第二章 幼少期編

第4話 2ー1 三歳のヴィオラ

 ヴィオラ(私)は、三歳になりました。

 魔力は初期値の96倍を超えています。


 毎日寝る前に魔力の開放を継続していたおかげですね。

 因みに初期値が王宮魔術師の最低クラス程度でしたからね。


 その96倍を超えている今ならば、国内は無論のこと、魔力量で私より上位のヒト族はいません。

 ただこれほど魔力量が大きくなると、そのままオーラを放置すれば周囲に大きな威圧を与えてしまうので、隠ぺいの第二の力で、オーラを隠しています。


 そうしないと私の身体がうっすらと金色に光り輝いてしまうのです。

 霊感にけた人や、魔力の多い種族はオーラが可視状態になるらしいのでそれは避けなければなりません。


 気づかれてしまったなら絶対に神の使徒とかに祭り上げられてしまいます。

 折角いただいた第二の人生です。


 変な宗教とかに利用されたくはありませんよね。

 多分、四歳では初期値の600倍以上に増え、五歳では初期値の3400倍近くになっているはずです。


(注;ルテナによるヴィオラの魔力予想上昇率

 6歳時点;1万5千倍、

 7歳時;6万3千倍、

 8歳時;21万5千倍、

 9歳時;61万6千倍、

 10歳時;148万5千倍、

 11歳時;299万8千倍、

 12歳時;505万倍、

 13歳時;706万倍、

 14歳時;821万倍)


 因みに魔力を貯めた魔石は、将来必要になれば魔力を引き出すこともできるらしいので、そのまま、ヴィオラ(私)のインベントリに蓄えています。

 今の段階だと、一番小さな魔石一つに約2か月分の魔力が貯め込めますが、そのうち一日分となり、やがて大き目の魔石に変えざるを得なくなるでしょうね。


 今持っている一番大きな魔石だと、ヴィオラ(私)が14歳になったときの魔力で三回分の魔力を貯め込めるそうですから、しばらくは大丈夫と思います。

 ルテナ曰く、そのうち自分で魔石を調達できるようにもなるとのことです。


 以前は、結界の中で魔法の訓練をしていましたが、徐々に威力が大きくなってきたのと小さな結界では魔法の発現に無理が生じます。

 なので、最近は空間魔法により亜空間を作って、その中で魔法の発現訓練を行っています。


 亜空間は便利なんですよ。

 実は、ヴィオラ(私)のスキルにあるインベントリには命あるものは入れられません。


 例えば、生えている植物は生命体ですのでインベントリには入りません。

 でも伐採した木はインベントリにも入れられます。


 ですから加工された建材や家具などは当然に入れられるわけです。

 他にも例えば伐採した木材には多数の微生物が付着していますが、これらのものは生命力が大きい場合はインベントリに入らずに弾かれてしまいます。


 この弾かれる場合に、当該命あるものが余程強固にしがみついている場合は別として、樹木から引きはがされることになりますね。

 もしもその力が非常に強ければ樹木をインベントリに収納すること自体を撥ねつけてしまうかもしれません。


 それほど力の強い微生物がいるとは思えませんけれど・・・。

 アリさんが集団で樹木の中で巣を作っていた場合は、どうなるかわかりません。


 群体としてのアリは結構強いからです。

 特にそれが魔物であって、魔物の生命力が強すぎる場合、樹木がインベントリに入ることそのものを拒絶するような気がします。


 アリの巣を事前に除いてしまえばあまり問題はないですけれどね。

 いずれにしろ樹木の中に籠っているような場合、生命力が相対的に弱い場合は、インベントリに入った時点で死滅します。


 その意味で食料となる果実や肉などは、インベントリに入った時点でほぼ殺菌ができてしまうようです。

 困るのは発酵食品でしょうか。


 酵素なども死滅しますので一旦インベントリに保管した食品は発酵が止まってしまいますし、そうして再度発酵するにはかなりの時間が必要となります。

 時間が止まるわけではないのでしょうけれど、腐敗自体も止まりますので食品の長期保存が可能になるようです。


 時間が止まれば、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま保存できるのでしょうけれど、インベントリにその機能はなさそうです。

 ルテナ曰く、時間停止の魔法は時空を司るディメル様の範疇になるので、レベルが上がれば時間を止めたり早めたりできる空間を魔法で造れるようになると言っています。


 そのうち、レベルが上がったら試してみようと思っています。

 因みに現時点のヴィオラ(私)のスペックは以下の通りです。


名前 ヴィオラ・ディ・ラ・フェルティス・エルグンド

種族 ヒト族

年齢 3歳

性別 女

職業 なし

レベル 1

STR(筋力) 7

DEX(器用さ) 10

VIT(丈夫さ、持久力)8

INT(知性) 130

MND(精神力) 25

LUK(運) 25

AGI(敏捷性) 8

CHA(カリスマ、魅力)9

言語理解 MAX


ルテナの注釈:

 セリヴェル世界の幼児クラスであればINT以外の数値は概ね一桁でそれも5以下の場合が多い。

 従ってレベル以外は全般的に高めであり、特に二けた以上の数値の項目は一般の幼児としては非常に高い数値である。


【スキル】

生活魔法 LV2

鑑定術 LV2

隠ぺい術 LV2

偽装術   LV2

剣術   LV0

槍術   LV0

棒術   LV0

盾術 LV0

弓術 LV0

格闘術 LV0

投擲術 LV0

騎乗術 LV0

射撃術 LV0


ルテナの注釈:

 生活魔法、鑑定術、隠ぺい術、偽装術は利用頻度が高いのでレベルが上がっている。

 その他のスキルについては現在のところ訓練機会そのものがないが、当面体力のスペックであるSTRとVITが二桁を超えたなら訓練を開始する予定


【その他スキル】

調剤 LV0

鍵開け LV0

料理 LV0

伐採 LV0

狩猟 LV0

裁縫 LV0

採掘 LV0

鍛冶 LV0

身体強化 LV0

気配察知 LV0

覇気 LV0

闘気 LV0

料理 LV0

裁縫 LV0


ルテナの注釈:

 いずれのスキルも訓練の機会がない。

 必要に応じ訓練機会を設ける。


【ユニークスキル】

空間魔法 LV1

インベントリ LV2

錬金術 LV0

魔法創生 LV0

雷魔法 LV1

氷魔法 LV1

回復魔法 LV0

結界魔法 LV2

ノータ(使い魔) LV1


ルテナの注釈:

 亜空間及びインベントリの利用により空間魔法とインベントリのレベルが上がっている。

 結界魔法も利用頻度が高いのでレベルが上がった。

 雷魔法と氷魔法は結界内の訓練で発動した結果レベルが最低ラインに上がった。


【魔法属性】

火 LV2

水 LV2

木 LV2

金 LV2

土 LV2

風 LV2

光 LV2

聖 LV2

闇 LV2

無 LV2


ルテナの注釈:

 各属性とも結界内で可能な訓練の範囲でレベルが上がっている。

 今後は亜空間内での訓練が可能になるのでよりレベルがアップすると予測される。


【加護】

 セリヴェル世界の神々十二柱の加護

 地球世界の八百万の神の加護

【称号】

 異世界神に称賛されし者

 セリヴェル世界の神々に迎えられし者


【装備】

なし。


その他ルテナの注釈:

 HPとMPについてはスペック表示がなされない。

 現状で、ルテナが把握している数値では、HPは24.9、MPは2827.1である。

 HPの回復率は現状で一時間当たり14%程度、7時間以上の休養又は睡眠で全快する。

 MPの回復率は現状で1時間当たり15%程度、7時間足らずの睡眠で全快するが、単なる休養だけでは全快しない。

 MPの増加に伴い、徐々に回復率も変わる可能性があり、ヴィオラの場合はMPの保有量と増加率が未だ高いので、回復率が上がるのか下がるのか今のところ未知数である。

 将来的には増加率が減少するにしたがって、回復率の改善が期待される。


◇◇◇◇


 私は、イリアナ・フェスティス・ディーヴァ・エルグンド、エルグンド伯爵の正室であり、クリスデル、グロリア、ヴィオラの三人の子の母親でもあります。

 フェスティス子爵の次女からケアンズの元へ嫁いで早8年にもなります。


 長男のクリスデルは七歳、グロリアは五歳、ヴィオラが三歳になりますね。

 もう一人男の子が居た方が伯爵家にとっては万全となるのですけれど、四人目はまだできていないのです。


 三人の子は皆すくすくと育っています。

 中でも、ヴィオラは生後三か月で高熱を発し、治癒師に診てもらったのだけれど、診てもらった際には、最悪の事態を考えていた方が良いかも知れないとまで言われていたのです。


 私の神様への祈りが通じたのか、幸いにして、その二日後突然に快方に向かい、治癒師をして奇跡ですと言わしめた。

 その後のヴィオラは至って健康で、病気一つしない元気な子に育っています。


 その意味では心配はないのだけれど、ヴィオラは少々変わっている子なのです。

 幼い頃からあまり泣かない子でした。


 何時でも微笑みを浮かべているので、あるいは高熱の所為で知能の発育が悪いのかと心配したりもしたのですが、メイドのローナやメイド長のカリンからの報告では、ヴィオラは驚くほど賢い娘の様なのです。

 一歳にしてつたない言葉で話すようになりましたが、その半年後には、ローナに自らお願いして文字の勉強を始めたのです。


 そうして更に半年後には、幼児用の童話全てを読み切り、夫の書斎から書籍を借り受けるまでになっていたのです。

 私も一度、ヴィオラのベッド脇の小机に「ハドリウス地方の農業について」という分厚い書籍があるのを見ました。


 一体だれがこんな本をと思っていたのですが、あとで聞いたところによると、ローナに頼んでヴィオラが夫の書斎から取り寄せたようです。

 そうしてその分厚い書籍をわずかに三日ばかりで読んでしまったというのですから本当に驚きです。


 因みに私もその本を試しに開いて何ページか読んでみましたが、7割ほど・・・。

 いいえ、正直に申し上げて、専門用語が多用されているために内容の半分ほどしか分かりませんでしたし、閊え閊えつかえつかえながら読む私の速度では一月ひとつきかかっても読み切れるかどうか怪しいと思われました。


 本当にヴィオラはこの難しい書籍の内容が分かって読んでいるのでしょうか?

 それである時、そう、ヴィオラが3歳になる少し前ごろでしたでしょうか、ヴィオラに尋ねてみました。


「ヴィオラ、お父様の御本を借りて色々読んでいると聞きましたけれど、例えば『ハドリウス地方の農業について』という御本を読んでどう思いましたか?」


「はい、その御本はよく覚えています。

 小麦の栽培を研究されている研究者の方が書かれたものですが、ハドリウス地方の気候や風土にあった小麦栽培の方法を経験的な手法で色々と試された結果を記録に残したものです。

 但し、残念なことに独りよがりの部分が多いかと思います。

 小麦の栽培には、必ず土壌の改良が必要なはずですが、それには全く触れられていません。

 何年も同じ土地で小麦を育てれば、徐々に不作になり、また、小麦が病にかかってしまうことについては触れていません。

 小麦を作った後に豆などを植えるなどして、毎年同じものを作らないようにすること、畑を耕すのにより深く耕したり、食べ物の残りなどを貯めて肥料にして土に混ぜるなどしたりすれば、小麦の収穫も上がり、病も防げるでしょうに残念です。」


「おや、まぁ、・・・。

 ヴィオラはそれを誰かに教えてもらいましたか?」


「いいえ、いろいろな御本を読んだ上で私が勝手に判断したことです。

 でも、多分、間違ってはいないと思うのです。

 お母様、お父様の領地には土魔法の使い手はいらっしゃるのですか?」


 あら、ヴィオラがいきなり魔法の話に切り替えましたね。

 ヴィオラの年で魔法に興味を持つことは良くあることですが、幼子には危険な場合もあるので未だ簡単には教えられないのです。


 でも、単に土属性の魔法師が居るかどうかの話であれば特段の問題はありません。


「そう、多分、お父様の配下の魔術師の中に土属性の魔法師の方もいらっしゃると思うけれど、どうしてそんなことを聞きたいのですか?」


「土魔法のできる方に森や林の土を畑の土に混ぜていただけるようならば、小麦畑の土の改良ができます。

 そのようなことには魔法師の方の力は使えないのでしょうか?」


 おやおや、随分と具体的な魔法の使用法ですけれど、土魔法を使って土壌を入れ替えるなんてお話は聞いたことがありませんね。

 魔法師の場合、多くは軍事的な方面に使われます。


 土属性の魔法師であれば、城壁の修理、陣地の構築などですね。

 その意味では、農業に魔法師が携わると言うことは通常ならばあり得ないでしょうね。


 簡単に否定はできますけれど、子供には夢を残しておかねばなりません。

 ですから回答には含みを持たせました。


「うーん、使えないわけではないでしょうけれど・・・。

 小麦畑というのはとても広いのですよ。

 お父様の領地すべての小麦畑の土を替えるとなると、百人の優秀な土属性の魔法師がいたとしても、一年掛けてもできないかもしれませんね。

 魔法というものは魔力を使うのです。

 小さな魔法であれば問題はありませんけれど、大規模な魔法を使うにはとても大きな魔力が必要となるでしょう。

 そうして例えば一軒の農家の小麦畑の全てをたった一人で改良できるような魔力を持った魔法師はそもそもいないのです。」


「あ、そうなのですね。

 では、魔法で土を改良する方法はダメですね。

 ならば、小麦を作る農家の人たちに色々教えて手作業で徐々に改良して行くしか方法が無いようです。

 お母様、お教えいただきありがとうございました。」


「いいえ、ヴィオラの知りたがりの一つが解消できたなら良かったですね。

 それにしても、土属性の魔法があることをよく知っていましたね。」


「はい、お父様の書斎にある魔法の関連の書籍は全て読みましたので、魔法にどんな種類があるか、どんなことができるのかをある程度知っています。」


「あらあら、それは大変なことね。

 クリルスデルがこの11月から行くことになる王立学院でも土魔法などの特殊なものは中等科にならないと習わないことなのよ。

 ヴィオラは魔法に興味があるのかしら?」


「はい、ございます。」


「そう、じゃぁ、しっかりと勉強して、ゆくゆくは宮廷魔法師になれるよう頑張りなさい。

 宮廷魔法師ともなれば、良家の縁談もとても多いそうですからね。

 貴族の子女にとっては、結婚するまでの間の一時的なものにせよ、能力ある女子が目指すべき職業の一つなのですよ。」


 私は、ヴィオラが本当に高い能力を持っていることに心底驚いていました。

 そうして言葉遣いも未だ三歳にならぬ幼児とは思えないほど洗練されていましたね。


 でも、魔法能力は素質があってもこの時期に開花することは無いので、少なくともヴィオラが王立学院に入学するまでは心配ないと思っていたのです。

 そうしてそれが大きな間違いだとわかったのは随分後のことでした。


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 8月14日より、


「浮世離れの探偵さん ~ しがない男の人助けストーリー」

  https://kakuyomu.jp/works/16817330661903752473


を、また、8月15日より、


「仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか」

  https://kakuyomu.jp/works/16817330661840643605


を投稿しております。

 よろしければ是非ご一読ください。


 By @Sakura-shougen





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