アパートとラクガキ
流石に夜に行くのもなんなので朝方に原木の家に向かう事にする穴口。
一夜明けて、 それじゃあ行こうと思った。
「・・・・・あ」
自転車を今夜のパトカーに置きぱなっしだった。
「あの野郎・・・」
先に帰ってしまうのだから手に負えない。
とりあえず電話をかけるも通じない。
「・・・・・?」
通じないとはやや可笑しい、 会う度に何かしら小遣いやタダメシをせびるような男だ。
会う機会を自分から捨てるとは考えにくい。
「もう起きてるよな?」
窓の外は既に朝日が昇っている。
「バス・・・面倒だな、 タクシー・・・歩きで良いか」
穴口は朝の陽ざしを浴びながら原木の家に向かった。
朝の爽やさを感じながら歩くのは気持ちいい。
だが夏場は勘弁願いたい。
「うん?」
原木の家はアパートである。
ボロくも無く新しくも無いアパートである。
その原木のアパートの周りにパトカーが集まっていた。
「何だ?」
原木の、 いや原木の家族が借りている部屋には
スプレーで『出ていけ』『クソガキ』『人殺し』等のラクガキが描かれ
警察官が何人も出入りしている。
群衆も集まって来ていた。
「何か有ったんですか?」
群衆の1人に尋ねる。
「自殺だってぇ」
中年女性が答える。
「自殺?」
「そう、 ここの部屋に住んでいた不良が首を吊っていたんだって」
「・・・・・」
これで取り巻きは全滅。
本格的に背筋に冷たい物が走る。
「本当に迷惑だったしせいせいしたわ」
「ほんとほんと、 鬱陶しい事この上なかった」
「死んでまで迷惑かけるなんて本当に迷惑」
おばさん方が口々に言っている。
「あのー・・・死んだ人ってそこまで嫌われていたんですか?」
「当たり前よ、 近所のおじいちゃんの家に悪戯するわ
夜中に集まって騒いだりするわ、 野良猫を殺して死体をばら撒いたりするわ
噂によると女の子を殺したとか聞いたわ」
「人殺しを!? 警察は動かなかったんですか?」
「何でもボンボンと友達で罪を揉み消したとか言ってたわ
でもそのボンボンが死んで皆から仕返しを受けていたわ」
「ボンボンが死んだ?」
「ん-? アンタもしかして記者さんかい?」
おばさんの一人の眼が光る。
「まぁ似た様なもんです」
「じゃあ色々情報教えてあげても良いけどねぇ~・・・」
チラ、 と穴口を見る。
「お心ばかりのお金は出せます」
「ん-、 いや、 それよりも頼みが有るんだぁ・・・」
にやりとおばさんは笑うのだった。
「頼み? あまり時間を取られたくは無いんですが・・・」
「いやいや、 今日の11時から30分だけで良い」
「はぁ・・・」
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