/// 28.護衛任務でのんびり旅

執事エイルとの地獄のような時間も終わり、いよいよ本番の学園までの護衛依頼が始まる。赤い盾も合流したし何より執事エイルがいれば一切合切何も心配はない道中である。


やってやりますよーーーっと。




馬車の中ではカトレアお嬢様が両手を窓に付きながら外の景色を眺めていた。執事エイルはにっこり笑顔のまま固まっている。特にしゃべりかけることもないので、お嬢様と同じように窓の外をただただ眺めている。平和だなー。いっそ馬車を操る従者として馬車の前の方に座って、馬を操るふりでもしていた方が気が楽かもしれないと思っていた。


「暇ね・・・」


そんなお嬢様の一言にそちらを伺うと、こちらをチラチラうかがうお嬢様と目が合った。そしてジト目である・・・


「で・・・では、私の前の世界での有名な物語を・・・」


そういうと、さすがに子供っぽいと怒られるかな?と思いつつも桃太郎の話を始めるサイコ。


意外なほど別のところにひっかかったらしく、なぜ桃を切る時に赤子は真っ二つにならなかったか?とか、なぜきびだんご一つでそのような危険な依頼を?とか、鬼が何をしたというんだ?とか・・・なかなかの食いつきであった。調子にのった俺は三匹の子豚の話で、私なら屈強な執事を雇うという話になったり、シンデレラでとりあえず鑑定なのでは、と言われたりしながら時間をつぶしていた。


馬車が止まると昼食の準備ということでサイコも手慣れた様子で手伝いを始める。前回何度か見ていたので、要領良くテントを立てたりかまどを作ったり、特に料理は慣れたものなので、当然のごとく次からは料理はすべてお任せということになった。次元収納から次々だされる食材で何か珍しいものをと淡い期待を込めて、まだこちらでは作っていない、回鍋肉や棒棒鶏、マーボ豆腐、デザートにはタピオカミルクティやジェラートを作ってみた。


「うん。さすが食堂で働いているだけあるな」

「そうね。普通においしいわ」

「サイコの料理は最高じゃー」


感想はまあまあだった。残念である。


ちなみにテントなども、本当は組み立てたままを出し入れするだけで良いのだが、ここは雰囲気らしい。組み立てている様(さま)をお嬢様が見るということが重要らしい。ほとんどの場合その準備の段階では馬車の中で、なんならお眠りあそばしているお嬢様を思い出す。これも意味のない形骸化された風習のようだ。それから数日は何事もなく順調に旅は続いた。途中で出た角熊なども、前回の雪辱を晴らす意味で一人で討伐していったのだが、当然のことながらレベル2桁前半の魔物では敵にはならなかった。


そもそもが魔物は空気中を漂う魔素を糧として成長する。遺跡は濃い魔素を栄養にどんどん魔物が強くなっていくのだが、弱い魔素の中、動物が魔物化した程度の外の世界ではせいぜいこんなものである。たまに覚醒前の子供が、うかつにも魔物に遭遇して軽いけがをしても、大抵転移で戻ってきて事なきを得るという程度であった。たまに遺跡から魔物があふれスタンピートに・・・なんてこともないらしい。


もし仮にそういったことがあれば、おそらく執事エイルのような圧倒的強者たちがなんとかするのだろう。エイルさんより上の人達でも手に負えない魔物が・・・そんなことがあったらこの世界は壊滅だろう。


それはそうと、毎日、就寝前の時間帯に「軽く運動したら?」と言い放つお嬢様の気まぐれにより、毎晩エイルさんと手合わせを強要するのはやめてほしい。完全なパワハラである。毎日が命がけである。それに笑顔で付き合うエイルさんも少し手加減をしてほしい。嫌、存分に手加減しているのだろうが、毎晩寝ている間にきっちりと超回復がフルで発動するような事態は、はやり精神衛生上よろしくないと思う。それを楽しそうに眺めるお嬢様・・・多分彼女がラスボスなのだろう。そんな思いを胸に今日も一日が終わる。


どうしてこうなった・・・



現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 100m

力 975

守 610

知 1135

速 1348

スキル 詳細鑑定(999) 言語疎通(999999) 肉体強化(7135) 魔力増強(399) 料理(2815) 精神耐性(3945) 無限収納 調合(5) 並行処理(2638) 鍛冶(758) 酒造(5) 精密動作(3587) 危険察知(9158) 超回復(5)

魔法 転移(65) 浮遊(42) 治癒(481) ウィンド(1) 浄化(382) ウォーター(271) ウォーム(15) 光刃(こうが)(14689)

加護 女神の加護

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る