魔王城跡地に千客万来
第37話 新たな作物の育ち方
エルフの里から帰ってきた翌日早朝。
俺とシアは、魔王城跡地の畑にいた。というのも、
「ふああ、朝から元気ね、アルト」
「そりゃあ、当然だよ。この種と苗を早く育ててみたいからね!」
エルフの里で貰った種と苗を植えるのが楽しみで仕方がなかったからだ。
トマトが非常に美味しかったので、これでも恐らく美味しいだろう、という期待もあるが、そもそもの話として、
「新しい作物の種を持つとどうなってくれるのかワクワクしてね。ゴメンね、朝早いのに」
「良いわよ。アルトのやりたいことに付き合うのが、私のやりたいことだからね。……アディプス辺りは、朝に頻繁に呼ぶとぶーたれると思うけど」
ぶーぶー言ってる顔が想像するだけでも見える。
「あはは……アディプスは昼過ぎかな」
そもそも自分で試したいことはいっぱいあるし。アディプスに聞くのはそう言ったことを一通りやってからでもいいだろう。
「とりあえずはトマトは、こっちに植えて、と。あとはクルミだよなあ」
俺は手元にあるクルミの苗木を見る。
太さは直径数センチほどの木。その根元には、エルフの人々による文字が入ったカードが添えてあり、
「『育つまで15年』って書いてあるわね」
「大分長いね。……そうなると竜の二坪に植えたほうが、どう育つのかわかりやすいよね」
当然、早く育つ反面、雑草がモンスター化するという怖さもあるのだが、せっかく早く育つ場所があるのだから、使わなければ勿体なくもある。
開墾して使える土地を増やす速度は少し落ちるが、今は新しい作物を育ててみたい気持ちのほうが強いし。
「エルフの人たちは、数日後には来るっていう話だし。何かわからないことがあったらそこで聞くとして、まずやってみようか」
「そうね。困った時は、アディプスとか、さっき教えた新しい軍団長を呼び出せばいいわよ」
「うん。じゃあ、やってみよう」
そして、俺はクルミの苗を植えた。
――数日後。
「いやあ……凄いことになったね」
「ふつーに木が生えたわね」
竜の二坪に植えたクルミの木は、あっという間に大木に育った。
木の幹の太さは、苗の時と比べようもないくらい太くガッシリしたものになっているし、つけた葉っぱも青々としている。
果実はまだつかないが、垂れ下がった花のようなものも見えているので、もう少し待てば何らかの実はなりそうである。
……エルフのトマトの時にも思ったけど、改めて異常な速度だなあ。
けれど、トマトの時と違うことはいくつかあり、
「トマトとは違って雑草は生えないのは良いことよね」
そう。今回は、雑草――というか、草型モンスターが湧き出ることはなかったのだ。
「クルミの木には、もともと雑草を抑制する効果があるらしいからね」
気になって調べたところ、クルミにはそういう特殊な物質が含まれているらしい。もしかしたらエルフの品種改良によって、その力が増幅しているのかもしれない。
ありがたい話ではある。だが、問題が一つあり、
「雑草は生えなかったけどさ――物凄く木そのものが暴れるね」
そう。何やら特殊な物質が含まれているから、クルミの木には雑草は生えない。それが普通のクルミらしい。
ただ、このエルフのクルミの木の周囲に、雑草以外にも、草型モンスターが発生しないというのは目に見えてわかる理由があり、
「あ、また生み出したわよ。モンスター駆除用らしきゴーレム」
そう、このエルフのクルミは、定期的に、自分の脚元に樹木型のゴーレムを発生させるのだ。
――――――――――――
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