巨乳女騎士を添えて~最後の作戦だよっ!
「な、何を言っている! 何とかしろ!! ここまできて諦めるなど到底出来ないぞ! おい、その兵士たちを何とか突破できないか!? 四天王を倒した私たちだ、今の私たちだったら取るにタラレバ!」
「ちょっと無理かもって思ってんじゃねーか」
「冷静になって考えてみると、私の戦闘力では一人すら倒せるか怪しい」
「頑張れよ騎士…それに倒せたとしてもだ、門は魔王の魔法で封鎖されちまった…どっちにしろ解呪するのは厳しいだろーな、魔物はアイテムがねーとそういったもんはからっきしだしよ…アイテムマニアと自称する俺だが、そんなもんは今持ち合わせてない…そういやお前人間だな! 魔法とか使えたりしねーのか!?」
「いや、私もそっち系は理論を教えてもらったが全く使えない、使えないと興味も湧かず、以降授業は右から左だったな」
「ならッ! もうッ! 無理だ!!」
頭を抱えて地面に蹲る。
ああ〜土の匂いがする〜俺ももう直ぐコイツらの仲間入りか〜。
乳山が喧しく俺の蹲った体を引っ張りながら何かを叫んでいる、いや、ほんとに、もう無理なんだって、放っておいてくれ、だいたい今までさんざん作戦を立ててきたが、この状況にまでなっちまったらお終いだ、外に出るには出口の門がは三つ、この中のどれかから、あるいはその他、壁を壊して脱出する、だがそれも無理だ、この城は魔王の魔法によって耐久度がめちゃくちゃだ、薄い硝子だと思ったら五百ミリの鉄板より堅いなんてざらだ、この中庭にも空のようにみえる天井があるが、やはりそこもでれない、出れるわけがない、両側の砦にはもういけない、本丸の出口は論外、ほらな? もう無理だろ? うるっせ―な、ギャンギャンギャンギャン喚くんじゃねーよ! やめっ、やめろ! 土を投げつけるのはやめろっ! いやもう、やめっ。
「やめろおおおお! このバカがよお!! そうだ、さっきの事は謝ってヴォックスに頼みに行こう、オメーみてーに喚くだけで助かると思ってる、乳のデカさだけが取り柄のあんぽんたんがいない牢屋は最高だろうなァ! 乳触らせろ! この恩知らずが! うあああああ!!」
言いたいことだけを泣き叫び再び情けなく蹲る。
乳山の引きぎみの目が痛い。少し経ち、乳山は俺の傍に腰を下ろし、中庭の夜空にしか思えない天井を見上げると言いにくそうに口を、重々しく開き話始める。
「…………た……頼む、確かに何とかしろ何とかしろと今ままでお前ばかり頼りにしてきたが、実際、ここまで色んな困難を私達は乗り越えてきたじゃないか、そりゃあ私達は会わないだろう、お前は私が嫌いだろうし、私もお前は好かない、だが…もう少しだ、もう少しで生還できるんだ、生きて帰れる…だから、私に力を貸して欲しい」
いつの間にかこちらを向いて話していた乳山は、俺に手を差し伸べると真剣な眼差しで見つめてくる、瞳はひどく澄んでおり、吸い込まれそうになる何処か遠くの地を思わせる不思議な魅力を備えていた。
俺はその手に自信の手を持ってくると、――勢いよく弾いた。
「嫌だね」
「なっ!?」
「今度は泣き落としか、白々しいにも程があるぜ、そんな幼稚な説得じゃあ俺は動かねーぞ」
「おま、お前ェ!! 私が恥を偲んで頼み込んでいるというのに! というか、契約は何処に行ったんだ! 元々私をここから出すって契約だろう!?」
「はッ! もう状況が違うんだよ、あれは<お前>を外に出すって契約だろう、俺の分は入ってねえ外に出たいんだったら追加の報酬を寄越せ」
「なんだそのふざけた理屈は!」
「そもそも俺の作戦はうまくいってるんだよ! お前が余計なことをするせいで俺まで逃げる羽目になったんだろうが!! 俺の分も払うのは当たり前だろう!!」
「何を言っている! お前こそイチイチ駄目だ何だと落ち込んで、私がいなかったらそれこそ終わり、そもそも四天王にも勝てていないだろう!?」
「はあーそうかい、そうかい! ならこの先は一人で行くんだな! 優秀な乳山さんならお一人でも出られるんですよね!? ほらさっさと行けよ!!」
「私は乳山じゃない!!!!」
はあはあはあ。
俺たちは無駄な言い争いし、お互いが息の切れるまで罵り合った。
誰もいない美しく剪定された草木に、煉瓦造りの花壇とそれを避けるように何本にも分岐しカーブした石畳、噴水、東屋、枯山水、和洋折衷甚だしく入り乱れる庭には世界中の花々が植えられており、魔王がこの世界を支配していると感じさせるのには十分だった。
俺はこの中庭がきらいだ。
調整され、管理され、支配され、他にタネを運ぶことをしなくなり、ただ美しく咲く花々は意義や意味を考える機会を俺に求めてきやがる。
めんどくせェ。
「乳山」
「だから私は――」
「ひとつだけ、ひとつだけ生き残る方法がある」
「言ってみろ」
「それは――」
それは魔族にとっては世界に逆らうも同然、もっての外、<作戦その他>
「魔王を出し抜く」
俺の声は中庭に響き、その雰囲気を少し変えた、そんな気がした。
いつも通り、乳山に作戦を話すと、どうだ? と返答を待つ。少し考えこんでいた顔を上げる。
「うむ、なるほど」
「乗るか?」
「相変わらず最低な作戦だ」
「ちっ」
「…だがお前の作戦は上手く行く、そうだな?」
「…………。」
俺は蹲っていた地面から立ち上がりこの中庭から出る。
「いやそれは分からん」
「おい!!」
それが例え苦しい選択だとしても。
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