第三章:ダンジョン攻略、炎上系配信者
ホトップス
プルルル、プルルル。
寝ぼけ眼をこすりながら、快眠を邪魔するスマホを探す。
表示画面に書かれていた差出人は――愛さんだった。
急にどうしたのだろうか。
「もしもし、鬼崎です」
「おはよう!ごめん、すぐに相談したいことがあるから、私の部屋に来てくれない?」
長々とした前置きなし。相談したい内容もなく、ただ私の部屋に来てほしいと。
……ただ事じゃない予感がすごいする。
「はい、今行きます」
firesとの生配信が無事終わり、気持ちよく眠りについたはずだった。
そして、今朝も惰眠を貪るはずだった。
愛さんの部屋に行くと、愛さん、遥さん、さくらさんがもう居た。
3人共格好が違い、愛さんは少しラフだけど、僕基準ではコンビニ行けそうな感じで、遥さんは街中歩けそうな感じで、さくらさんはパジャマで目も半分閉じていた。
「ちょっとこのツイート見てほしいの」
そう言って愛さんに渡されたスマホの画面には、なかなか刺激的な言葉が載っていた。
「タイシ(ホトップス)
今話題のダンジョン系アイドルとコラボする。正直実力はまだまだ足らないと思うけど、見込みアリだから。俺らと同じステージで盛り上がろうぜ」
「……」
なんと言えば良いのかわからない。でも、全ての行にツッコミをいれたい。
よく知らない人になぜそこまで上から目線になれるのだろうか。そしてこの発言には、相手を不快にさせようという意思はないのだろうか。
「コラボ関係のお知らせは私達のところに来ていないの!だけどこんな感じの匂わせツイートを発信されちゃったの」
「……ダンジョンアイドルズ!とは違う方々とコラボするんじゃないのでしょうか」
僕自身がインフルエンサーの流儀をよく知らないからかもしれないが、了承を得ないなかで、コラボ関係の話をすることは、ありえないと思う。
だから、きっと違う方々とコラボだ。自意識過剰になってしまっているだけだ。
「私もそうだと信じたいよ!でも、対策はちゃんとしておいてほうが良いと思う」
「ちなみにほかはどのようなツイートがあるんですか?」
「タイシ(ホトップス)
この世に最強罪があったら、確実に俺は死刑」
「タイシ(ホトップス)
力なき言葉に意味はない。俺に意見できるのは、俺に比肩する強さを持つものだけだ」
……とりあえず、他の人の意見が知りたい。もう受け止めきれない。
「ちなみにさくらさん、遥さんはどう思っていますか?」
「ネットはよく分からん」
遥さんは申し訳なさげに、でもばっさりと自分の仕事ではないと切り捨てた。
「Zzzzzz」
さくらさんは船を漕いでいる。立ったまま寝るとは……
「SNS担当は私だから!」
「戦闘関係は基本私だ」
「Zzzzzz」
一番最初に会った時は、SNSや戦闘が関わっていたけれどさくらさんが仕切っていたような。
「初対面の時は、さくらを出してリアクションを見るの。多分私だと迫力が足らないから!」
内心を読まれた!?
というか、遥さんならどうだろうかと思ったけど遥さんはあんまり仕切るのが好きな人ではないし、やりたがらないか。
「……ホトップスさんについて、あまり知らないのですが、どのような人なんでしょうか?」
「ホトップスさんは、4人グループで、幼馴染同士で結成したからメンバー同士仲が良いことが特徴かな」
「明るい高校生の放課後のノリを動画にして、それが受けているって感じ!Xでもリーダーのタイシさんが、印象的な言葉をよく言っているよ!」
「うん!私はそれ以上の説明はうまく出来ないかな。率直な評価が聞きたいなら、さくらに聞くのが一番だよ!」
「……人のことを評価すると、燃えやすいからな」
遥さんがしみじみと言った。
スケールは違うけれど、少し分かるかもしれない。
クラスの女子の美人度ランキングを作った太原くんは元気だろうか。
言葉のリンチを受けて、夜しか眠れなくなったよと言っていた太原くんは。
あと、さくらさんなら燃えても良いのだろうか。
「ホトップスは――私と――一緒で、ビッグマウスだけど――顔がそこそこだから――好きな人も結構いる」
「人間性が――どれだけろくでもなくても――そんな人柄が好きという人は――居るといういい例」
半ば眠っているようなさくらさんから、かなり攻めた発言が出てくる。
……
「えぇっと、賛否両論がかなりある感じの方々ということでしょうか」
全員頷いた。
「アンチも――信者も――いっぱいいるから――炎上の規模がすごい」
「まぁ、そんなわけで真剣に!これからどうするかを話し合いましょう!」
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