ダンジョンアイドルズ!の危機を生配信で救ったらバズりました。正体をばらされたくなければパーティーに入れと脅迫されました。完結済み

魚綱

第一章:配信、バズ、脅迫

ダンジョンアイドルズ!との打ち合わせ

コンコンコン。ノックを4回行う。


正直、テレビ局の面接よりも緊張している。

これから会うのは超売れっ子の芸能人の方々だ。


「はーい、どうぞ!」

中から涼やかな声が聞こえる。


「は、はい。失礼します」

扉を音がしないように丁寧に開け、入室する。


面接官(ではないけれど、気分は面接だ)お二人の目を見て一礼。

お二人?いらっしゃるのが光矢さんと宝木さんで、居ないのは……


不思議に感じながら、扉を上半身もひねって、閉め

「ばぁっ」


扉の陰から急に人が飛び出してきた。


予想していない場所からの攻撃で、「危機」である。そう本能が告げる。

足を上げ蹴りを……理性がすんでのところで止めた。


そのまま足をもつれさせ、びっくりしてコケたように振る舞う。


「あ、ごめん。驚いた?」


扉の陰に潜み、驚かしてきた風花さんがコケた僕に手を差し伸べてくれた。


この手を握ったらあとで10万円とか請求されないかという思いと、かといって差し伸べられた手を無視するのもどうなんだという思いで葛藤する。


「突然すみません、咄嗟の反応が見たくて」

心底申し訳無さそうに光矢さんが言う。


「申し訳ない。だが、これから行くダンジョンは危険な場所で、出来る限り護衛をするつもりだが、それでも不慮の事故はあるからな。護衛対象が危険な時どんな行動をするか見ておきたかったんだ」


「え、二人はそんな真面目なこと考えてたの?」

すごくびっくりしたように……とはいっても顔は変わらず無表情だが風花さんは言った。


「「「……」」」

沈黙が部屋を覆った。


とりあえず、コケた状態から正座に移行し、挨拶を行う。


「本日、ダンジョンアイドルズ!のカメラマンを担当させていただく、鬼崎と申します。よろしくお願いします」

そのままお辞儀。


「……」

何故かまた沈黙が生じた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「私は光矢愛!元アイドルです。気軽に愛って呼んでね!」

放送中に呼んだら社会的に死にそう。そう思いながらとりあえず頷く。


「宝木遥だ。元ダンサーだ。私も遥で構わない。ダンジョンでの呼び名は短いほうが良いからな」

ダンジョンでの安全性か、社会的な死でしょうか?いや、さんを付ければセーフ。多分セーフ。セーフったらセーフ。


「さくらちゃんだよ。元シンガーソングライター。実はお金持ち」

3人の性格がテレビで見たまんまでびっくりする。特に風花さん、あれ単なる演出じゃなかったんだぁ……


「カメラマンの鬼崎です。よろしくお願いします」

一応一回自己紹介したし、簡潔に。


「えーっと、今からダンジョンについておさらいしようと思うんだけど、ダンジョンについてどれくらい知ってる?」

光矢さんに問われ、昨日確認した資料を必死に思い出す。


「ダンジョンは、世界各国に突然現れ、侵略行為をしているものです。また、ダンジョンの内部には異形の存在、通称魔物が存在し、魔物を倒すと高濃度のエネルギーブロック、通称魔石がドロップします」


「うんうん、そうだね。完璧完璧」


「そして私達の目的は、ダンジョンを探索する探索者を増やすために、ダンジョンの魅力をアピールすること、だな」

宝木さんが補足を加えた。


「魔法カードプロパガンダ、発動!見目の良い女を使うことにより、なんだかんだ言ってイメージアップされる」

……この子を起用したらむしろイメージが下がらないだろうか。僕は訝しんだ。


「まぁそんな冗談は置いといて、私達は努力すれば届きそうな、死ぬ気でやったり、才能があれば抜かせそうなくらいの人物像を目指す」


思わず、光矢さんの顔を見る。

しかし、光矢さんは否定しなかった。


「そして、鬼崎くんの様子からして――行くのは3層までかな。あそこが丁度いい。光矢も宝木も私も全力を出さずあしらえる」


「「了解」」


「は、はい」

人当たりの良い光矢さんや、マジメな宝木さんがリーダーだと思っていたけれど、実は風花さん?


「3層の出現モンスターは、オークのみ。そして報告では、最大でも3体。また、戦闘音を聞きつけて、増援がきたという報告や、ユニークモンスターの報告もない。だから、安心していい。あと、1戦ごとに、5〜10分間をとり、会話を入れていく」

もしかして……風花さんて実は出来る人?


「場合によってはポロリもしよう。あ、内蔵ポロリというわけじゃないよ」

なんにせよ、やばい人かもしれない。

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