③聖女なんて恥ずかしい呼び名を定着させた親友が告白されてたので弄って仕返しだ!
どうも聖女です。
いやいや、聖女って何よ。
草生えるんですけど。
ごめんなさい、嘘です。
チョッパズです。
マジ困ってます。
私もう高校二年生だよ。
それなのに聖女ってイタすぎるんですけど!
そもそも私、聖女なんてキャラじゃないから。
ざまぁで検索してニヤニヤしてるような女だから。
下ネタ大好きでドチャシコとか家で連呼してるから。
ノクトゥーンの日刊ランキングを毎日確認するのが趣味だから。
あ、最後のはまずかったかな。
見てない見てない。
だって私未成年だもん。
ちぇっ、ここが学園とか学院だったら十八歳以上ですって言い張れたのに。
とまぁこんな感じで私は聖女どころか性女と呼ばれる方が相応しい女なんだけど、今更みんなの期待を裏切れずに頑張って清楚してます。
清楚なJKなんて存在するわけないじゃないですか。
夢見すぎー
そうそう、言われて恥ずかしい言葉って聖女だけじゃないんよね。
私の名前は
様だよ様。
私は単なるJKなんすけど。
しかも厄介なことに私を慕ってくれる女の子達がこぞってそう呼んでくる。
「聖様、おはようございます」
「おはよう」
うわああああああああ!
ほら、こんな感じ。
これ毎日みんなから言われるんだよ。
チョッパズで、死にそう。
顔を合わせば聖様、聖様、聖様。
顔を合わせなければ聖女様、聖女様、聖女様。
たまに最浄さんって呼ばれるとほっとする私の気持ち、分かる!?
ぶっちゃけた話、男子が普通に呼んでくれたら付き合っても良い。
私の大切なものを諸々あげちゃっても良いよ。
体だけの関係だって構わないですぜ、ぐへへ。
まぁそんなことは私の取り巻き達が許さないんだけどね。
この取り巻きってのも止めてくれないかなぁ。
どこの異世界恋愛貴族ですか。
さっさと私を断罪して追放してくれて良いんだよ?
「聖様、どうなさいましたか?」
「ううん、なんでもないの」
おっとアンニュイな気分がちょっと漏れてしまったかな。
こいつはす~ぐ嗅ぎつけて来るからホント厄介だ。
私を聖様だなんて呼び出した第一号。
聖女やら聖様やらと呼んで私を本気で崇拝している、未だに中二病から抜け出せない私の親友だ。
その親友に何か面白いことが起きようとしている。
ある日、私はその謎の波動をビビビと受け取った。
だからそれを特等席で堪能するために光と一緒に帰ろうと思ったのだけれど、面倒な女のメンタルケアを押し付けられたので私はそれを速攻で解決して教室に戻った。
というかお気に入りの人形が壊れたくらいでメソメソすんじゃないよ。
もう良い歳なんだからオモチャでも買いなさい。
え?オモチャも子供っぽいって?
あはは、そだねー
結果として一緒に帰らなかったことで面白いことが起きたから、君にはそのお礼として私の本性がバレた暁にはオススメのオモチャをプレゼントしてあげよう。
本題に戻るけれど、慌てて教室に戻ったらなんと光が男子に告白されていた。
しかも相手は同じクラスの超イケメン。
名前は確か、
少女漫画に出て来そうな異常なさわやかオーラを放つ男子だ。
締め切った室内でも彼の周囲にはそよ風が吹いてそう。
傍に居たら夏場とか涼しいのかな。
個人的には昨日絡んで来て光に追い返されたイケメン君と絡むのもありだと思う。
私はそっちもイケル口だ。
もちろん笛吹君が攻め。
百戦錬磨のチャラ男を手玉に取るのが良いのよ、ぐへへ。
って危ない!
「わ、わた、私は聖様一筋だから、付き合うとか、そういうのは、考えられないっていうか、その、ええと、ごめ」
「ストーップ!」
こっそり見ていたら光が断ろうとしてたから慌てて止めに入った。
こんな面白そうなこと、簡単に終わらせたら勿体ないでしょ。
全力で介入してかき回して遊ばないと!
光がグチグチ言ってるけどし~らね。
全部却下!
普段から聖様とか聖女様とか連呼して私を辱める罰を受けて貰うんだから。
覚悟しなさい。
まずはこんなのはどうかな。
「もしよろしければ、光の何処が気に入ったのかを教えて下さらないかしら」
こんなこと人前で言われたら私なら死ねる。
教室に戻る時に取り巻き達に声をかけて良かったわ。
衆人環視の中羞恥プレイを味わうが良い!
「まずは可愛いところです」
「ふひゃぁ」
「それは私も同意するわ」
「ふぉわあぁ」
プークスクス。
超照れてやんの。
か~わい~
「次は、大切な人に『尽くせるところ』です」
「それは……本当は同意したくは無いのだけれど、同意せざるを得ないわね」
クッ……全力で否定したいけれど、それは嫌だなんて言ったら取り巻き達が暴走しかねない。
笛吹君め、余計なことを言わないでよ。
あなたは光を照れさせれば良いの!
「もちろん尽くしてもらえたら男冥利に尽きると思います。ですが、僕も彼女に尽くしたい。鳳さんとはどちらかが一方的に尽くすような関係では無くて、お互いにお互いを大切にして肩を並べて一緒に歩くような間柄になりたいと思ってます」
「ひゃうう……」
そうそうそれで良いの!
なんてくっさい台詞。
リアルでこんなこと言う人いるんだ。
聞いているこっちが恥ずかしくなってきちゃった。
「それは……本当に、本当に素敵なことね」
笑いをこらえるのに必死でなんか意味深な感じになっちゃった。
まぁいっか。
「それで光の好きなところはそれで全部かしら」
「いえ、一番大事なことが残ってます」
「それは?」
「『優しい』ところです」
定番のフレーズキター!
笛吹君は次々と光の優しい行動をピックアップし始めた。
良く見てるわあ。
私以外にここまで光の事を知っている人って笛吹君だけじゃないの。
観察し過ぎでちょっと怖いんだけど。
ストーカーの気質あるんじゃない?
でもそのくらいの方が面白いかな。
笛吹君に強引に迫られて滅茶苦茶にされちゃう光。
セックス!セックス!
はぁ、最高。
「あなたが光のことを本当に好きだという事が分かったわ。疑ってごめんなさいね」
「いえ、当然の心配だと思いますから」
ありがとう。
光が照れ苦しむ様子を存分に堪能出来たよ。
あなたとはこれからも上手くやっていけそうね。
「光に春が来たようで良かったわ」
「ま、待ってください聖様。私は付き合う気は……」
「あら、苦手なタイプだったのかしら」
「そういうわけでは無いのですが……」
ま~だグチグチ文句言ってる。
さっさと諦めて裸になっちゃえ。
二人の営み撮ってあげるよ?
どうせもう笛吹君に夢中で離れられないくらい好きになってる癖に。
「分かったわ。ではこうしましょう」
決めた。
光がこんな調子なら素直になるまでもっと弄ってやる。
笛吹君の格好良いところを光に見せつけて『素敵!抱いて!』って言わせてやる。
「これから出す課題をクリアしたら光とのお付き合いを認めます」
「「え?」」
笛吹君が光と付き合うために難題を必死に乗り越える姿を見たら、光は更に笛吹君に惚れるっしょ。
問題は何の課題にするか。
う~ん、とりあえず来週テストあるし、それにするかな。
「最初の課題のテーマは『学力』よ。来週の中間テストで全教科の平均点を前回よりも五点プラスさせること」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
あれ、なんでみんな驚いてんの。
五点くらいちょっと頑張れば余裕っしょ。
「光のことが本当に好きならば、このくらい頑張れるはずよ」
お、良い顔になった。
笛吹君は好きな子のために必死で頑張れるタイプと見た。
これは面白いことになりそうね!
「どうしてあのような無茶な課題を出されたのですか?」
「そうかしら。五点くらい少し頑張ればいけそうでしょ」
「笛吹君の前回の総合平均点は八十五点くらいなのでかなり難しいかと」
「へ?」
ぎゃああああ!
やらかしたああああ!
まさかイケメンだけじゃなくて頭も良いなんて。
これじゃあ私、笛吹君と光のセックスを認めないなんて言ってるようなものじゃない!
ちょっと光、その溜息は何よ。
聖女様にジト目をするなんて不敬じゃないの?
これだからこの女は!
「無理……でした」
デスヨネー
平均点が九十とか無理無理。
特にうちの学校はテストが難しいんだから。
「そ、そうですか。それは残念、でしたね」
しかも今回のテストは特に難しくて全体の平均点がかなり下がったみたい。
笛吹君も流石に前回の驚異的な自己平均点を越えることは出来なかったよね。
難しかった割には頑張りましたね、特別に合格にします。
これで誤魔化すしかないか。
出来れば少しでも笛吹君の平均点がプラスになっていれば、これで押し通しやすいんだけど。
念のため平均点を聞いてみよう。
「ちなみに、平均点は増えましたか?」
「あ、はい、四点とちょっとだけ。五点には届きませんでした」
ふぁっ!?
あのテストで平均点九十点近くだったってこと!?
それってダントツで学年一位の成績じゃない。
この子何者なの!?
「四っ!?そ、そう。頑張ったじゃない」
「でも課題はクリア出来ませんでしたので」
「う゛っ」
完全に私が悪者じゃない!
こんな驚異的な成績を取ったのにダメです、なんて言ったら聖女どころか悪女だなんて言われちゃうわ。
それはそれでまた面倒臭いことになるからイヤー!
「あなたは良く頑張りました。私が見たかったのはあなたが光のためにどれだけ一生懸命になれるか、なのです。点数は目標に達しませんでしたが、十分合格に値すると考えています。で、ですよね、光!」
「え!あ、はい、そ、そう思わなくは無いというか、なんというか」
「ということで最初の課題はごうかーく!」
よし、これでオッケー
文句は言わせないわ。
「お気持ちは嬉しいです。ですが僕が課題をクリア出来なかった事は事実です。お願いです。僕にもう一度チャンスを下さい。次の期末テストで今度こそ課題をクリアしますから!」
「次で更に五点プラス……?」
「はい!」
は?
何言ってるの?
平均点九十五点取るって言ってるの?
馬鹿なの?
優秀だけど馬鹿なの?
でもこの子、本気で取りそう。
いやいや、だとしても次のテストまでって間が長すぎるわ。
それまで光を弄り続けるのは流石に罪悪感が……
「え、それは、ええと」
どうしよう。
どうやって誤魔化そう。
つーか、笛吹君真面目すぎんよ。
私が良いって言ってるんだから喜びなさいよ。
光とセックスしたくないの!?
ああもう、少しくらい素が出ても大丈夫でしょ。
強引に押し通す!
「お、男が細かいことを気にしないの!合格って言ったでしょ、合格なの!ほら、次の課題を発表するわよ!」
「!?」
笛吹君が驚いている間に話を次に進めちゃえ。
次はスポーツね。
ふふ、今回は致命的なミスをしないよ。
タイムを上げろとか記録を上げろって言ったら同じ目に合うのは見えている。
笛吹君が体育の成績も良いって事前に調査したから間違いない。
だから考え方を変えたの。
夜のスポーツで光に勝利しなさい!
って言ってみたかった。
超言ってみたかったけど我慢した。
誰か褒めて!
「次の課題は『スポーツ』よ。もうじき球技大会よね。男子はサッカーだったかしら。でしたら試合でハットトリックを決めなさい」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
今回も驚かれちゃった。
ハットトリックは無理だと思ったのかな。
でもたかが球技大会だよ。
面倒臭がって手を抜く男子も多いっしょ。
体育の成績が良いなら本気でがむしゃらにやれば案外簡単だよ。
きっと、多分、恐らく。
「どうしてあのような無茶な課題を出されたのですか?」
「そうかしら。彼の能力があれば本気で頑張ればいけそうでしょ」
「一回戦の対戦相手は大半がサッカー部なのですが」
「へ?」
何それ、聞いてない!
そんなの分かるわけないでしょ!
というか、知ってたなら教えてよ。
光達が男子の話をしてくれないから私の耳にそういう情報が入って来ないの。
私のせいじゃないんだから、そんなジト目で見るんじゃねーよ!
「絶望的な状況でも諦めない姿にきっと光も心を打たれたでしょう。で、ですよね、光?」
「え!あ、はい、そ、そう思わなくは無いというか、なんというか」
「ということで今回の課題もごうかーく!」
笛吹君に、私が実はポンコツだって完全にバレた気がする。
ふんだ、し~らね。
言い触らすような人でもないっしょ。
もう勝手に幸せになっちまえ。
「最後の課題はもちろん光との相性ね」
「相性ですか?」
そう、どれだけ頭が良くてどれだけスポーツが得意でも、お互いが気持ち良くなれなければ意味が無いわ。
「そう。どれだけ頭が良くてどれだけスポーツが得意でも、一緒に居て楽しく無ければ意味が無いわ」
「はい、僕もそう思います」
それなら四の五の言わずに襲っちゃいなさいよ。
私がちゃんと撮影スタジオを用意してあげるから。
ノクトゥーンに投稿している人に情報提供してねっとりとした描写をしてもらうから。
「だから次の日曜にデートしなさい」
「え?」
「聖様!?」
最後は当然これ。
デートが上手くいけば、流石に光も観念するでしょ。
「何度も申し上げますが、私は誰かと付き合う気は」
「光」
「!?」
こいつまーだウジウジ言ってやがんのか。
流石にウゼー
「お願い。笛吹さんの事をちゃんと見て考えてあげて」
ほら、どうよ。
光が逃げられない理由をちゃんと用意してあげたんだから、股開いて来なさい。
そうだ、これは言っておかないと。
「私の事は忘れて楽しんできなさい」
だって尾行するつもりだもん。
光だったら私の考えを読んで尾行に気付きそうだから、笛吹君のことだけ考えて貰って私の事を頭から追い出してもらわないと。
――――――――
そしてデート当日。
おーいいじゃんいいじゃん。
ちゃんとそれなりに露出してるじゃん。
『露出多めで押し倒されちゃえ』
なんて煽ったかいがあったね。
ぐふふ、笛吹君も意識してる意識してる。
太もも見ちゃってる。
さぁ勇気を出してデート中にもう少し上の場所に突入するのよ!
……
…………
……………………
普通過ぎる!
つまーんなーい。
えっちぃハプニングとか無いの?
間違ってホテル街に入ってそのままご休憩とかしないの?
男なら欲望のままにセックス目指して努力しなさいよ。
今時ピュアピュア男子なんて流行らないよ。
嘘、本当に何も無しで終わっちゃうの?
あー光がバスに乗って解散しちゃった。
しょんぼり。
これはセックスまで長そうだな。
仕方ない、私も帰ろうかな。
あれ。
笛吹君どうしたんだろう。
妙にマジな顔になってる。
って走り出した!?
バスを追っている。
まさか光に何かがあったの?
念のため連絡しておきましょう。
なるほど、光がバスの中で痴漢に襲われていたのか。
それに気づいた笛吹君が必死に走って追いついて犯人を捕まえたと。
良くやった。
光も大喜びでしょ。
私のいる場所からはバスの中の様子は見えないけれど、流石に邪魔をするような無粋な真似はしない。
私が現れたら尾行していたことがバレるからじゃないよ。
私にはまだやらなければならないことがあるから。
男はバスから引きずり降ろされ、警察に引き渡されそうになっている。
「誰か!ひったくりよ!」
突然辺りに女性の声が響いた。
驚いた警官は男から目を逸らして周囲を確認するが、叫んだ女性らしき人が見つからない。
その瞬間、何者かが警官にぶつかり警官は男から手を離してしまった。
男はその隙をついて逃げ出した。
「待て!」
警官も男を追って走り出す。
私は彼らの後をゆっくりと追いかけた。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ、に、逃げ切ったか」
男は人混みの中をかき分けるように逃げ、店に入りトイレの窓から脱出し、入り組んだ路地裏に飛び込んで必死に逃げ回った。
そして繁華街から少し外れたところにある小さな公園に飛び込み、警官が追いかけて来ていないことを確認すると茂みに飛び込み隠れた。
「くそっ、あのクソガキのせいで。覚えてろよ。絶対にあの女を犯してやるからな!」
歯ぐきから血が出そうな程に強く食いしばり、笛吹君と光への憎しみを滾らせる。
その様子を、私は冷たい目で見つめていた。
「それは無理よ」
「だ、誰だ!」
男は茂みからこっそりと顔を出して周囲を見渡した。
そして正面に私
「……」
男は無言で私の体を舐めるような目つきで眺めている。
そして再び周囲を見回して、私しかいないことを再度確認する。
何を考えているのかが、手に取るように分かる。
「やれるものならやってみなさい。人生の落伍者」
ちょっと煽っただけで顔が真っ赤になった。
こんなメンタルの弱さで、よく今まで捕まらずに生きて来たのかと逆に感心する。
「このクソ
男は激昂して私に飛びかかる。
その手が私に触れることはもちろん無い。
「ぐあっ!」
男はどこからか現れた黒服により地面に叩きつけられた。
私は知らなかったのだけれど、どうやら笛吹君も同じようにこの男を制圧したらしい。
「ど、どこから!」
「そんなことを心配する必要は無いわ。あなたはもう
「覚えてろよ!釈放されたら絶対てめぇを犯してやる!」
あのさぁ、さっきは光達をどうこうするって言ってなかった?
これだから感情を制御できない豚とは関わりたくも無いのよ。
「何か勘違いしているようね。あなたは別に逮捕されないわよ」
「な、なに?」
「私の親友を傷つけたクズに、そんな甘い事を許すわけが無いじゃない」
世の中を甘く見ているこの男は知らないのでしょう。
決して触れてはならない闇が、この世にはあるのだということを。
「つれていきなさい」
「はっ!」
「や、やめろ、おい放せ!ぐっ!かはっ!」
騒ぐ男は黒服達に強制的に黙らせられ、この世の闇へと葬り去られる。
私の親友をこのクズから確実に守る唯一の方法を取るために。
「あとでお爺様にお礼を言わないと」
私は帰宅すべく、男も黒服も居なくなった公園から去って行った。
――――――――
中学生の頃の私も困っていた。
超困っていた。
ちょっと調子に乗っただけだった。
困っている人に手を貸す私って偉くね?って自慢したかっただけだった。
そしたらみんな、私のことを優しくて素敵な人だなんて持て囃してくれて調子に乗ってしまった。
ああ、もっと言って!もっと言って!
褒められることが気持ち良くて、私はどんどんみんなが求めてくれる素敵な人を演じてしまった。
気付いた時には、私の周りには信者だらけになっていた。
誰もが私を讃え、誰もが私を愛してくれていた。
そんなの何もおもしろくなーい!
私だって恋バナとかしたいもん。
私だって友達と夕陽の下で殴り合いのケンカとかしたいもん。
私だって男子とエッチなことしたいもん。
本当は私、清楚どころか真逆の存在だもん。
うええええん。
でもみんなを今さら裏切れないよおおおお!
自業自得の悩みに苦しんでいた私は中学二年生になると光と出会った。
誰にでも優しいと評判の私が、みんなと一緒に光を無視するなんてありえない。
だから最初は義務的な感じで光に話しかけた。
「話しかけないで!」
そうしたらなんと光は私を拒絶してきたの。
久しく味わっていなかった敵意に、私はもう絶頂しそうだったわ。
もっと詰って!もっと拒絶して!
その快感が忘れられなくて、私は光に粘着しまくった。
あまりにもしつこかったからか、しばらく経つと光は答えてくれるようになったけれど、ぶっきらぼうに話してくれるのがまた気持ち良、嬉しかった。
壁の無いやりとりをどれだけ求めていたか。
私の中ではもう光はマブダチだったね、うん。
そんな光が突然私を無視し始めたから、流石にブチ切れて苛めていた女共に制裁したけど。
そうそう、その制裁が間に合わなかったのが悔やまれるとこ。
もう少し早く解決していれば、光が林間学校の時に一人で迷子になるなんてことは無かったから。
それとも、必死になって探しに行っちゃうほど光が自分にとって大切な友達になっていたことに気付かされたのだから良かったことなのかな。
それからの光ったら本当にエグイんだから。
私が嫌がるところを的確に攻めてくる。
「聖様は聖女様みたいです」
聖女様呼びを周囲に浸透させたり、聖様呼びする女子達を集めて私にけしかけたり、どれだけ私の羞恥心を刺激すれば満足するんだよって感じ。
毎日のように私を困らせる光が本当に好き。
親友だと思っているし、仕返しをしたいと常日頃思っている。
だから光に危害を加える人が居たら全力で排除するし、光が困っていたら弄って更に困らせる。
私と光はただそれだけの関係。
そうそう、一つだけ。
残念ながら百合じゃないから。
百合は取り巻きの中に別にいて光を狙って……おっと、これはまだ秘密だった。
ぐへへ、笛吹君に
――――――――
「けっかはっぴょう~どんどんぱふぱふ」
今日は笛吹君と光と三人しか居ないから少しばかり素を出しても大丈夫でしょ。
「聞いたよ笛吹さん。ヒーローだったんだって?」
「ヒーローとか大げさですよ」
「いいえ、笛吹くんは私のヒーローです!」
「うえぇ!?」
ほう、余裕ぶって笛吹君を照れさせるなんてやるぅ。
でもどうせ 内心はめっちゃ緊張してるでしょ。
もっと弄っちゃお~っと。
「ほら光。王子様がまだかまだかと待ってるわよ」
「ひゃ、ひゃひっ!」
そうそう、これこれ。
もっともっと恥ずかしがってくれないと、私の気が治まらない。
正確にはセックスを撮らせてもらうまでは。
ぐへへ。
最近の光の様子を見ると、ついノクトゥーンを読みたくなる。
「う、笛吹くん!」
「は、はい!」
おっと、ついに光が笛吹君に返事をするみたい。
「これからよろしくお願いします」
「はい……って鳳さん!?」
「あんなに必死になって助けに来てくれたお礼よ」
うわぁ、あの光が男に抱き着いてる。
私のことを忘れているみたいだからこっそり写真を撮っちゃおう。
よし、これ使って後で揶揄おうっと。
「仲が良いわね」
「最浄さん」
念のため声をかけてみたけれど、写真に撮られていたことに気付いて無さそう。
あ、しまった。
こっそりフェードアウトすればちゅーくらいはしたかもしれないのに。
それ以上もあったかもしれないのに!
私の馬鹿!
「あの、色々と手助けしてくれてありがとうございました」
「お礼を言うのはこちらの方よ。光を好きになってくれてありがとう。幸せにしてあげてね」
「もちろんです」
具体的にはセックス。
「あの、私からも」
光も?
何かしら。
「背中を押してくれてありがとう。聖」
「!」
それってもしかして、お礼になんでもしてくれるってこと!?
あんなプレイやこんなプレイをしてくれるってこと!?
ああもう、どうしよう。
ノクトゥーンのお気に入りからピックアップしないと。
「どういたしまして、光」
いけない。
妄想が暴走して邪な笑みが少しだけ漏れてしまった。
バレてないと良いけど。
「笛吹くん、聖に見惚れてたでしょ」
「別に見惚れてなんかないよ」
「なんで見惚れないのよ」
「ええ!?見惚れてた方が良かったの!?」
「もちろん怒るわ」
「理不尽だー!」
「嫌いになったかしら?」
「ううん、大好き」
「うふふ、私もよ」
はぁ~バレてなくて良かった。
むしろイチャついてるよこいつら。
幸せ全開って感じがなんか気に入らない。
そうだ、ちょっと驚かせてあげようっと。
意味深な感じで、こう、ぼそりと。
「羨ましい」
よし、空気が固まった。
ギャハハハ、二人とも超焦ってる。
ちょーウケルー
「あの、聖?今のは?」
「聞こえちゃった?ごめんごめん、気にしないで」
「気になるわよ!いくら聖でも笛吹くんはあげないからね!」
「分かって分かってる。それじゃお邪魔者は退散しま~す」
「ちょっと本当に分かってるのよね。まさか笛吹くんを本気で狙ってないわよね。ちょっと、聖、待ってってば、聖!」
このまま三角関係を臭わせてしばらく弄ろうかな。
それとも素直に光の恋を応援するフリをしてえっちぃシーンを隠し撮りしようかな。
どっちが良いかなぁ。
別に照れ隠しで誤魔化しているとかじゃないよ。
笛吹君は確かに素敵な男性だけれど、私の好みとは少しだけ違うから。
笛吹君には圧倒的に筋肉が足りない。
ああ、ムッキムキで男くっさい男性に抱かれたいよ~!
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