第41話 3ー27 夏休み その五
ヴィオラですよぉ。
前回は、国王様の側室のアマーリア様の企ての概要をご披露したわけですけれど、この情報は私(ヴィオラ)の
でも、生憎とこの情報をもとにアマーリア様の罪を暴露することは簡単にはできません。
そもそもアカシックレコードに触れることのできる存在なんて、ルテナ以外にはこの地上にはおそらくいないと思うのですよ。
ですから、アカシックレコードの情報で真実ですと訴えても誰も信じてはくれないでしょう。
むしろ、虚言を吐いて王族を侮辱したとして投獄されるのが普通でしょうね。
それと、仮にそれが真実だと知ればその有用性に気づいた権力者の誰もがそれを利用しようとしますから、教えることそのものがとても危険なのです。
側室アマーリア様の企てはある意味で
因みに王都で計画を実行しないのは、「草」の判断ですが、警護担当の「草」を含めて王族の警戒が強い王都では刺客などの「草」も非常に動きづらい上に、事後に全てが露見する恐れがあるから動けないのです。
「草」の極一部に、魔力等の残滓から過去の出来事を視ることのできる異能力者がいるようで、事後二時間程度の時間を稼げないと彼らの悪事や犯行そのものがばれることになるのです。
従って、如何にアマーリア様の要請であっても、簡単には動けなかったのです。
今回はその異能力者が王都に居残ることから安心して暗殺ができるということなのです。
但し、ロデアルに向かう途中での襲撃は、エミリア様の警護についている人数に比して、集められる襲撃側の人員が少ないことから断念しています。
仮に襲撃を断行するならば、警護についている「草」を含めて全ての目撃者を消す必要があるので、少なくとも腕利き12名ほどが必要とされるのでした。
どうやらその人員が揃うのは、エミリア王女様のロデアル到着から5日後の予定のようです。
いま現在は、ロデアル領内に入っている刺客が6名だけですが、正体の知れなかった2名の「草」もアカシック・レコードから顔と能力が分かりました。
それと注意すべきは、少しでも隙を見せれば単独でも王女の命を狙いそうな者が今後加わる予定の刺客の中に一人いるのです。
目立ちたがり屋な性格のブロシオンという男で、王都でも種々の問題を引き起こしている危ない奴なので、第五部としても彼を王都には配置できず、専ら僻地に追いやられている男なのです。
但し、刺客としての腕は「草」の中でもピカ一と称されており、エミリア王女のロデアル行きが決まってから、急ぎ第五部班長がツナギをつけてロデアルに呼び寄せている最中なのです。
従って、ブロシオンというこの腕利きの男がロデアルに入るまでは、刺客の「草」連中も動かない可能性が大ですね。
いずれにせよ、彼らに私(ヴィオラ)の大好きなロデアル領内で好き勝手をさせるわけには行きません。
今先行して入っている6名の所在も人定も済んでいますし、センサーで常にその動向を把握していますから、いざとなればすぐに始末するつもりでいます。
但し、私(ヴィオラ)が動くのは、全員がロデアル領内に揃ってからか、若しくは少なくともブロシオンがロデアルに入るまで待つことにします。
全員が揃うかもしくはブロシオンがロデアルに足を踏み入れた時点で、全員を消すことにしています。
目立つつもりは毛頭ありませんが、表に立つのは、マリエッタという二十代半ばの女性です。
ボンキュッボンのお姉ちゃんはとても目立ちますから、今回は極々控えめなスタイルにしましたよ。
でも足長ですし、モデル体型なのかな。
赤髪の長髪が似合うとても素敵なお姉様なんです。
刺客12名については殲滅が決定事項です。
一人とて逃すつもりはありません。
人の命を狙うなら、元より自らの死は覚悟の上の話でしょうし、生かしておいても世のため人のためにはなりません。
更には、「草」第五部の班長であるロブレヒトにも王族暗殺という大罪に加担した罪を償ってもらいましょう。
もう一人、つなぎ役を務めたアマーリア様の侍従長をしているディートヘルムも同じく罪を償ってもらわねばなりませんよね。
更には首謀者であるアマーリア様にも当然責任を取っていただきましょう。
ロブレヒトとディートヘルムについては、
その首二つをアマーリア様の寝所に放り込んでおきましょう。
アマーリア様については、今後とも悪だくみを働く恐れが大ですので、早目に舞台からご退場していただく方向で、徐々に効いてくる検出不能な毒を体内にぶち込む予定です。
おおよその
本当の首謀者なわけですから、首を撥ねても良いかと思うのですけれど、現役の国王の側室が首を撥ねられるとなれば流石に色々と大きな問題になってしまいます。
無駄に騒ぎを大きくはしたくありませんから、このような手法を取りました。
こうした作業の間、私はロデアルの我が家に居て、日中のほとんどはエミリア王女様とご一緒ですし、夜もきちんと私の分身がベッドでお休みして完全なアリバイを作る予定なのです。
決行の時は、ロデアルに私が到着してから6日目の早朝になりました。
12人目の刺客、ブロシオンがヴァニスヒル郊外のアジトに到着したのです。
このアジトは、十年以上も昔に第五部が設置した秘密のアジトで、表面上は行商を装っている中年の男の家ですね。
ブロシオンが、その家の玄関を入ったとたんに、私の発動したエアーカッターが屋敷の中を無数に吹き荒れました。
12名のうち3名は手練れだったのでしょうか、不意打ちにもかかわらず第一波を防ぎあるいは躱しましたけれど、続く第二波で傷つき、第三波で首を撥ねられてお亡くなりになりました。
うん、最近は人死ににも随分と淡々とし、鈍感になってしまいましたね。
お亡くなりになった彼らが刺客だったはずですけれど、私の方がよほど凶悪な刺客になっちゃいました。
でもここでそうした感慨に
全ての遺体をすぐに私の亜空間倉庫に回収しました。
後ほど山中の地下深くにでも埋めるつもりでいます。
大量の血のりがアジト内に残されていますが、そちらは放置です。
クリーンをかければきれいにはなりますけれど、此処を利用した者は他にもいるはずですから、その者に対する警告にもなるでしょう。
「ヒトの領地で何しとんじゃ、ワレェ!」と叫びたいところなんですよ。
でも、これだけでは済まされません。
瞬時に王都へ転移して、起きたばかりで寝ぼけ眼のロブレヒトの首を切り落とし、再度転移してアマーリア様の住まう離宮の執務室にて、姿見の前で衣装を改めていたディートヘルムの首も跳ねました。
都合14名の者を殺したわけですが、時間にして多分15~16秒の間の事です。
そうして、闇魔法で一時的に昏睡させたアマーリア様の枕元にロブレヒトとディートヘルムの首を並べて置きました。
後半時ほどもすれば、アマーリア様付きの女官が起こしに来るでしょうから、きっと大騒ぎになるでしょうね。
でも、私(ヴィオラ)が気にすることではありません。
あ、生首を置いてきた際に、アマーリア様の胃袋の中にしっかりと薬も置いてきましたよ。
無味無臭ですから胃袋に入っても何も感じないはずです。
胃酸で溶けて薬効成分が体内に吸収されれば、徐々に内臓の機能を弱らせて行きます。
アマーリア様が非常に頑健だとしても
夏休みが終わって、私(ヴィオラ)が王都に戻る頃には間違いなく訃報が届いているのでしょうね。
その節は、国民として、また、国王派の貴族の子女として、王族の不慮の死に対して哀悼の意を表し、喪に服さなければなりません。
きっと、私(ヴィオラ)はそれまでの凶行など全く知りませんという風情で顔を伏せ、黒の衣装をまとって一月を過ごすことになるのでしょう。
私(ヴィオラ)って、段々悪女じみて来たような気がします。
ルテナにそんな風な気がしないですかと
『うーん、少しは悪くなったかなぁ?
でも、ベンデルトン男爵とディールセン侯爵を暗殺した時と余り変わっていないような気がするよ。
ヴィオラは、きちんと善悪の区別をつけているから大丈夫。
もしも狂気に走るようなら、その前に私が注意してあげる。』
うーん、あれは確かヴェイツ・エルグラードでの襲撃に関しての後始末でしたね。
私がまだ四歳の折の話です。
そうですねぇ。
あの時は、送られてきた刺客を隣接する領内で無慈悲に殺し、人気のない場所に埋めました。
その上で二つの襲撃とお父様の失脚を企てたベンデルトン男爵とディールセン侯爵を人知れず暗殺したのでした。
二人の貴族の死は、病死として片づけられましたけれど、その実私が二人の心臓を物理的に止めたのです。
そうか・・・。
四歳の頃から人殺しに手を染めているから不感症になっちゃったのかな?
仕方がないこととはいえ、チョット気落ちしちゃいますよね。
でも、めげずに私(ヴィオラ)は
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