第7話 2-4 アカシックレコード
翌日、目覚めが遅かった
どちらかというと朝食と昼食を合わせていただいたような感じでしょうか。
そうしてお父様と言えば、昨日来より、事件の後始末に追われています。
配下に任せても良いのでしょうけれど、自ら陣頭指揮に立たれて、事件の解明に努めておられるご様子なのです。
82名もの
ましてや騎士や聖騎士もいる中での襲撃です。
背後に何者かの
私が凍てつかせたことにより捕えられた者たちで大多数の者は簡単に口を割りましたが、4名の者だけは一切を黙秘しているのです。
因みに他の者の証言ではその4名が今回の事件を起こした
ロデアル周辺の他の貴族の領地の出身者が多いようですが、かなり遠隔地の者もいることから、用意周到に計画されたものと推測されています。
ところで、ヴィオラ(私)のレベルアップに伴い、ルテナもレベルアップしたようです。
元々、ルテナは、アカシックレコードにアクセスしてその情報を閲覧できたのですけれど、そのアクセス権限がより広がったことから多くの情報を入手できるようになったのです。
ヴィオラ(私)は、ルテナに頼んで今回の襲撃事件の背後関係を調べてもらいました。
おそらく今回のレベルアップ前ならばわからなかったような情報も見られるようになったので、ルテナが背後関係を突き止めてくれました。
尤も、簡単に口でお話しできるような作業量ではなさそうです。
膨大な情報の中から関連する情報を選び出しそれらを結びつけることで、初めて生きた情報となるのです。
例えば無作為に開いた索引の無い百科事典の中から特定の情報を引き出すようなものですから、ヴィオラ(私)ならばすぐに作業を放棄してしまいそうです。
それを短い時間で整理し、情報にまとめられるルテナの基礎能力がとても高いのでしょうね。
ヴィオラ(私)は、とても優秀な
で、そのルテナが半日かけて調べてくれた結果では、お父様を敵視している貴族達の企みなんだそうです。
破落戸の実働部隊の指揮を執っていたのは、クーロン・ドゥ・ド・ヴァル・ベンデルトン男爵の騎士であったヴァレンツ・コールマンで、その配下の騎士3名が中核をなしているようです。
因みに彼らは一切を黙秘しています。
彼らは騎士と言いながらも、男爵の秘密部隊の役割を担う一員であるために普段は表面に出て来ない騎士達なのです。
従って、調べても余程のことが無ければ、ヴァレンツたちの背後にいるベンデルトン男爵の名は出てきません。
但し、ヴァレンツ・コールマンの生まれ育った地はベンデルトン男爵の領内に在るダゴスロフという寒村であり、そこには年老いた母親が居ますし、村の者たちで40歳を超える者は、ヴァレンツの顔を見て十代半ばまで村に居たヴァレンツを思い出すでしょう。
そうして、ベンデルトン男爵の背後にはディールセン侯爵の名があるそうです。
お父様は、王家を盛り立てる国王派と呼ばれる貴族の一大派閥に属します。
一方で、ディールセン侯爵は、王弟派と呼ばれる反国王派のフィルダス公爵の重鎮なのです。
今回のヴェイツ・エルグラードの襲撃事件は、フィルダス公爵の知るところではないのですけれど、ディールセン侯爵が策謀を巡らし、ベンデルトン男爵が手の者を使って引き起こした事件なのです。
仮に、ヴァレンツの身元が分かっても、ベンデルトン男爵は配下を切り捨てて、知らぬ存ぜぬを決め込むのでしょう。
更にその背後にいるフィルダス公爵には間違っても辿り着けないはずです。
彼らが狙ったのはお父様の失脚でした。
お父様は国王派の重鎮の一人なのです。
お母様と娘二人を人質にして、無理難題を吹っ掛けるのが取り敢えずの目的なのですが、
計画そのものが
どうやって
事件が起きた日から数えて三日目、ようやくお父様と御一緒に夕食を食べる機会がございました。
一応のご報告は、お母様が
一応きちんと説明がつくようにお答えしたつもりですけれど、お父様に対しても話せないことはございます。
神々の加護や私の
それでも索敵、氷結魔法、治癒魔法、空間魔法については、既に知られていますので、それらの魔法が使えることはお知らせしましたし、そのほか尋ねられるままに、初級程度なら他の魔法も使えることは申し上げたのです。
但し、それらの魔法であっても上級の魔法を使えることは
一応、ヴィオラ(私)の魔法の能力の高さについて
但し、お母様が申されたように、ヴィオラ(私)の判断で魔法を使わないようにと言われたのです。
残念ながら四歳児でしかないヴィオラ(私)を信用していただけるには、もう少し時間をおかねばならないようです。
一方で、お母様は緊急の場合を除いてと申されたはずなのに、お父様の言いつけにはその例外がありません。
ヴィオラ(私)は、その旨を申し上げて、お父様から例外条項を何とか勝ち取りました。
ヴィオラ(私)の命に危険がある場合、若しくはお父様、お母様、お兄様、お姉さまの命に危険がある場合については緊急避難として最小限の魔法の使用を認めていただきました。
本当は、伯爵家に仕えるメイドや執事たちに危険が迫っている時、領民に命の危険がある時にも制限を外していただきたかったのですが、残念ながらお許しが出ませんでした。
そのような場合には、魔法を発動する前に、予め、お父様かお母様の了解を得なければなりませんし、お二人が身近に居ない場合は執事長、メイド長又は騎士の隊長に許しをもらいなさいと言われました。
そうしていずれの場合でもヴィオラ(私)が魔法を使ったと外部に気づかれないようにすることが条件として付けられました。
今回のヴェイツ・エルグラードでの事件で、襲撃者が捕らえられ、お味方の負傷者が命に係わる大怪我を無事に切り抜けられたのは神々の思し召しによる奇跡と称して公的には誤魔化しています。
さもなければ、お母様やお姉さま、或いはヴィオラ(私)が
幸いなことに、私が魔法を発動したことは、お母様、お母様付きのカテリナ、お姉さまの三人しか知らないことですので、そのまま教会で起きた
余計なこととは思いながらも、お父様に今回の事件の背後関係をお聞きしました。
お父様はチョットびっくりした表情を見せましたが、一応反国王派の企みの可能性もあると認められました。
勿論、お父様はそんなことを簡単にお話しするような方では無いのですよ。
でも、ヴィオラ(私)から、お父様若しくはそのお仲間に反感を抱く者の仕業とは考えられませんかと水を向けた結果、渋々ながら申されたのです。
それで、
我が伯爵家に
ルテナの情報によれば、現実に、クーロン・ドゥ・ド・ヴァル・ベンデルトン男爵の手の者で暗殺に特化した三名が既に隣の領地に潜んでいるのです。
そうして企みの第二弾として、本日、お父様に対する暗殺指令がベンデルトン男爵の手元を離れ、隣の領地に向かっている最中なのです。
お父様は苦笑いされながら言いました。
「仮に、あくまで、仮にだが、第三者から見て絶対に私や私の家族が関与していないということが明らかな状況であるならば、そのようなことが起きても誰の仕業かはわかるまいな。
だが、私は少なくともヴィオラにそのようなことに手を染めては貰いたくないな。」
お父様はそう申されましたけれど、
早速に、過激なヴィオラ(私)は、今夜にでも事件の後始末にかかるつもりなのです。
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