/// 2.転生した世界

サイコは目覚める。

ゆっくりと目を開けるとそこは森の中。

視界をならし両手をグーパーと動かし若かりし日の健康体なカラダであることを実感する。


「よし!いい感じだ!ここから俺の異世界転生伝説がはじまるんだな!」


きりりと光る白い歯がまぶしい白光り美少年サイコはつぶやいた。


「ステータス」


転生物の定番の言葉を口にすると目の前に白枠青バックの80年代を彷彿するしょぼいゲーム画面のような簡素な画面が出現した。


現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 999

力 9999

守 9999

知 9999

速 9999

スキル 鑑定 言語疎通

魔法 なし


「ほおほお。約束どおりのマックス感。年もちょうどよいだろう。しかし魔法なしはさびしいな。どれ・・・転移!」


そう叫ぶと思い描いたとおりに視界の範囲の先に瞬時に移動する。


ぴろん!

『転移魔法ヲ習得シマシタ』


無機質な声で新たな魔法の習得を知らされ、ご満悦なサイコ。


「これなら移動も楽だな。あとは・・・浮遊!」


唱えた言葉通りにサイコの体がふわりと浮かび上がる。


ぴろん!

『浮遊魔法ヲ習得シマシタ』


ますますご満悦のサイコはそのまま上空に上がると100mぐらい先でなにやら土煙が上がっているのが見えた。


「おっ、まさかの定番、高貴な輩が盗賊や魔物に襲われウィーイなやつかな?いっちょ行ってみるか」


そのまま前へはじき飛ぶイメージをするだけで目的地上空までくると案の定、それなりに高価な馬車のまわりを囲む大きな熊のような生き物が数十匹。

頭には黒い角が2本生えておりこれが魔物なのだろうと感じた。

少し様子を見ていると、2台ある馬車の前の方から3人のガタイの良い男たちが下りてきた。


「よし。鑑定でも使ってみるか」


サイコは目に力を入れ、まずは魔物と思わしき熊の能力を盗み見る。



角熊A

種族 魔物

LV 52m

力 273

守 155

知 5

速 20


「おお・・・弱いな。ほかの熊も似たようなもんか。おっさんたちはどうかな?」


アルフ

種族 人族 / 年齢 38 / 性別 ♂

LV 35m

力 185

守 120

知 80

速 95


「ほほぉ・・・このアルフって奴が一番強いがこんなもんか・・・あとはこれが現地人の平均かどうかってとこだよな。どうみてもピンチだな。数も多いしいっちょ助けてやるか」


おっさんズの先頭で仁王立ちしている赤毛で髭もじゃの丸太のようなガタイのおっさんはアルフというらしい。


シュタッ!と自ら効果音をつけて角熊とアルフの間に降り立つサイコ。


「うぉっ」


アルフは突然現れた来訪者に小さく驚く。


「助太刀させていただくよ」


過去最高のオシャな登場に酔いしれながら角熊に飛びくサイコ。


(こんだけレベル差があればこれで十分だろう)


丸腰だったため角熊の首筋めがけて手刀を打ち付ける。

次の瞬間、ゴキッ!という鈍い音とともに時がとまった・・・


「うががががーーー!」


あまりの痛みにドタリと地面に落ち、悲鳴を上げながら転がりまわるサイコ。

どうやら骨まではいっていないがかなりの痛みを伴ったようだ。

ちなみにサイコ渾身の手刀をくらわせた角熊はきょとんとしている。


「おいおい!突然出てきたと思ったらまだガキじゃねーか。かっこつけたいお年頃か?ガハハハそれはいいが、ここは遊び場じゃないからな。おい、イビル!こいつ治療してやってくれっ!」


了解とばかりにうなずいて金髪やせ型の男が転げまわっているサイコにめがけて左手をかざすと少しだけ光る。


「うごっ!!!がぁぁっ・・・が・・・あ・・・あ?」


痛みが引き安堵の表情を見せるサイコだったが、すぐに表情を戻し立ち上がって乱れた衣服に髪を直し右手を軽く前に上げ、お礼を口にする。


「すまない。どうやら今日はちょっと調子が悪いようだ。邪魔をしてしまったな」

ぴろん!

『治癒魔法ヲ習得シマシタ』


必死で取り繕うも、治療をしてくれたイビルと呼ばれた男は苦笑いをするしかなかった。


「ま・・・まあそんな日もありますからね」


背後ではアルフともう一人の男が角熊を次々と討伐している。素手で・・・


「あっ・・・私もちょっと行ってきますから。危ないから君は少しはなれたあの辺で待っててださいね。あとで少しですが分け前を上げましょう。手伝おうとした気持ちは大事ですからね」


サイコの後ろ側、場所の近くを指さしサイコにやさしい笑顔で語りかけた男は、物言わぬサイコの横をすり抜け参戦する。


「待たせましたね、アレク、ウィン」


「まだまだ余裕よー。しかし数がちーとばかり多いからな。イビルいつものたのまー」


「わしはそろそろ限界じゃからな。はようしてくれんと死んじまうわ」


バッコバッコと角熊を殴りたおしているアレクと、手を斜めに振るとなにやら竜巻のような風が舞い角熊の首筋に大きな傷をつけるウィン。

二人に向けてイビルが手をかざすとまたまた小さく光りが生まれ、その光を二人が吸収した後はもう別次元の世界になっていた。


速度が風のように早くなったアルフは3倍速く角熊を殴り倒す。


ウィンの方はというと、手をすっと横にかざすだけで無数の竜巻が複数の角熊に向かいその首を切り落とす。


そして数秒後にはすべての角熊が地面に横たえていた・・・


サイコはその光景をただただ真顔で見つめるしかなかった・・・


ぴろん!ぴろん!

『スキル肉体強化ヲ習得シマシタ』

『スキル魔力増強ヲ習得シマシタ』


現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 999

力 9999

守 9999

知 9999

速 9999

スキル 鑑定 言語疎通 肉体強化 New!! 魔力増強 New!!

魔法 転移 New!! 浮遊 New!! 治癒 New!!


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