巨乳女騎士を添えて~同士討ちもあるよっ!


 俺は鱗人(ラミア)の見張りと獣人(コボルド)の見張り二人に再び転移の指輪の力を使い、自身の手だけをラミア族の見張りの背後に転送させると、ポンポンと肩を叩く、振り向いた瞬間手を戻しその様子をうかがう。


「ん? なんだ?」

「…。」

「なあ、おいって!」

「んだよ…喋ってるとバビルさんに怒られるぞ」

「いや、テメーが呼んだんだろう? おれの肩叩いたろうが」

「あ? 叩いてないわ、わけわかんないこと言ってないで見張りしろ、俺バビルさんに怒られるのだけは嫌なんだよ」

「チッ…なんなんだよ」


 見張りはそういうと元の位置に顔を戻すが、再び手だけ転送すると肩をたたく。


「……チッ、はあ…おい、おいって!」

「なんだよ、話してるとバビルさんに怒られるって言ったろ!?」

「オメーが呼んだんだろうが! マジで子供みて―なダル絡み止めろよ!」

「やってないって言ってるだろう!? お前こそ無駄に絡んでくるなよ、喧嘩したいんだったら違うヤツにしてくれ、ホント、もう、この話はこれでおしまい、なっ! もうホント怒られるから!」

「テメーのなんか諭してくる、大人な態様って感じはムカつくが…分かった、もうテメーからの呼びかけは絶対反応しねーからな、クソがッ!」

「…。」


 ペチッ、ペチンと見張りの一人に小石が当たり、心なしか笑い声も聞こえてくるような…。


「テメエエ! もう、あったま来た! 戦争じゃボケェ!!」

「な、なんだ! やめッ! おい、止めろ!! 俺の毛を毟るな! 何時間毛づくろいしてると思ってるんだ! くそっ、このっ! そんなにやりたいんだったら、やってやろうじゃないか!! このヘビ野郎!!」


 ――ゲッゲッゲ、ゲーゲッゲッゲ!!!!

 取っ組み合いの喧嘩に発展した二人の見張りを見ながら、岩場の陰で、腹がよじれるくらい笑い転げる。


「バッカでェ、アイツら、ちょっと火種を与えれば簡単に仲たがいしてくれる!」

「おい、最低だな」

「ゲー! 意味ないねえwそいつ殴っても意味ないねえw ゲーゲッゲッゲ!!」


 そうこうしていると、見張りたちの後ろに大きな影が近づき、二人をひょいと、持ち上げる。


「あんた達ィ、見張りはどうしたのよ、見張りはァ」

「あ、あああ、バビルさん…。 す、すみません、このヘビ野郎がいちゃもん付けて来るもんですから…。」

「おっ、おいっ! ち、違うんスよ、コイツが変な絡み方してくっから…。」

「ふーん、そんなことで揉めちゃってェ、私のオシオキが欲しいのねェん」

「ヒッ、ち、違います、それだけは! それだけは勘弁してください! こいつにも言って聞かせるんで!」


 首根っこを掴まれた状態で耳を倒し、尻尾を腹側に丸めて怯えるその姿は、魔族というより、普通の子犬のように見えた。


「いいや、駄目ねェ、悪い子にはオシオキ…耳舐めの刑が必要ねェん」


 そう言い、イノシシの頭で口を開き、ぶっとく、涎とデキモノにまみれた、長い舌をぐるぐると回しながら二人の耳に近づけていく。


「「ぎゃああああああ!!」」


 その時だった、船の方から、今度はコウモリの獣人(ミニュアデス族)と獣人(ケンタウロス族)の乱闘が始まり、それを見ていた周りの魔族たちも次々と、周囲に因縁を付け、殴り合いの喧嘩をし始め、もはや収拾のつかない状態となっていた。

 もちろん。

 俺がやったんだが。


「痛った! テメー、今俺の尻尾踏んだろ!」

「キャ! どさくさに紛れて、私の腕輪取ったの誰!?」

「オメー、今わざと俺の船から運んでた荷物落としたろ!!」

「やったな! おらっ!! これでもくらえ!」

「誰だ! 俺の悪口言ったやつ!!」

「俺もだ! 俺も言われたぞ!! オメーだろ! つーか前から気に食わなかったんだよ、ムカつく顔しやがって!」

「飲み会の時に一人だけ、会計でポイントカード使ってんじゃねーよ!! 割り勘だったろうが!」


 ゲーヘッヘッヘ!!ゲーーーーヘッヘッヘ!!!!

 キャッキャッ!キャッキャッキャ!!

 乱闘を見て笑い転げる俺とルウを、軽蔑の目で見下ろす乳山。なんでそんな目で見る。

 バビルが急いで事態の収拾を計ろうと駆けつけ、諭すが、誰一人として聞く耳を持たない。

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