生け垣から生える手
しらす丼
月夜の出会い
半月が照らす夜道を一人、
道の両サイドには肩よりも高い位置にある生け垣。時折風が吹くと、その生け垣の葉は笑うようにカサカサと鳴った。
「ずいぶんと遅くなっちゃったな」
清花はこの日、自宅から電車で二時間ほどのところにある祖父母宅を訪れようと歩を進めていた。
ふいにスキニーの右後ろポケットに入れているスマートフォンが振動する。清花はポケットからスマートフォンを取り出し、画面に触れた。
『今日は遅くまで付き合ってもらっちゃってごめん(汗)』
『おじいちゃん家、ついた?』
それは友人である
『もう着くよ!』
『遅くなったのは気にしないで。楽しかったから^ ^』
『また勉強会しようねー』
清花が返信をすると、すぐに既読がつき、早苗から『ありがとう』と『りょーかい』といううさぎのスタンプが送られてきた。
すかさず清花も、『楽しみです』というクマのスタンプで返す。
それから清花はスマートフォンを再びスキニーのポケットに戻すと、左肩に掛けたボストンバッグの取っ手を掛け直して歩き出した。
直進して角を左に右にと曲がり、再び直進していると、辺りを照らす電灯が見えてくる。
ここまで来ればあと少し。清花は歩度を速め、到着を急いだ。
しかし電灯を横切ろうとした瞬間――カサッと右手から音がし、ふいにその方へ清花は顔を向ける。
「……え?」
すると生け垣から、白い小さな手が生えていた。
その異様な光景に、清花は目を見張り、思わず立ち止まる。
清花はそこで様々な思考を巡らせた。そして一つの答えにたどり着くと、息を殺してその場から駆け出す。
「あ、あれは、さすがにヤバいって! 幽霊? 怨霊? なんであんなものが生け垣から!?」
清花は恐る恐るうしろを振り返った。もしかしたら、あの白い手が追ってきているのではないかと感じたからだった。
しかし、背後には誰も何の姿もない。
「あれって一体なんだったんだろう。目の錯覚、だったのかな?」
ふぅと息を吐き出し、清花は月光が落ちるその道を再び歩き出したのだった。
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