プラス・ワン~次元の創造主は魔法の世界をぶっ飛ばす!~

リンちょみ

プロローグ:ある村娘が見た光景

―――ついに来たんだ。私の番が。

世界は冷たくて暗くて残酷だ。

弱者は奪われ、使われ、殺される。


力のない私は今まで守られてばっかりだった。

あの時守ってくれた大切な親友は、逃げも隠れもせずにその身を差し出していた。

せめてあなたの弟だけは、私が精いっぱい支えて、いつかあなたとまた会えるようにと頑張ってきたけど……それももう、出来なくなるんだ。


……でも、それを言い訳にしてここでも逃げてしまったら……これから先あの子を支える事が、まるで罪滅ぼしになってしまいそうで怖い。

だったら私は、胸を張ってあなたと再会できるような選択をしたい。

連れていかれるのが怖くないって言ったらウソになるけど、こんな私でも村のみんなを守る事ができるなら、全然平気な気がする。

もしかしてあなたも、あの時こんな気持ちだったのかな?


「ッ—――……」


長い。

とっくに手を掴まれて、乱暴に引っ張られてもおかしくないのに、なんだか一瞬がすごく長く感じる。

それに妙に静かだ。さっきまで二人とも叫んでいたはずなのに。

感じるのは少しだけ吹き込んでくる風と、生まれ育ったこの家の、慣れ親しんだ匂いだけ。まるで時間が止まったみたい―――。


「―――メリルに何してんだ?……お前ら」


その声に引き付けられて、気付けば目を開けていた。

無意識に、力いっぱい閉じていた瞼に閉ざされていた視界が、やけに優しく、明るさに慣れていく。

その理由はすぐに分かった。

窓から差し込む光を、いつの間にか私の前に立っていた、彼女の雪のような白銀の髪が……キラキラと柔らかく反射してくれていたからだ。


昨日村に来たばかりの、私より年下くらいの女の子。

親友が残した、かけがえのないあの子を背負って現れた人。

皆のために犠牲になることを躊躇ためらいなく受け入れた、あの日のあなたとそっくりな、強さを持った後ろ姿。


私は生涯忘れることは無いだろう。

あの日から…永遠に続くと思っていた重苦しい曇り空を、太陽のように暖かく照らし出してくれた、唐紅からくれないの瞳を持つ、彼女の存在を。

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