5層 vsケンタウロス

5層は3層、4層とまた雰囲気が変わり、木々が少々少なくなり、地面の草が増えた。


ステップ気候に近いのだろうか。


「隠れる場所は少ないが、オークやゴブリンと比べ、ケンタウロスは足が速い。奇襲対策は怠らないように」

遥さんが僕たちに注意を促す。前回ユニークの奇襲を受けたとき、僕は反応できなかったから耳が痛い。


「ケンタウロスは弓を使わず、普通の道路での自動車くらいの速さで迫ってくる。最悪の場合を考えるなら、弓を射ながら、高速で移動するユニークが出るかも」

……割ときつい敵だ。さくらさんの提示する可能性にげんなりする。


「頑張って狩っていこー!」


「「「おー」」」




しばらく歩いていると、前方から足音が響いてきた。

「てきしゅー」


現れた敵は、ケンタウロスと呼ばれてはいるが、神話などで語られる存在とは違った。

下半身は真っ黒で確かに馬に似た4つ足、上半身は人間と言うより猿に近い。

馬と大きく違うのが、やはり手だろうか。


人や猿のように何かを掴むことの出来るというアドバンテージを活かし、硬質な鋭い槍のような形状をしたものを持っている。


戦闘でのイメージとしては馬の上に乗り、槍を持った人間だろうか。

種子島を持った人間が3グロスほど欲しい。


「ふぁいあーぼーる」

さくらさんが遠距離攻撃を出来るという利点を活かし、魔法を放つ。


が、ケンタウロスは軽やかに避ける。


「光よ、守り給え!」

愛さんも足元に障壁を貼り、こかそうとするが、障壁は蹴りでそのまま破壊された。


あと数秒で接敵だ。


「横に避けて、そのまま攻撃しよう」

ある程度まで引き付けて、さくらさんと遥さんは右に、僕と愛さんは左に避ける。


が、ケンタウロスは通り過ぎざまに槍を振るう。

引き付けて掴み、そのまま奪う――としたかったが、思った以上に力が強く、そのまま振り回されそうになり、慌てて手を放す。


が、威力を殺すことは出来た。


遥さんは軽々と避け、そのまま強烈なローキックを放つ。

……確かオークにもローキックを放っていたが、得意技なんだろうか。

コケてくれたら集団で囲んでずっと攻撃しやすいというのも分かるけれど……



それでもケンタウロスはコケず、走り抜け、また旋回して戻ってくる。

「カウンターを狙う」


遥さんが宣言して前に出る。

ケンタウロスも前に出た遥さんに狙いを定めた。


槍を勢いよく突き出され、避けても1トンほどありそうな巨体の突進が待っている。


しかし、頭目掛けて突き出された槍を遥さんは重心を左にし、ほんの少しだけ頭の位置をずらすことで避けた。

そのまま右手で槍の穂先を叩き、ベクトルを地面に向ける。


慌ててケンタウロスは槍を戻そうとするが、1手遅く、槍は地面に突き刺さった。

地面に刺さってしまった槍がブレーキとなり、ケンタウロスは少しバランスを崩す。


「ふぁいあーぼーる」


「光よ、守り給え!」


ケンタウロスはその上、さくらさんや、愛さんの魔法を避けようとしてしまった。

元々体勢が崩れていたところに更に回避しようと体勢を変えたのだ。


とどめの遥さんの蹴りが入り、そのままケンタウロスはこけた。



そのまま集団で殴る作業が始まった。




……正直放送では流しにくいあれな絵面だなと思う。


「ちなみに、勇気くんだったらどうやって倒す?」


「あ、ちょうどよくケンタウロスが来た」


「遥さんみたいにケンタウロスの前に出て」

危険が目の前に迫り、「勇者」のスキルが発動する。


「それで聖剣伸ばして斬ります」

聖剣をちょっと伸ばして、そのまま縦に割く。


「ぶつかると困るので、聖剣の腹で叩いて、横にずらします」

死んでもすぐに魔石になるわけではなく、一瞬のラグがある。

死んだモンスターに殺されるということも十分あり得る話だ。


「こんな感じですね」


「チートだな……」


「というか聖剣伸びるんだ!?」


「やっぱりRTAやってみない?」


正直、モンスター相手だったら僕はかなり強いと思う。

簡単にピンチになれるから。


でも対人だと、ピンチにさせないようにじわじわ首を絞めるように戦われ、力を発揮できないまま倒されることも有り得そうだ。


愛さんが少し考えたあとに言った。

「戦闘経験も必要だから、勇気くんになるはやで狩ってもらった分だけ、自分たちでも倒そうか!」


遥さんも頷いた。


そしてRTAが決定した。













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