/// 8.初めての街
初めての野営で無事覚醒をはたしたサイコ。魔法の知識も少し増え今後のチート生活に思いをはせる。
やってやりますよ!!!
夜が明け、赤の盾の面々もテントから出て慣れた様子で朝食の準備を始める。
当たり障りのない会話をしながら昨日と同じような簡単な料理をつくり、粛々と食事を終え片づけをして出発の準備をする。
カトレアお嬢様は準備ができたと声をかけられると執事エイルと共に馬車から降りてくるが眠そうに眼をこすり料理中も口数か少な目だった。
準備ができたので出発するようだが、今日は前の馬車に乗るように執事エイルから伝えられたのでアレクたち赤い盾の面々と一緒に馬車に乗り込む。
どうやらお嬢様はまだ寝足りないようで街につくまでもう一寝入りするらしい。
お嬢様にはただただ馬車にのって移動というのは退屈なのだろう。帝都にはお昼ぐらいには着くという。
馬車に乗り込むとちょうど向かい合わせで4席が埋まる。
「今日は帝都につくのとことですが、帝都に入るには身分証なんかが必要だったりしないのでしょうか?」
「身分証なんかはいらんが、入場時には殺人といった悪事を行ったかの確認をするのはあるのお」
サイコの質問に答えるウィン。
「悪事の確認ですか?」
「そうじゃ。帝都ほどの大きな街になると入口の警備が識別証というプレートに手をかざすんじゃ」
ウィンはそういうと胸の前に手をかざすジェスチャーをする。
「罪なき人を殺害するとそのプレートが赤く光るのじゃ。もちろん盗賊など他人の迷惑をかけるような輩を成敗したということであらば大丈夫じゃがの。まー仕組みはわからんが遺跡から発掘された神の遺物と呼ばれておる。その分枚数は限られておるので大きな街にしか支給されておらんがの・・・まっ、この侯爵家の馬車であれば素通りじゃがな。ふぉっふぉっふぉ」
(なるほどな。そんなものもあるのか。馬車はスルーって警備ゆるゆるだな。遺跡というのはきっとダンジョンの様なもんだな。そこで無双することができればきっとおいしい人生が待っているに違いない!そうなるとまずは・・・)
「遺跡というのは冒険者になれば入れるようなところなのでしょうか?今でもそういったお宝などが眠っていたり・・・」
「そうじゃのう。冒険者登録をしたものであれば入れるということは間違いないのう。じゃが遺跡は不思議と一定時間たつと自然と形などがかわっておって、それと同時に魔物や宝箱などが増えているのじゃ。地図などもあてにならんのでなかなか大変じゃぞ。そういったものを収集して生計を立てる冒険者も多いんじゃが・・・少なくとも覚醒後のレベルで100を超えてでないと厳しかろうな」
まずはレベル上げか・・・そう思うサイコはレベル上げについても聞いてみた。
「そうなると遺跡に入るためにレベル上げなんかはどうするのでしょうか?」
「冒険者ギルドの地下にはダンジョンにつながっているところがあっての。そこに一定数の魔物を引き入れるんじゃ。そこなら覚醒済みであらばそれなりに狩れるよう調整してくれるんじゃ。怪我をおってもすぐ戻れるし何かあれば待機のギルド職員がヘルプしてくれんじゃよ。そこでレベルに合わせて100程度までなら上げることが可能なんじゃ」
「至れり尽くせりですね。しかしギルドはそこまで手間をかけて育てるのはなぜなんでしょうか」
「そりゃーおめー冒険者が増えればギルドも素材の買取などの取引量も増える。それに訓練中の魔石はちゃんと拾って回収してギルドに提出するんだ。無料でな。それが手間賃になるってもんだ」
ウィンとの会話にアレクが混ざってくる。
「なるほど・・・持ちつ持たれつという感じですね。街についたら行ってみたいですね」
「そうじゃの。まずはゆっくりと強くなることじゃ。なーに素質はあるようじゃ。すぐに遺跡に潜れるようになるじゃろう」
「そうなるとレベル上げの間の宿と仕事ですね。稼がないと。帝都に着いたら何か仕事でも探してみます
(どのぐらいで100超えれるんだー?とりま遺跡に潜って無双しないと生活してけねーぞ!くっそー!おれの異世界ライフが!!!)」
「宿はわしらと一緒にギルド併設の寝床に止まればよかろう。下手な宿より豪華じゃそ。依頼料でつけれるしもちろんしばらくはわしと同部屋でも良いしの。ギルドには食堂も併設されてるし困ることはないじゃろう」
「いえ。そこまでお世話になるわけにはいきません」
「遠慮せんともよんじゃがのう」
ウィンの提案に断るサイコ、ウィンはがっかりしすぎでしばらくの間うなだれていた・・・
(おい!そこはもっとぐいぐい来いよ!図々しく思われないようにいったん拒否したのに役に立たねえジジーだな!まっ、チートネタはまだまだあるし、なんとかなるだろう。あっ!そういえば・・・)
サイコは今更ながら疑問に思っていたことも聞いてみる。
「あの、今更なんですがこの馬車って御者といいますか、馬を操る人がいないのですがどのようになってるのでしょうか?」
「ああ、あれか。あれは従属魔法でテイムされてるから一定の速度で動き目的地も決められている。馬車内の乗り手の意志に応じて動いてくれるんで途中でとまったり道順を少し変えて寄り道したりもできるように調教されてるって寸法よ」
「そうでしたか・・・
(なるほどな・・・便利なシステムだな。そうなると俺もこういうのを勝って国中のんびり旅するのも悪くないな。寝てれば勝手に着くんだろうし)」
その後も、ウィンとたまにアレクとの会話をつづける。エビルはそんな3人をにっこり笑顔で見守っている。謎である。
(おっあれは・・・なんかちょっと緊張してきたな・・・俺としたことが・・・子供かよっ!)
目の前に大きな壁のような建物がうっすら見えてきた。アレクたちからもうすぐ到着するということを聞いて少し緊張するサイコ。
どこまでも続く高くそびえたつ城壁に3メートルほどの大きな門。徒歩の面々は少しばかりの行列をなしている。
行列は大きな入り口の右端、門番というのだろうか4名ほどが係員のように待機していて行列を順々にさばいている。
それぞれがプレートに手をかざしては青い光を放っては通り過ぎている。きっとあそこで赤い光となれば追い返されるのかな?それとも拘束されて処刑?
そのそばにはレンガ作りの詰所のような小さな建物があるのできっとそこにも何人か係員がいるのだろう。
よく見るとサイコが今乗っている馬車で通るのは本当に数えるほど、門の中央を通ってそのまま帝都内へ入っていく。
「あまり馬車で通る人はいないのですね」
「馬車に乗るのはその道程に意味を成す時だけじゃからのう」
「道程に意味、ですか?」
「そうじゃ。今回、わしらはカトレアお嬢様の学園からの帰り道。実際にその道のりを馬車で移動し、景色を見て、人並を見て、苦労を知るのじゃ」
「なるほど。そういった意味があるのですね」
「そういったことがない普段の移動なら浮遊などで移送したり転移を使えばよいだけじゃからのう。ちなみに帝都の城壁には魔力疎外の石材が練り込まれていて、それにより帝都全体が結界のように守られているから転移などでは入れんぞ。だから皆、おとなしく並んでおるんじゃ」
ウィンの言葉になるほどと感心する。
考えてみたらみんな魔法使えるのなら気軽に飛んでけばいいのか・・・わざわざ遅い馬車で移動する必要性もないな。
今回は「意味はある行事」ではあるぶっちゃけると「無駄な手間暇」ってことか。まあ12歳のお嬢様にはたとえ眠っている時間がおおかろうが、数日間馬車に揺られ野営してということだけでも大変な体験か。
そんなことを考えている間に、どうやらあっさりと馬車は門を抜け帝都内に入っていた。
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