第12話したい事

「いらっしゃいませ。」フロントカウンターに座らず立って待っていたナオ

ミにツカツカと歩み寄る。余所行きの笑顔で・・・。


>  背中を指す様な視線に痛みを感じながら所用を済ませて行く。


> 鮮やかな客さばきをしていたのは、つばさがこちらを睨んでいたせいだった。


>  何よあの娘、「感じ悪ぅ!」


嫌悪の捨て台詞とワゴンRを残して立ち去った。


> 車検の依頼に来たのは、キリコと岐阜総合病院1階喫煙室の隣室にある売店イ

ートインでのコーヒータイムの3時間後だった。


> 「これよこれっ! スーパーカップのバニラが堪らんよ。」


そう言いながら付

属の木製アイススプンで四分の一づつ切り分けそれをコーヒーブラックのカップ

に入れた。

>  キリコならではの飲み方だった。


> 「染みるねえ~。」眼を瞑り口を窄めてバニラの香りと甘さを堪能し、その中

のコーヒーの苦味も味わっていた。


> 「告られたんよね四日前に・・・。」


キリコを観てカミングアウトしたが、そ

の内容は同級生の宮大工、三田秀雄(みたひでお)に同窓会の酒の席で「上善水

の如しって知っとるか上善寺?」まーたかよと適当に聴いていたが・・・。



>  民芸居酒屋の堀座卓の有る宴会場にナオミは同窓会で来ていた。


> 「あれはアッサリしていてなんぼでも行けるわなあ。」


胡坐の尻を動かしなが

らナオミに近付き、とうとうその左横まで来てしまった。


> 「アレは高いよ、なんぼでも飲む酒じゃ無いしね、一杯か二杯で止めとく酒だ

よ。」

> 直美は盃の清酒を小さい舌で猫舐め舐めしてそう言った。


>  周囲は何十年ぶりに逢う旧友の話しの花が咲き脇目も振らず思い出話に夢中

になっていた。

> 「俺もその酒が好きでさあ側に置いていたい訳よ。」


顔面が素面になっていた。


> 「だから上善寺、お前を側に起きたい訳さ。付き合って下さい。」

真面目な顔

とはこういう奴の顔の事をいうんだろうか? 


直美は薄っすらと脳裏にハウリン

グが響いていた。


>  ゥワンゥワンゥワン!ハウリングがする度に頭が締め付けられる。

> 酒は飲めるが、強い方ではなかった。

> 「お願い返事待って、今は答えられない。お酒、飲まないの?」

こう返答する

のが精一杯だった。一合徳利を手渡し明後日の方向へ体勢を変えた。

>  そりゃあ恋もしたい。


> オトコを信じて頭を擡げ身体を預けて二人で歩きたい。

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