第8話 秘密の魔法教室で教わったことと、世間の比較



 その日、帰宅した俺とシアは、兄や祖父や母、この前まで王都に出張していた姉と食卓を囲んでいた。

 

「いやはや、アルト。開拓は進んでいるようで何よりだな。正直、畑一つ分の収穫を一人で終えたのは驚いたぞ」


「いや、俺だけの力じゃなくて。シアやスライムたち、仲間の手があったからだよ」


 事実、俺だけではどうにもならなかっただろう。そう思って言うが、


「その仲間も、羊飼いのスキルで、君自身が努力した結果だとも。アルト、そこは誇りに思って良いんだよ」


 兄はそんなことを言って褒めてくれた。

 

 食卓に並ぶ美味しいご飯を食べながら、しかも褒めて貰える。

 とても嬉しいなあ、と思っていると、

 

「アルトも頑張ってるし、私も教授の仕事、もっと頑張ろうかしらね」


 そんな事を姉が微笑みをもって言った。


 姉は最近、王都に出張して仕事をしているらしく、大変だと話は聞いていたのだが、


「ティアラ姉さんがやってるの、王都の魔法学校の教授だっけ?」


「そうね。パーティーの仲間に頼まれたからちょっとだけやってるの。この前は、召喚術を教えてきたんだけど、大変だったのよ?」


 その言葉に、兄が反応する。

 

「優秀な学生のクラスを担当していると聞いたが」


「勿論、職業的には優秀だと思うわ。得た職業は 《魔術師》とか《魔導研究者》とか、そういう子たちばかりだから。でも、自分の職と能力にプライドがあり過ぎるのか、頑張り過ぎちゃってね。……というか、アルト、召喚術って知ってる?」


「あ、うん。本でも読んだことはあるかな」


 基本的な事だけしか書いてなかったので。あとはシアに言われるがまま覚えているというか。ほぼシアが先生になって教えてくれている知識しか持ってないけれど。

 

 そう思っていると姉が追加で解説してくれた。


「召喚術ってね、一回召喚したら、召喚した子を戻さないと、魔力の負担が倍増するし、コントロールも難しくなるから、次の召喚を使えないの」


「え? そうなの?」


「ええ。でも、召喚魔法って難易度も高いし、魔力消費も大きいから、一回目の召喚も上手くいかないし。上手く行っても、返し忘れて二回目の召喚をしようとした子や、無理する子もいてさ。その子たち、魔力を使い過ぎてぶっ倒れちゃったのよ」


 姉は、吐息する。


「それを機にこっちの言う事や注意点を守るようにはなったけれど。大人数を見るのは難しいなって思ったわけなの。まあ、頑張りがいあっていいけれどね」


 そんな姉を見て、そして俺を見て、ジンも頷く。


「ティアラもアルトも努力しているのだな。俺も剣の道を究めるために、頑張らねばな!」


 そんな感じで、家族の会話を夕食の最中、聞いた訳だが。

 

 自室に戻った俺はシアに聞いてみた。

 

「同時召喚、あんまり普通じゃないみたいだな?」


 シアも不思議そうな顔をしている。


「おかしいわねえ? 100年前は結構使える人間見たんだけどなあ。……人間じゃなくてエルフだったかしら……? でもまあ、貴方は使えるから良いじゃない」


「まあ、そうだけどさ」

 

 どんどん家族に説明が難しい事が増えている気がする。

 全てを説明しなければいけないという訳でもないとはいえ。


 まだまだ、自分自身に対しても理解力が足りてないし。自分がもっと成長して、魔王城の開拓が進んでから、どうするかは考えるか。


――――――――

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