魔王軍のお荷物〈最弱クズ魔族は〉巨乳女騎士を体目的で助けたら裏切ったと勘違いされ、難攻不落の魔王城から脱出するために〈魔王様を出し抜くようです〉
巨乳女騎士を添えて~作戦は中ボスを倒すこと!?もあるよっ!
巨乳女騎士を添えて~作戦は中ボスを倒すこと!?もあるよっ!
三階、回廊前の隠し通路。
「あああああああああ!! もう無理だ!! もうここからは出られねー! おしまいだ、地獄ゥ」
「おい、ふざけるなよ! 契約と違うぞ! 私を外へ出してくれるんだろう!?」
くそっ! この、元はといえばオメーがいい加減なタックルなんてかますからだろうが!
乳山の無責任な発言にイライラしつつ、それよりも、俺と人間がグルだと勘違いされたことの方が問題だ。あいつら今度会ったら只じゃ置かねェ。
「ああー! お前なんかかまわなきゃ良かった、お前一人を逃がすだけのお手軽ミッションだったはずなのに、失敗してもお前を裏切ればいいやくらいに思ってたのに!! 最悪だ、捕まれば俺も死刑…つうかその場で殺されちまう」
「ヤッパリそんなこと思ってたんだな! 返せ! 私のペンダント返せ!! というか何とかしろ! あ、そ、そうだ! お前の能力を使おう! そうすればさっきの兵士達も関係ない、そのまま正面突破出来るじゃないか!」
「…無理だ」
「何故だ!記憶を全部奪えば私たちが何をしようが、見つかる心配はないじゃないか!!」
「だから、俺の能力はそんな便利な能力じゃない!」
「だったな何だっていうんだ」
「俺の能力はふれこみだけ聞けば見栄えはいいが、その実、制限だらけだ。一度に喰えるのは一人だけ、それに喰える記憶は全部で一時間、喰った時間分次の発動にクールタイムが必要だ、つまり、一番先頭のやつを喰って、次の奴を喰うまでに殺されて終わり、それと――」
「なんだその使えないゴミスキルは!!」
「俺の唯一のアイデンティティになんてこと言いやがんだ!」
コイツッ! ホントにここに捨てていこうか。
いや、そんなことを言っていても仕方がない、考えろ、もはや乳山だけの問題じゃない、俺の問題でもある、考えろ…考えろ…。
「あった……! 一つだけあった出られる方法が!」
「なにッ!? よしいいぞ、それでいこう!!」
「よく聞けよ、もうここからは…この砦からは出られない、けどな、逆側の砦に行ければ出られる…かもしれねェ」
「ぎゃ、逆側の砦ってお前!」
「あぁギャンブルだが、もうそれしか手はねぇ」
「それしか手はないんだな?」
「ああ」
「本当だろうな? もう一回よく考えてみろ」
「あ?」
「ほら深呼吸して、スーーーハァーどうだ? なにも思いつかないか?」
「…………思いつかない」
「ああ!! ガッッテム!! なあ、ホントにその方法しかないのか!?」
「いや、俺だってヤダよ!? だけど考えてもこれしか思い浮かばないんだもん、しようがねーだろ! お前は他に思いつくのかよ!」
「いやッ……思いつかないけどさぁ!? けど…はあ、やるしかないのか」
俺はコクリとうなずいた。
「じゃあ作戦を話すぞ」
3
「いや、やはり無理だ」
「無理じゃねェ」
「無理だ」
「無理じゃねぇ!」
「無理だ!」
「ムリじゃねぇ!」
「ム・リ・だ!!」
「ねぇ!! なんでそんなに否定するの!? こっちだってそんな言われたら無理かもって気になってきちゃうじゃん!!!!」
「す、すまん……おい、泣いてるのか?」
「泣いてねぇよ!!」
俺たちは一階の管理室、ではなく、四階の大きな門の前へ来ていた。
そこは他の階とは作りが全く異なり、複雑に入り組んでいた回廊はただの一本道に、その先には巨大な門に複雑な作りの石柱が、何ともまがまがしい雰囲気を醸し出していた。
「ほ、ホントにやるのか? その<モンガイ>? って奴を、私たち二人で倒せると本気で思っているのか?」
何故この四階だけがそんな作りになっているのか。それは砦番と呼ばれる、この砦を守護する特別な任務を与えられた魔族が待ち構えているからで、この階の全ては、そいつの為の部屋になっているというわけだ。
まあ、その砦番を今から俺たちは出し抜こうとしているんだが…。
堕落のモンガイ。
魔王城最先端に位置するこの砦、別名<不帰ノ大砦>を守護するのは剛腕剛健の怪力神父、堕落のモンガイ、知恵や戦略ってもんはないが、とにかくキレさせたらヤベーやつで、癇癪を起こしてこの砦の床を腕の一振りで、四階から一階までぶち抜いたこともあるキレ症プリーストだ。
何でそんなことを俺が知っているか、まあ、噂で聞いたと答えれば納得してしまいそうな破天荒極まりない文脈だが、なんというか、俺はこの神父と知り合いだったりする、そんで、この事件は…俺がちょこっと、ほんのちょっぴり関わってたりする。
そんなわけで知り合いのモンガイの爺さんなら、おそらく出し抜けると、その辺は込々でこの作戦になったわけだ。
「だから倒す必要はねえ、出し抜けばいい、お前は駆け抜けるだけ、簡単だろ?」
「うーーーーん…うむ、今回はお前が囮だもんな、私はその隙に部屋を一気に駆け抜け本丸へと入る、なかなかいい作戦じゃないか! うむ、実にいい、私に危害が及ばなさそうなところが特にイイ」
…コイツにはいろいろ言いてーとこだが、そう言っておけばこの作戦に乗ると思ったからそう言っただけだ。いざとなればオメーを囮にして俺だけが逃げる、これがプランBだ。
ともあれ、作戦というのは、この砦の逆側の砦の門から出るというものだ、<逆側>というのに違和感を感じるだろうが、それはこの城の作りによるものだ、この城はざっくりといえばコの字型に作られている、コの両端が砦、それをつなぐように本丸があり、出口は砦と本丸に一つずつの計三つ。この砦からは既に警戒され、増援も呼ばれるだろうから出るのは難しい、本丸の出入り口からも…察しの通りあそこは特に厳重に警備されていて出るのは難しい、となれば、ここから逆、に位置する砦の門を突破するしか出る方法はないという結論だ。リスクはある、だが当然無警戒の砦から出るという勝機も勝算も十分にある。
「よし、開くぞ」
「ちょっ、ちょっと待て、まだ心の準備が、おいッ!」
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