018 井上姉妹どうなってるんだよ! 仲良すぎか!




 小百合はビクっと肩を震わせたけど、大丈夫だ。 俺はちゃんと学ぶ。

 今夜はそのへんのファミレスに行く!




「はぁ~… ファミレスに来ることがこんなに落ち着くなんて初めてです…」


 小百合は何を言ってるんだ?


「そうなの? ファミレスってそれなりに来るけどここまで喜ぶものかしら?」


 だよね? 行くところに困ったときの選択肢程度だよね?


「あたし、このジャンボステーキをとりあえず3つ。」


 ジャンボステーキ… え? 500グラムで3,000円!? やっす!


「じゃあ私はこっちのパスタセットにするわ。」


「あ、私も同じものを。」


 2人の注文も決まったみたいだし注文するか。





 うん、久しくファミレスなんて来てなかったけど驚いたな。

 この価格でこのクオリティの料理がでてくるなんてな! 安くてうまい! これならみんな喜んで通うよな。


 あれから美冬は通算5枚のジャンボステーキを食べ、今は洗面器サイズのパフェを攻略中だ。 その身体によくこれだけ入るよなぁ…



「それで… さっきからこっちをじろじろ見てるにはなんなわけ? 零司ってそんなに有名なの?」


「俺じゃねぇよ… 鏡見たことあるか? ゆかりと美冬、小百合の3人の美少女と俺っていうこの状態が気に入らないんだろ。」


「なんで? 強い男に女が集まるのは当然。」


「あー そういうことね、私たち2人のときもそれなりに声をかけられたけど3人になったし…」


「零司さま、どうなさいますか?」


「放置だよ。 ハンターが一般人に手を出すわけにはいかないからね。 でも実害が出るならそこからは好きにさせてもらう。」


 ナンパ程度ならほっとくけどむりやりになったら…ねぇ?




 結局何か声をかけられたりはなく、じろじろヒソヒソされただけだった。


「なんか気持ち悪いわねぇ… 言いたいことがあるならはっきり言って来ればいいのに。」


「ゆかりモテモテ。」


「なに言ってるのよ、あんたたちだってかなりのもんでしょうが! 私よりずっと大きいし…」


「私は零司さま以外の男性に興味はありませんのでどうでもいいです。」


「れーじは大きいの好き?」


「おい… 答えにくいことを聞くな!」


 ここにはゆかりもいるんだぞ!


「あなたねぇ… 私をどういう目で見てるか分かったわ…」


「大丈夫ですよ、ゆかり。 食事にも箸休めは必要です、あなたの控え目なものも十分魅力的です。」


「さぁゆぅりぃ…… あんた私と戦争したいわけ!?」


 ここはまずい! この2人が暴れたらそこらへんのハンターでも死ねるぞ!?


「俺は! 大きいのも控え目なのもどっちも好きだ! だから喧嘩なんかするな!」


 俺が道化になるしかないわな…


「あんたねぇ… もういいわよ、なんか気が抜けちゃったわ。 明日は普通に登校したらいいのよね?」


「あぁ、このあと踏破しとく。 2人ともしばらく行ってなかったんだろ? 高校生活もあと1年しかないんだから少しでも楽しんでおきなよ?」



「はぁ… こういうところはゼロさんを感じるのよね…」



「何か言った?」


「なんでもないわよ! お昼の2時頃に支部に行くから今回の依頼について話し合いするわよ、それじゃまた明日ね!」


「ばいばい」




「あの… 零司さま、少しご相談したいことが…」


「ん? あぁ、たしか寮に入ってるんだったよな? 俺の住んでるマンションに部屋を用意してるから引っ越し準備しといて。 それと一度見てから改装について話そうか。」


「え…? 零司さまのお近くに引っ越しをしようと思っているというところでしたが…」


「近くていいだろ? あ、ゆかりたちもそのうち呼ぶからどの部屋にするか相談してもらうことにしようか。」


 支部から歩いてすぐにあるマンションを1棟買ってあるんだ。 最上階は俺と俺のパーティーのために確保しておいてよかった。


 Sランクをしばらくやってるとそれなりに金はたまる。 もちろん税金はちゃんと払ってるよ。 ダンジョン税というのがあって、ダンジョンの収益の3割を税金として報酬を受け取るときに協会を通して支払っている。 ちなみに確定申告のときには「ダンジョン収益〇円」って書けば済む。

 実は裏で、ハンター増税の計画もあったようだ。 ダンジョン税を支払っているのにさらに所得税を取ろうという案があったらしい。

 ま、消えたけどね。 そんなのが通ったらだれもハンターをしなくなって経済が止まる。 そんなこともわからないひとが何人かいるらしいことが悲しいね。


 それでこのマンションなんだけど、ハンターの装備なんかは経費として認められないから節税にはならないんだけど現金を持っていてもゼロの戸籍なんかはないし零司名義に資産を移すのもめんどくさいことになりそうなんで、どうせならと会社を作ってそこで買ったんだ。 そうすればゼロの名義から会社名義に金を移してもなんの問題もないし、零司に金を移しても言い訳はできる。



「あの… そのマンションに引っ越しというのは…?」


「あぁ、社宅だよ。 おいおい話すけどみんなを俺の会社の社員にするから社宅に住んでも問題ないだろ?」


「みんなというのはだれを指すのですか?」


「とりあえずはレイヴンの3人かな。 あとは状況次第だと思ってる。」


「そんな好待遇で… いいのですか?」


「悪い言い方をすれば囲い込みしたいんだよ。 だからこれでいいの。」


 実力に見合う待遇をしておけば引き抜かれる心配も減るだろうしね。



「寮の方はすぐに立ち退きってわけじゃないんだろ? 3人で色々相談したらいいよ。 マンションの最上階のマスターキーは渡しておくから好きに見て、でも管理人にはひと声かけるようにね。

 じゃあ俺は怪鳥のダンジョンに行ってくるから。 明日いっぱいは俺の付き添い扱いで出勤しなくてもいいんだよな? 2人の学校終わるまでは有給だと思って休めばいいよ。」


「そうさせていただきます… いってらっしゃいませ…」




 さて、入る前に美夏に連絡しておくか。 メールって言ったけど電話でいいか、打つのめんどくさいし。



「――――」

 数回のコールの後で


「ひゃいっ! いにょうえでひゅっ!」


 は…? どうした…?


「私は神薙と言います。 井上美夏さんのお電話番号でお間違いございませんか?」


 よし、聞かなかったことにして用件だけ伝えよう。 こういうときは営業電話の要領で話せば問題なく終わるはずだ。


「はい、美夏は私です。 神薙さん…? どちらの神薙さんでしょうか?」


 嘘だろ… 神薙って知り合いが俺以外にいるのか?


「失礼を、神薙零司と申します。」


「あぁ! 零司くん! もう! いきなりの電話だからびっくりしちゃったよぉ~。 あんなしゃべり方もできるんだね! ちょっとかっこよかっ… なんでもないよ!!」


「あ、あぁ… ではこの電話の用件をお伝えしようと「あ、美春姉さんおかえり! 今零司くんから電話がかかってきてるのー!」あれ?」


「おぉ、零司か。 お前なにやってるんだ? 今日は美夏に学校を休めと言っていたが自分も休んでいたようだな? 男子生徒が女子生徒に学校を休ませるなど不純異性交遊かと思えば美夏は1日家にいたようだし、意味が分からんぞ?」


 俺も意味がわからないよ。 なんで電話変わってるんだよ! それで、なんで俺が休んでるのを知ってるんだよ!?


「失礼しました、今日はダンジョンに入っていたので休みを「おぉ! 美冬! 久しぶりに帰ってきたか! なに!? 零司とダンジョンだと!? そうか、それで? ほうほう… なんだと!? 氾濫直前のダンジョンで連携の訓練!? そんな余裕がよくあったな… うむ… 特例か… だが私は年もお前たちや零司より上だし… 歓迎する? いやいや、お前がいいと言っても… ゆかりもそう言っているのか? なら… 前向きに考えるとしよう… それで、なんだっけ?」


 待って!? 何の話しされてるの!? 俺の名前出てきたよね!?


「えっと… 明日学校で会おうって「わかった。 朝れーじの教室に行く。」はい!?」


 今のは美冬だよな…?


「美夏に伝言を頼む、明日学校で会おうって伝えてくれ。」


「あ… はい。 教室で会いましょうね…?」


「美夏に戻ってたのか… じゃあまた明日、おやすみ。」


「おやすみなさい。」



 …井上姉妹どうなってるんだよ! 仲良すぎか!




作者です


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次回は2023.09.13 18時です。

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