。


 その頃、中岳嵩山黄龍観の山門の屋根にキリン君が座っている。

 キリン君は、子どものように小さく、黄色い道服を着ていて、目は全てを見通

 す瞳、耳が馬のようにピンと立っている。

 キリン君は、梁氏が無理難題を押し付けにやって来る事を知っています。

 もし黄龍が山門に立っていると、黄龍観が吹き飛ぶ位に怒るので、黄龍の代わりに 

 キリン君が梁の到着を待っています。


 キリン君は、足をブラブラしながら山門の屋根にいます。 

 キリン君が、右足を上げると冬の花が咲き、左足を上げると秋の花が咲きます。

 キリン君がそれを続けると山門の周囲だけ花々でいっぱいになりました。


 そして鄭氏吾と葵が、中岳嵩山黄龍観の山門に到着。

 吾と葵は山門を見て。

 「うぁ~花でいっぱい!」

 「君たちは鄭氏吾と葵だね」

 「君は誰?」吾が尋ねました。

 「我は、キリン君である!」

 「キリン君??」


 キリン君は、五獣麒麟の分身です。麒麟は、仁徳ある君主や聖人が現れた時だけ人の目に触れるという伝説があります。⒍

 以前、麒麟が退屈なので嵩山の麓を歩いていると、人間に「五獣麒麟だぁ!」と追いかけられ捕まりそうになった事がありました。

 麒麟は、すっ飛んで帰りそれ以来、黄龍観の麒麟廟の木像に憑依しています。

 けれど麒麟はやっぱり退屈なので、キリン君を使い世の中を見聞しています。


「修行者讃黄と思黄から伝言だよ」

  元気か吾、葵も一緒と聞いている。僕たちは学科課程を終えてこれから黄河上、

  中流域に実技課程に行く。

  黄河上、中流域の治山治水や黄土高原の植林の実技だ。

  冬期、黄河の上流が凍結し春になると氷が溶け出し、黄河中流を下り黄土高原    

  を荒廃させる。それが下流域増水の原因の一つらしい。こんな事は中原に居た

  ら解からない事だ。

  吾、葵、根を詰めてはいけない適当でいいからね。また会おう。


「兄上ありがございます」

「それも伝えるのかい?」

 とキリン君は吾に聞きました。

「我は伝言係ではない、しかし鄭氏きようだいは、

 黄龍のお気にお入りだから特別に伝言を受けたよ」

 とキリン君は吾に言いました。

「いえ…遠慮します…」

 そして鄭氏吾と葵は、黄龍観の長い参道を上って行きました。


 つづいて魯氏智、箪氏満と月が黄龍観の山門に到着。

 魯氏智一行が山門を見て。

「ここだけ花がいっぱい!」

「よく来たね」

「誰?」

 魯氏智が言いました。

「我をいつか描いてくれるかい?」

 キリン君は智に言った。

「いいけれど…」

「楽しみしているよ」

 智は不思議そうな顔をして、キリン君を見つめました。するとキリン君は、上唇をあげて歯茎と歯を見せた。キリン君は、まるで馬の様な笑顔になった。

「この子は馬みたいだ…」

 と智は思います。

 そして魯氏智、箪氏満と月が黄龍観の長い参道を上って行きました。


 

 第13話 黄龍観の学問所に集う子どもたち つづく 

 本文の『』は引用

文末の数字は解説と引用

第12話解説と引用を参照

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