第65話 4ー9 竜の過ち
我は、
名は無い。
我の親は居たが、そもそも竜とは、卵を産んで龍脈の傍に放置するし、親も名付けたりはせんのじゃ。
我ら
じゃが、小さき者はすぐに
千年以上の寿命を持つハイエルフとて、我らにすればほんの一瞬を生きる者に過ぎないのじゃ。
私も
我らもこの歳になると子作りはせぬが、それでも時折
前回、訪れてから数百年は
我がこれほど気にかけて訪問するのは、我の
竜は
我も生まれて数万年を経た竜じゃが、災いを避けるために、二度ほど
我ら
単純に言えば、活動期は小さき者どもの昼間、静養期は夜間のようなものじゃ。
我らが静養期を十年とするには訳がある。
瘴気の発生じゃ。
周囲に多少の瘴気が有ろうと我らの動きを妨げる理由にはならぬのじゃが、大量の瘴気に長期間
五~六千年前に未だ千歳に至らぬ若い竜が瘴気の中で長く眠りこけ、瘴気に侵されたことがあり、元々は雪のような白い竜であったものが、どす黒く汚れた邪竜と化してしまったのじゃ。
僅かに千歳など、小さき者どもの年齢で言えば稚児に等しき存在故、我ら竜に対してはさほどの力は持たぬが、若き竜は、小さき者どもの集落を襲って大きな被害を与えたのじゃ。
我らに被害が有ったわけでは無いのじゃが、このような場合は、瘴気に侵された邪竜は排除するのが我ら竜の掟なのじゃ。
哀れな話ではあるのじゃが、我を含む長老格の二匹が
邪竜になるとその能力は倍以上に跳ね上がることから、並みの竜では中々に討伐もできぬのじゃ。
そのために、念のため、我ともう一匹が赴いたのじゃが、結果から言えば、共に赴いた我よりも若い
じゃが、その討伐された邪竜は、数千年を経た普通の竜十匹が束になってかかってようやく討伐が可能なぐらいの戦力が有ったのじゃ。
それらのものに任せれば十匹でかかっても半数以上がしばらく動けぬほどの大怪我を負ったに相違ない。
邪竜とはそれほどに力を持つモノなのじゃだ。
我の
瘴気に侵されぬように10年程の期間を目途に活動を始めねばならぬ習わしであったにもかかわらず、どうやら我の
もし活動を始めて居れば、周囲の瘴気の存在に気づき、
この様子では、百年かそこらずぼらをしていたのじゃろうと思う。
我ら
従って、肉を喰らう際には間違いなく起きていたのじゃろうが、それからずっと寝ているのではあるまいか?
多少の瘴気があっても影響も残らずに活動できるのじゃが、
今、この
そうして長老は、この
早いうちに気づいて良かったが、透き通るような銀青職だった
何とか瘴気溢れる大洞窟から
生憎と
だが、中途半端な今の段階でさえ我の
有るとすれば天界の神達の介入じゃが、彼らは余程のことが起きなければ対応しないし、対応したにしても遅いのじゃ。
若い竜が、邪竜に変わって小さき者どもに甚大な被害を与えても神が下界に手を出すことはしなかった。
じゃから、前回の若い白竜が邪竜化した際には、我らが出張ってその邪竜の討伐を為したのじゃが・・・・。
此度は困ったものよのぉ。
我の
それが倍以上に強化されたとなれば、残った
仮にそのような戦いが始まれば下界は滅ぶじゃろうな。
何とかせねばならぬが、その方法が・・・・。
我ら
伝承に曰く、
<小さき者どもに聖女あり、聖女、邪竜になりかけの竜を浄化し、世界を救う>
小さき者どもに
我を含む、古代竜は小さき者どもとの意思疎通が可能な故、三匹が世界に散らばってその聖女らしきものを探すことにした。
一匹は念のための我の
我らが住む大陸の高峰から三方に散らばって、高所より小さき者どもの意識を探ることにしたのじゃ。
我らが急に小さき者どもの前に現れては、小さき者どもが間違いなく我らの襲撃とみて襲い掛かって来よう。
小さき者どもが無数に襲い来たにしても、我らに害をなすとは思えぬが、混乱の中で聖女の能力を有する者が害されてはならぬ。
それゆえの高空からの捜索となるのじゃが、歯がゆいのぉ・・・・。
◇◇◇◇
ヴィオラですよぉ。
お元気でございましたか?
ヴィオラは相変わらず元気です。
私(ヴィオラ)が、こちらに生まれて以来、病気などしたことが有りません。
但し、一度だけ、三歳の折でしたかねぇ。
急激なレベルアップの為にブラックアウトしたことがございましたが、それ以後は少々の魔法を使っても全く支障はございません。
ところで、今朝から何となく南の方角が気になっています。
これは何かある前兆なのかもしれません。
ライヒベルゼン王国の南方には多くの国がありますけれど、それらの国とは友好な関係を築いていると聞いていますので、少なくとも戦争を仕掛けて来るような危ない国は無いと思います。
その向こうには海を隔てて大きな大陸が有るようですが、実は暗黒大陸と呼ばれる人跡未踏の地なのだそうです。
で、飽くまで私の勘ですけれど陸地を
何となく静かな脅威が空を飛んで、ゆっくりと近づいているような気がするんです。
昨日は、間違いなくそんな気配を感じませんでした。
でも、今日は朝から何となくぼんやりと感じ始め、午後から夕刻にかけては間違いなくその思いが強くなりつつあるんです。
敵意は無いと思うのです。
ですから静かな脅威なのですけれど、この存在を怒らせたら世界の破滅が待っているような気がするんです。
ですから、普段なら何か異変を感じ取ったならすぐに確認しに行くのですけれど、今日は正直なところ行きたくありません。
でも、ライヒベルゼン王国にこの脅威が及ぶとしたなら、出ざるを得ませんよね。
まして、王都よりも私の故郷であるロデアルの方が南なんです。
ですからロデアルを守るためなら絶対に出ざるを得ないですよね。
不安ですけれど、今夜はひとまず寝ます。
そうして、明日の朝、この静かな脅威が、なおもロデアルに近づきそうなら悲壮な決意を持って出撃します。
留守番は式神に任せることになりますね。
なんだかハリネズミの大型戦車に素手で立ち向かう兵士のような気分です。
絶対に勝ち目はありません。
でもここで逃げたらダメなような気がするんです。
でも、でも、出る前には一応神様にもご相談しましょう。
もしかすると、神様から何か良い方法を教えていただけるかもしれないんです。
神様って、下界のことについては、対応が遅いんですよね。
前回の勇者召喚騒ぎの際に実感しました。
勇者召喚が禁忌とされているにも関わらず、召喚が実行されて8カ月はお
きっと前世の若い娘なら「アリエナ~イ‼」って叫んだと思いますよ。
でも色々
だから即座に動けるなら、私(ヴィオラ)に任せるって・・・・。
ヤッパリ、おかしいですよね。
でも仕方ないから、私(ヴィオラ)が動いて、勝手に神様の使徒を演じて関係者を処罰しちゃいましたけれど・・・。
私(ヴィオラ)、裁判官でも閻魔大王でもないですよ。
その夜、何となく不安で寝付けなかったのですけれど、そのうちに寝入ってしまいました。
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11月2日、一部の字句修正を行いました。
By @Sakura-shougen
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